2017年10月27日更新 ペストの発生報告 - セーシェル諸島(更新2)

2017年10月26日に公表されたWHOからの情報によりますと、マダガスカルでのペスト発生に関連して、セーシェル諸島でペストが疑われていた患者からの検体は、フランス・パリのWHO共同検査施設で検査したところすべて陰性であったことが、10月17日に発表されました。その後の経過が報告されています。

記事の詳細

マダガスカルでは、2017年8月以降、大都市やこれまではペストが常在していなかった地域で、大規模なペストの流行が発生しています。この流行は、隣接するインド洋の島々にも中等度のリスクの拡大をもたらしています。(しかし)このリスクは、肺ペストの潜伏期間(細菌曝露から発症までの時間)が短いことや、空港やその他・港湾で(行われている)出国時スクリーニング対策の体制整備から、和らぎつつあります。ペストに関する最新の情報に関する週報を以下のサイトで見ることができます。

Plague outbreak situation reports

2017年10月10日には、セーシェル諸島・保健省から、肺ペストへの感染の可能性が高い患者がWHOに報告されました。この可能性の高い患者は、マダガスカルを訪れていた34歳の男性で、10月6日にセーシェル諸島に戻ってきました。彼は、10月9日に発症し、地元の医療保健施設を受診しました。診察時の所見と申告されたマダガスカルへの最近の渡航歴から、肺ペストへの感染が疑われ、彼には直ちに隔離と治療のための病院が手配されました。

国内で10月11日に行われた喀痰検体での迅速診断検査で、弱い陽性反応がでました。10月9日から11日にかけて、接触者8人が軽い症状を示し、隔離されました。この他、2人の疑い患者が、彼らはマダガスカルへの渡航歴はなく、この可能性の高かった患者との疫学上の関連性もみられませんが、確認され、隔離の上で治療下に置かれていました。

感染の可能性の高かった患者を含め、10検体が採取され、パスツール・パリ研究所に送付されました。しかし、すべての検体は10月17日に陰性の結果が示されました。

10月13日には、飛行機の乗客41人、乗員7名、近親の家族12人、患者が受診した医療保険施設の医療関係者と患者18人など、感染の可能性の高かった患者との320人を超える接触者の健康監視・期間が完了しました。ペスト発症を予防するために、全員に、監視期間中の予防投与薬の抗生物質が提供されました。

全体を通して、接触者1,223人が登録され、健康監視下に置かれました。このうち、接触者833人には、予防投与薬の抗生物質が投与されました。接触者の中からは、4人の疑い患者が発見されました。そして、治療が行われました。

その後、パスツール・パリ研究所から陰性との検査結果が示されたため、感染の可能性の高かった患者を含めて、病院に隔離されていた接触者全員が退院となりました。接触が確認され、投与されていた予防投与の抗生物質は、症状が現れ、健康監視が行われていた者も含めて、中止されました。

公衆衛生上の取り組み

2017年10月10日に、緊急危機・対策室が立ち上げられました。ここで、調査活動、接触者の追跡、患者の管理、隔離措置、必要物品の供給などの調整が図られました。

セーシェル諸島政府は、(既存の病棟が拡大される間の)一時的な隔離施設の設置、主要な必要物品の調達、接触者の追跡、接触者追跡への訓練の拡充などを可能にする対策室の直接指示を支援するために資金を充当しました。

マダガスカルからの新たな感染輸入の可能性を抑えるために、10月8日から、マダガスカルと往来するセーシェルの航空会社の運行が中止されています。WHOは、現在、入手できている情報に基づく限りでは、渡航と貿易への制限を勧めてはいません。2017年10月10日からは、マダガスカルの保健省が、WHOからの支援を得て、(感染の)国際的な拡大を防ぐために首都アンタナナリボで国際空港での出国時スクリーニング検査を実施しています。さらに、WHOと支援組織からの支援を得て、国際的な(感染)拡大を避けるために入国地点での対策の強化も計画しています。

WHOは、セーシェル諸島政府に、公衆衛生上の対策である、調査活動、疑い患者の隔離と治療、接触者の追跡、発症の潜在性をもつ接触者に対する予防投与による治療などを、WHO国際保健規則(IHR)に則って実施することを助言しています。

WHOのリスク・アセスメント

ペストは、小さな哺乳動物やそのノミに日常的に見られる人獣共通の細菌ペスト菌(Yersinia pestis)によって引き起こされる感染症ですが、治療可能です。人には、細菌を保有したノミに刺されたり、直接、最近の付着した物質や動物に触れたり、(細菌を)吸い込んだりすることで、感染します。

ペストには、感染経路の違いから、腺ペスト、ペスト敗血症、肺ペストの3つの型があります。

肺ペストは、ペストの中の最悪の病態です。空気中の飛沫に触れることで、人から人へと深刻な流行を引き起こす可能性があります。潜伏期間が24時間ほどです。通常、肺炎型は進行した腺ペストが肺に広がることで起こります。しかし、人は、症状を伴う肺ペスト患者からの感染性の飛沫を吸い込むことで、原発性の肺炎を起こします。ペストは治療可能な病気です。しかし、治療しなければ死に至ります。

(これまでに)ペストがセーシェル諸島で報告されたことはなく、現段階ではセーシェル諸島のペスト患者は確認されていません。これまでに報告された感染の可能性のある患者も疑い患者も、いずれも死亡してはいません。セーシェル諸島政府は、調査活動の強化、疑い患者の隔離と治療、接触者の追跡、発症の潜在性をもつ接触者への予防投与、主要な港湾でのスクリーニング検査などの予防対策を確立させています。接触者の追跡における医療従事者とボランティアへの新たな訓練が、WHOの支援を受けて、2017年10月17日に行われました。 セーシェル諸島における肺ペストのリスクは低いと考えられており、全体でも、(アフリカ)地域レベル、世界的レベルともにリスクは非常に低いと考えられています。

WHOによる旅行者へのアドバイス

現段階で、セーシェル諸島では領域内でのペスト患者は確認されておらず、国際旅行者がセーシェル諸島でペストに遭遇するリスクは非常に低い状態です。WHOは、入手できている情報に基づいて、セーシェル諸島やマダガスカルに対し旅行や貿易に関していかなる制限も加えないよう助言しています。

2017年10月3日に、WHOはマダガスカルで発生したペストの流行に関連して、海外旅行者に対するアドバイスを掲載しました。これはセーシェル諸島への旅行者にとっても必要です。

Plague - Madagascar(WHOのInformation for international travelersサイトより)

10月11日には、保健省が、ウェブサイト上にプレス・リリースとして、いくつもの肺ペスト対策を発表しました。これらの対策は多くが国際交通の大きな障害となるため、10月13日に、保健省は、国際保健規則第43.3条(IHR、2005年)で要求される事項として、これらの対策の科学的根拠と公衆衛生上の合理性についてWHOに提出することを通知しました。

出典

WHO.Disease outbreak news Emergencies preparedness, response. 26 October 2017
Seychelles- Suspected Plague (Ex- Madagascar)
http://www.who.int/csr/don/26-october-2017-plague-seychelles/en/