2017年11月09日更新 エンテロウイルスD68に関連する急性弛緩性脊髄炎

 2017年11月1日付で、汎米保健機関(PAHO)より、急性弛緩性麻痺のサーベイランスの中でのエンテロウイルスD68に関連する急性弛緩性脊髄炎の報告が公表されました。

アメリカ大陸およびその他の地域における発生状況の概要

 1960年代から、エンテロウイルスの感染者が報告されてきています。(しかし)2014年に、アメリカ合衆国で初めて、感染の流行が記録されるまで(流行は)ありませんでした。

 2014年8月から12月までに、米国疾病対策センターには、エンテロウイルス(EV)D68によって起こる呼吸器疾患の流行に関連して、急性弛緩性脊髄炎(AFM)の増加が報告されました。AFMと報告された患者は120人で、34州に及んでおり、年齢中央値は7.1歳(4.8-12.1歳)、59%が男性、81%が神経症状の発症前に呼吸器疾患を伴っていました。この症状に続いて、いくつもの州で、自然発生的に調査が始められました。(その後)2015年には散発的に患者が発生し、2016年には新たな患者が増えてきました。患者は、アジア、カナダ、ヨーロッパでも確認されました。

 エンテロウイルスD68(EV-D68)は、ライノウイルス(rhinoviruses)の特徴をもち、主に呼吸器に病態を引き起こします。しかし、神経を侵襲する病態の原因としての役割は、あまりよく分かっていません。

 2016年に、ヨーロッパ疾病対策センターは、デンマーク、フランス、オランダ、スペイン、スウェーデン、イギリスから、エンテロウイルスに感染した子どもと大人で重症の神経学的な症候群が集団および孤立例として報告されたことを周知しました。このエンテロウイルスはD68でした。

 2017年10月に、アルゼンチンのIHR担当者からEV-D68が関係するAFMが報告されました。2016年第13週から第21週までに、AFMが15人(Buenos Aires(ブエノスアイレス)州で13人、Chubut(チュブット)州で1人、ブエノスアイレス自治市で1人)確認されました。患者は、急性弛緩性麻痺の調査の一環として確認されたため、全員が15歳未満でした。この事例は、2016年第16週から第21週までに、全国で観察された15歳未満の子どもの急性弛緩性麻痺の患者の増加とも一致しました。報告されたAFMの患者15人のうち6人から、EV-D68を、ポリオ中央研究所地域研究所(the Regional Poliovirus Reference Laboratory - INEI - ANLIS )Carlos G. Malbrán博士が確認しました。陽性の結果は、鼻咽頭の吸引による検体から得られました。患者の1人からは、同じ結果が脳脊髄液からも得られました。また、急性弛緩性麻痺の患者2人の糞便検体からはヒトEV B型とEV C型が検出されました。患者1人からは、ライノウイルスC型、別の1人からはコクサッキーウイルスA13型が検出されました。

 ポリオ根絶の背景、2016年4月以降に経口ポリオワクチン(OPV)が3価から2価に移行したこと、急性弛緩性脊髄炎(AFM)はAFPの一形態であること、神経への侵襲性の病態の疫学においてエンテロウイルスが果たす役割に関する知識を深める必要性があることを考え、汎アメリカ保健機関/世界保健機関(PAHO / WHO)は、エンテロウイルスがAFPの鑑別診断として挙げられることを各国の記憶に留めさせています。

出典

PAHO. Epidemiological Alert. 1 November 2017
Acute Flaccid Myelitis associated with enterovirus D68 in the context of Acute Flaccid Paralysis surveillance
http://www.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&Itemid=270&gid=42783&lang=en