2017年11月20日更新 ペストの発生報告 - マダガスカル(更新7)

 2017年11月15日付けでWHOより、マダガスカルで発生しているペストについての状況が公表されました。

ペストの発生状況

 マダガスカルは、2017年8月1日以降、大規模なペストの流行を経験しています。11月10日までに、確定患者が2,119人、疑い患者が171人に上り、死亡者が171人(致死率8%)となったことが、マダガスカル保健省よりWHOに報告されました。

 2017年8月1日から11月10日までに、患者1,618人(76%)と死亡者72人が臨床的に肺ペストに分類されました。(患者の内訳は)確定患者が365人(23%)、感染の可能性の高い患者が573人(35%)、疑い患者が680人(42%)でした。これらの肺ペスト患者に加えて、腺ペスト324人(15%)、ペスト敗血症1人、未分類患者176人(8%)もWHOに報告されました。医療従事者82名がペストに一致する症状を発現しました。(幸いにも)死亡者はでていません。

 2017年8月1日から11月10日までに、マダガスカルにある22地域圏のうち16地域圏から患者が報告されました。Analamang(アナラマンガ)地域圏での発生が最も多く、届けられた患者全体の72%となっています。

 11月10日までに、接触者243人のうちの218人(90%)が健康監視下に置かれ、予防投与薬を受けました。流行が始まって以降の接触者は7,122人確認され、このうちの6,729人(95%)が、7日間の健康監視期間と予防投与薬の服用を完了しました。(このうち)接触者9人だけは、(何らかの)症状を発現し、疑い患者となりました。

 ペストの検査確認が、パスツール・マダガスカル研究所、国立マダガスカル・ペスト研究所・WHO共同研究センターで行われています。(これまでに)ペスト菌(Yersinia pestis)25株が分離培養されました。すべてのペスト菌は、感染制御に向けた国の計画で推奨されている抗生物質に感受性がありました。

 マダガスカルでの新たなペスト患者および入院患者の数は減ってきています。腺ペスト患者が最後に報告されたのは10月24日、肺ペスト患者が最後に確認されたのは10月28日でした。

 マダガスカルの一部の地域には、ペストが常在していることから、WHOは2018年4月までの通常の流行期が終わるまでは、さらに患者が報告されると見込んでいます。そのため、ペストの流行期が終わる迄は、感染制御の対策を続けることが重要です。

公衆衛生上の取り組み

 マダガスカル保健省は、WHOや他の関係機関、並びに支援組織の支援を得て、公衆衛生対策を主導しています。

 マダガスカル公衆衛生省は、Antananarivo(首都アンタナナリボ)とToamasina(トアマシナ)で危機管理チームを立ち上げており、すべての患者と接触者に治療薬および予防投与の抗生物質を無償で提供しています。

 公衆衛生上の対策としては、次のことが行われています。
・新しい患者についての調査
・すべての肺炎患者の隔離と治療
・患者の発見の強化
・積極的な接触者の発見・追跡・監視、および予防投与薬としての抗生物質の提供
・感染の発生したすべての地区における疫学調査活動の強化
・げっ歯類と媒介昆虫(ノミ)の感染制御を含めた駆除活動
・腺ペストや肺ペストの予防に対する国民への意識の向上
・医療従事者の間での意識の向上と、患者の発見、感染の制御対策、感染からの予防(の対処能力)を向上させるための情報の提供
・埋葬儀式の際の感染対策についての情報の提供

 アンタナナリボ国際空港では、出国時スクリーニング検査の強化対策が実施されています。この対策には、次のことが含まれます。
・空港で特別(に準備された)出発フォームを記入すること(リスクのある乗客を特定するため)
・出国する乗客の体温のスクリーニング検査、さらに、発熱する乗客へは空港での医師の診察への誘導
・肺ペストに症状が合致する乗客の空港での速やかな隔離、迅速診断検査の実施、並びに緊急対策プロトコールに基づいた通知

 (何らかの)症状のある乗客は旅行が許可されません。WHO GOARNチーム(米国疾病対策予防センター(CDC)、Institut de veille sanitaire(全国疾病モニタリング機構)/Santé publique France(フランス国立/公衆衛生局)[InVS / SPF])により編成)により、空港での技術的な支援が提供されています。

 アフリカ地域の9つの国および領土(コモロ、エチオピア、ケニア、モーリシャス、モザンビーク、レユニオン島(フランス海外県)、セーシェル諸島、南アフリカ共和国、タンザニア)は、マダガスカルと貿易や旅行者との結びつきが強いため、ペストに対する備えと管理体制の準備を行うための重要国とされています。これらの国々では、ペストに対する全国民への意識の向上、特に、入国地点での疾病調査の強化や(感染への)装備や必要物品の事前準備などを実施しています。

WHOのリスク・アセスメント

 10月中旬以降、新たなペスト患者の発生件数、ペストによる入院患者数、ペストを報告する分布地域の数は減少してきています。新たなペスト患者の報告の減少傾向とペストでの入院患者の減少は勇気づけられるところですが、WHOは、通常の流行期が終わる2018年4月までは、マダガスカルから報告されるペスト患者がさらに増えると予想しています。

 患者の報告数の減少は、流行の蔓延する段階が終息してきていることを示唆していますが、腺ペストへの感染、肺ペストの人から人への伝播を最小限に留めるには、(現在)継続している対策の体制を維持することが重要です。

 新たなペスト患者の発生件数は1か月以上にわたり減少傾向にあり、流行の発生への対策が効果を上げてきていることが示されています。WHOは、マダガスカルおよびその他にも支援組織とともに、現在の流行と2018年までのペストの流行期を通して、患者の発見や治療、全視野を網羅した接触者の特定、健康監視と抗生物質による治療、げっ歯類とノミの管理・駆除、安全かつ尊厳を維持した埋葬などを維持し、さらに長期的なペストへの備えと管理のための戦略の大筋を描くことに取り組んでいます。

 この流行が始まって以降、莫大な数の患者と7000人を超える接触者に治療が行われ、(これらの人たちは)回復を遂げました。2017年11月15日現在、ペストにより入院しているのは12人だけです。国外への国際的な波及は起こしませんでした。

 入手できている情報及びこれまでに実施されてきた対応策に基づく限り、WHOは、依然として全国規模でのペストの発生がさらに拡大する高い可能性がある状態とみています。国際的に拡大するリスクについては、肺ペストの潜伏期間が短いこと、出国時検査が実施されており、マダガスカルへの旅行者にも情報が提供されていること、隣接するインド洋の島々やアフリカ南部および東部の国々での備えと対応の準備活動を増強していることなどから、低下してきています。世界全体でのリスクは低いと考えられています。WHOは、流行状況の展開と対策活動からの情報に基づいて、リスク・アセスメントを再評価しています。

 マダガスカルとこの地域で警戒が必要な国々に、予防と管理の対策、治療の選択肢などの助言が行われています。

WHOからの旅行者へのアドバイス

 これまでに入手できた情報に基づけば、国際的にペストが伝播するリスクは極めて低いとみられます。WHOは、入手できた情報に基づく限り、マダガスカルへの旅行や貿易に関するいかなる制限にも行うべきではないと助言しています。

 マダガスカルに入国する旅行者には、現在のペストの発生状況と必要な防御対策について知らされている必要があります。旅行者は、ノミの咬傷から身を守り、死んだ動物や感染した組織および物体との接触を避け、肺ペストの患者との濃厚接触を避けることが必要です。発熱、悪寒、痛みを伴うリンパ節の炎症、咳や血痰を伴う息切れなどが急に症状として現れた場合、旅行者はすぐに医療機関と連絡を取る必要があります。旅行者は、予防の場合でも、自己投薬は避けるべきです。予防的治療は、患者との濃厚な接触者や、ノミの咬傷や感染した動物の体液・組織と直接に触れた場合など、他に高い(感染)リスクのある接触者にのみ推奨されます。マダガスカルへの旅行から帰国の後には、旅行者はこれらの症状に注意を払うことが必要です。症状が現れた際に、旅行者は医療機関を受診し、マダガスカルへの旅行歴があることを医師に申告する必要があります。

出典

WHO. Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 15 November 2017
Plague - Madagascar
http://www.who.int/csr/don/15-november-2017-plague-madagascar/en/

参考

外務省 海外安全ホームページ:マダガスカルにおけるペストの流行(その3)
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2017C228.html