2017年12月25日更新 ジフテリアの発生- イエメン

 2017年12月22日にWHOから公表された情報によりますと、10月29日にイエメンのIbb(イッブ)県からジフテリアの流行が報告されました。その後、流行が拡大してきています。

情報の詳細

 Sanaa(サナア)県で活動するWHOチームに、2017年10月29日に、ジフテリア疑いの患者が報告されました。8月13日から12月21日までに、20の県から、死亡者35人(致死率10.5%)を含む333人の疑い患者が報告されています。現在の発生状況は、検査確認を欠いており、臨床診断に基づいて、ジフテリアが疑われる流行の発生として対処されています。

 患者の多くは、イッブ県から報告されました(疑い患者187人)。患者の79%が20歳以下、19%は5歳未満となっています。疑い患者の男女数は、ほぼ同数でした(疑い患者3人で性別情報がありませんでした)。(さらに)疑い患者の61%は、これまでに一度もジフテリアのワクチンを受けたことがありませんでした。

 12月21日までに、ジフテリア疑いの患者35人が死亡しました。死亡者のうちの14人は5歳未満の子どもでした。

公衆衛生上の取り組み

 対策では、患者と接触者への臨床的な対応、患者の取り扱いの基幹経路や隔離病棟の設立、疑い患者の確認検査への支援、医薬品および医療必要物品の供給、(感染)リスクの高い地域での青少年へのワクチン接種、ジフテリア患者の治療と予防を含めた流行のあらゆる側面での地域社会の参画などへの対応方針の提供と支援に焦点が当てられています。

活動の支援と主導
・公衆衛生・国民省、WHO、UNICEFで構成されたジフテリア対策室が、流行への対応のために立ち上げられました。対策室では、この流行の制御に向けて合同で取り組みを主導することが想定され、感染の発生地域での行政支援の供給に焦点があてられています。
・現在、ジフテリアへの対策に向けた実施要綱を提供するために、緊急対策センターが立ち上げられています。

疫学調査、患者の調査、接触者の追跡
・WHOは、感染力のある患者の発見と確認、接触者の確認、彼らへの抗生物質の供給などに向けて、感染の発生した多くの地域にチームの派遣や、研修、設備などの支援を行っています。
・WHOは地元の担当当局や支援組織と協力して、検査処理能力と検体の採取に向けた強化に取り組んでいます。公衆衛生・国民省により予算が確保できれば、確認検査のために、直ぐに、検体はイエメン国外のWHO共同検査施設に送られる予定です。
・WHOは国内での検査を促進するために検査試薬の提供を行っています。

患者の管理
・患者の臨床上の管理は、公衆衛生・国民省と支援組織の主導で行われています。WHOは、診断や患者の臨床上の管理において、指針に基づいて助言を行っています。
・WHO、UNICEF、MSF(国境なき医師団)は、共同で、最も感染の発生が激しい地域にある既存の医療施設(を利用すること)で、ジフテリア治療のための病棟の設立に当たっています。この施設には、重症患者を取り扱うための集中治療室も含まれます。確認検査のための体制が、疑い患者の発見・確認と、速やかな治療の着実な実施のために、整備されています。
・WHOは、感染の発生した県に200,000米ドルに相当する抗生物質とジフテリア抗毒素(DAT)1,000バイアルを供給し、治療病棟への病院設備を調達しています。
・WHOは、イエメン総合病院に対し、燃料、(安全な)水、酸素(ボンベ)、(医療)設備、DATや抗生物質を含めた必要医療物品を供給しています。

ワクチン接種
・WHO、UNICEF、支援組織は、イッブ県のal-SaddahとYarimの街に住む5歳未満の子ども8,500人にワクチンを接種しました。そこからは、患者の大半が報告されています。
・公衆衛生・国民省、UNICEF、WHOは、4価ワクチンの接種を6週から7歳までの子どもに、破傷風/ジフテリア(Td)ワクチンの接種を7歳から25歳までの子どもや青年に、ワクチンを接種するキャンペーンを、それぞれに3回、計画しています。
・UNICEF は、4価ワクチン60万回分とTdワクチン300万回分を提供しています。さらに、2-3週毎に、合計で4価ワクチン210万回分とTdワクチン900万回分が提供される計画になっています。

地域での活動と地域社会の関わり
・UNICEF が行っている地域社会の評価に基づけば、イエメンでのワクチンの受け入れは、依然として、高い状況にあります。
・WHOは、公衆衛生・国民省、UNICEF 、MSF(国境なき医師団)とともに、ワクチンの接種、ジフテリアに対する公衆衛生上のアドバイスの普及を促進させ、医療従事者への疑い患者の治療の対処方法などを周知させるために、地域社会の参画の戦略を策定しています。

WHOのリスク・アセスメント

 ジフテリアは、毒素を産生するジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)を原因とし、ワクチンで予防することができる病気です。濃厚な身体の接触、呼吸器からの(飛沫との)接触で人から人へと伝播します。呼吸器でのジフテリア感染は、患者の致死率が5-10%にもなり、子どもでは致死率がさらに高くなります。治療には、ジフテリア毒素の管理と抗生物質による治療を行います。ジフテリア・ワクチンは、この数10年で、ジフテリアの感染率と死亡率を劇的に下げました。

 ジフテリアの流行の発生は、その国の子どもへのワクチン接種計画での接種率が十分でないことと、これまでにワクチンを接種した者での免疫能の低下が合わさることで起こります。感染伝播が続くと、ワクチンの接種率の低い隣国に、この病気が拡がるリスクが高くなります。

 イエメンでは、ジフテリアの感染発生の早期発見に対する疫学調査の強化が必要です。この地域のすべての国で、Corynebacterium diphtheriaeの産生する毒素への信頼性のある確認検査のできる環境が必要となります。患者の臨床上の管理には、十分な量のジフテリア抗毒素と抗生物質を使用できることが、国内にも地域的にも必要となります。

 さらなる感染伝播へのリスクが、国内レベル、地域レベルともに、極めて高くなっています。なぜなら、現在も続く武装闘争、医療施設を壊滅状態にした前例のないコレラの流行、医療サービスの崩壊、医療従事者の労働資源の制約、医療施設の運営や医療従事者への給与支給の財源欠如、至適レベルに満たない(ワクチン)接種率など、さまざまな要因があるからです。また、世界レベルでもジフテリア抗毒素の供給は限られており、国内レベルでの確認検査のための試薬も限られています。WHOやその他にも医療支援組織がかなりの必要物品を供給してしますが、国内での救急の医療物品の配給が複雑なために、医療物品の供給は慢性的に不足しています。

出典

WHO. Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 22 December 2017
Diphtheria - Yemen
http://www.who.int/csr/don/22-december-2017-diphtheria-yemen/en/