2017年10月27日更新 鳥インフルエンザA(H7N9)の発生状況(更新23)

2017年10月26日にWHOから公表された情報によりますと、中国の国家衛生・計画出産委員会(NHFPC)から、9月8日と15日に、合わせて2人の鳥インフルエンザA(H7N9)患者が、新たに検査で確認されたことがWHOに報告されました。

報告の詳細

2017年9月8日にNHFPCは、中国本土で鳥インフルエンザA(H7N9)の感染が検査で確定した患者1人を報告しました。患者は湖南省に住む67歳男性で、2017年8月27日に発症、2017年9月2日に重症肺炎のために入院しました。彼は、生きた家禽を扱う市場との接点があったことが報告されています。

2017年9月15日にNHFPCは、中国本土で鳥インフルエンザA(H7N9)の感染が検査で確定した患者1人を報告しました。患者は遼寧省に住む54歳男性で、2017年9月3日に発症、2017年9月11日に重症肺炎のために入院しました。彼は、農場で生きた家禽を職業として扱っていたことが報告されています。

2013年初頭からこれまでに、IHRを通して、鳥インフルエンザA(H7N9)の確定診断患者1,564人が報告されています。

公衆衛生上の取り組み

中国政府は、この数週間は新たな鳥インフルエンザA(H7N9)患者の報告頻度が少なくなってきているものの、これまでの流行状況と最近のパターンを考えれば、現在も中国では散発的な患者の発生が続く可能性が高いと事態を評価しています。したがって、国レベルおよび地方レベルの行政府は、引き続き、次のような予防対策を行っています。

  • 迅速かつ有効性のある感染の発見と対策を確保するために、調査活動を強化することを、各省に指示しています。
  • 現在の発生率の低い時期を利用して、感染の予防および制御への取り組みを見直し、長期的な対策の実施を促進するように、各省に指示しています。
  • リスクの情報を伝達し、自己管理による予防へのガイドラインを国民に提供するための情報の通知を発行することを続けています。
  • 農業分野では、家禽にインフルエンザA(H5)とA(H7)の二価ワクチンを大規模に接種し始めました。
  • 政府は感染の予防および制御が軽視されないように、また、迅速かつ効果的な対策で患者を発見し、管理するように注意を促しています。

WHOのリスク評価

近年、見られているように、毎週報告される患者数は、夏期の数か月にわたり減ってきています。しかしながら、2016年10月1日以降に発生した5回目の流行の波での鳥インフルエンザA(H7N9)の患者数と地域分布は、これまでの流行の波よりも大きくなっています。これは、ウイルスが広がっていることを示しており、人と動物、両方の健康領域でより強化した調査活動と感染制御対策が重要であることを強く示しています。

ほとんどの患者は、生きた家禽を扱う市場などで、感染した家禽との接触またはウイルスに汚染された環境との接触を通して、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスに曝されています。このウイルスは動物や環境中で検出され続けており、生きた家禽の販売が続けられているため、さらに患者が発生することが予想されます。まだ、患者が報告されたことのない中国各省でも、新たに鳥インフルエンザA(H7N9)への散発的な感染者の発生は、予想されます。また、中国と国境を接する国で、散発的に鳥インフルエンザA(H7N9)の患者が発生することは、予想されないことではありません。これまでにも同じ部屋にいた患者が関係した事例など、小さな集団で鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスへの感染が発生したことは報告されてきましたが、現在の疫学的・ウイルス学的な根拠からは、このウイルスが人と人との間で感染伝播を維持し続ける能力は獲得していないことが示唆されています。そのため、地域レベルで感染が拡がる可能性は低いと考えられます。

直近のウイルスの疫学的な発生状況や新たな特徴について詳細に分析することは、リスクを評価し、リスク管理の対策の調整を図り、速やかに対処していく上で不可欠となります。

WHOからのアドバイス

WHOは、鳥インフルエンザの発生が確認されている国への渡航者に対し、可能な限り養鶏場への立ち入り、生きた家禽類を扱う市場での動物との接触、家禽を解体する場所への立ち入り、家禽や動物の排泄物で汚染されているとみられるあらゆる物品との接触を避けることを勧めています。渡航者は石鹸と水で手をよく洗い、食品の安全(への注意)と衛生習慣の維持に努めるべきです。

WHOは、この事象に関連して、特別な入国スクリーニングおよび渡航や貿易の制限を行うことを推奨してはいません。これまでと同様に、鳥インフルエンザが懸念される地域を渡航中又は帰国した直後に、渡航者が重症の急性呼吸器症状を発症した場合には、常に鳥インフルエンザウイルスへの感染を鑑別診断として考えておくことが必要です。

WHOは各国に対して、重症急性呼吸器感染症(SARI)およびインフルエンザ様疾患(ILI)のサーベイランスを含むインフルエンザのサーベイランスの強化を継続し、通常と異なる傾向がないか慎重に調査し、患者が発生した時には国際保健規則(2005)に基づき必ず報告し、引き続き各国国民の健康維持に備えることを要請しています。

中国に滞在される方は、今後も情報に注意していただくとともに、手洗いや咳エチケットをこころがけてください。また、鳥に直接触ったり、病気の鳥や死んだ鳥に近寄ったりしないようにしてください。入国の際に、発熱、咳、喉の痛みなどの症状がある場合には検疫所に相談してください。

出典

WHO.Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 26 October 2017
Human infection with avian influenza A(H7N9) virus - China
http://www.who.int/csr/don/26-october-2017-ah7n9-china/en/