2017年12月26日更新 黄熱の発生 -ナイジェリア

 2017年12月22日付けで公表されたWHOの情報によりますと、9月以降、ナイジェリアで黄熱が発生しています。

報告の詳細

 ナイジェリア疾病対策センター(NCDC)は、2017年9月14日に、Kwara(クワラ)州で黄熱の確定患者が発生したことをWHOに報告しました。9月15日には、ナイジェリアのIHR国家担当者が、国際保健規則(IHR、2005)に基づいて、公式に通知文書を発行しました。

 患者は、クワラ州で暮らす7歳の女児で、2017年8月16日に、発熱、嘔吐、腹痛を発現し、発症しました。この女児は、これまでに黄熱ワクチンを接種したことはなく、発症前の2年間は州外を旅行したこともありませんでした。ラゴス大学研修病院でのPCR法検査で、女児の血液検体から陽性の結果を得ました。(現在)この地域の中央研究施設であるパスツール・ダカール研究所で血清検査による確認検査が行われています。

 7月2日から12月19日にかけて、16州から341人の疑い患者が報告されています。報告のあった州は、Abia(アビア)、Anambra(アナンブラ)Bayelsa(バイエルサ)、Borno(ボルノ)、Edo(エド)、Enugu(エヌグ)、Kano(カノ)、Katsina(カツィナ)、Kogi(コギ)、Kwara(クワラ)、Kebbi(ケビ)、Lagos(ラゴス)、Nasarawa(ナサラワ)、Niger(ナイジャ)、Oyo(オヨ)、Plateau(プラトー)、Zamfara(ザムファラ)の各州です。確定患者は、カノ、ケビ、コギ、クワラ、ナサラワ、ザムファラの6州から報告されました。

 12月19日までに、ナイジェリア国内5か所で、213検体の検査が行われています。213検体のうち、ナイジャ州の施設での検査検体63本で結果が陽性となり、1検体で判定不能となりました。黄熱への感染を確定診断するために、63検体はパスツール・ダカール研究所に送られました。そこでは、32検体が陽性、24検体が陰性、7検体が公的な更新情報の発表時点では検査中の状態でした。

 黄熱の疑い患者341人のうち、214人(62.8%)が男性でした。最も感染の多かった年齢層は、20歳以下の層で、患者の65.9%を占めていました。死亡者は合計で45人(疑い患者、感染の可能性の高い患者、確定患者を含む)、確定患者の中では9人でした。患者全体(疑い患者、感染の可能性の高い患者、確定患者を含む)での致死率は21.1%、確定患者のうちでは28.1%でした。さらなる疫学調査が行われています。

公衆衛生上の取り組み

 流行への対策が複数の省庁間で調整され、複数の支援組織による感染発生・管理センターと緊急対策センターが、この流行への監視を行っています。緊急対策センターは、クワラ州にも設立され、ザムファラ州には遠隔での支援が行われています。2017年9月18日から10月20日までに、現地の担当当局が今回の事態をさらにクワラ、コギ、プラトーの各州で調査支援するため、さらなるリスクの増大を評価するため、(流行に)対応したワクチン接種キャンペーンを支援するため、その他、活動のために、NCDCとWHOからの(疫学者や昆虫学者を含む)緊急対策チームが配置されました。WHOの支援を得て、黄熱の調査活動が全国で強化され、ラゴスでは黄熱と麻しんの診断(能力)を向上させるために1週間の研修コースが開かれました。検体の管理と輸送のプロトコールを作成し、各州間で統一を図ることで、検査施設の対応能力が強化されました。クワラ州は、基幹治療施設に指定されました。国民への情報の(啓蒙)キャンペーン、ラジオでの重要な情報の発信、地域社会への活動参加など、リスク情報の相互伝達や社会活動員の活動が、地域社会の指導者を通じて実施されています。

 ナイジェリアでは、2004年に予防接種プログラム(EPI)が拡大され、定期的な黄熱ワクチン接種が導入されましたが、現在、感染の発生している地域での住民の免疫状態は、免疫応答能が基準レベル以下に留まり、全体で60-80%以下である可能性があります。2017年10月には、クワラ州とコギ州で9か月から45歳までの住民80万人以上を対象に、優先的に地域で予防接種キャンペーンを精力的に行い、対象地域では接種率が98%に増加しました。12月には、ザムファラ州の4つの地方自治体で、感染対策のワクチン接種キャンペーンで100万人を超える人々へのワクチンの接種も終了しました。(現在は)5つの地方行政地区(LGA)、コギ州の3か所とクワラ州の2か所で、新たなキャンペーンが実施されています。また、2018年2月には、流行の先手を打った大規模なキャンペーンが開始される予定です。このキャンペーンでは、最近になって患者が確認された6州、続いて、これ以外の優先州が対象となります。これは、全国の予防キャンペーンが次の段階に移り、今後、数年間で全国を網羅する計画へとなります。全国で住民に高レベルでの免疫応答能を達成させるためには、(ワクチン接種への)アプローチの全国展開が必要という認識がもたれています。

WHOのリスク評価

 黄熱は、蚊が媒介する急性ウイルス性出血熱です。黄熱は、急速に広がり、公衆衛生上に重大な影響を引き起こす可能性があります。この病気は、黄熱ワクチンの単回投与で終生免疫を獲得し、予防が可能ですが、特別な治療法はありません。脱水、呼吸不全、発熱などを治療する支持治療、および二次的に生じる細菌感染の対する抗生物質での治療が推奨されています。

 16州での疑い患者と6州での確定患者の報告、感染が発生した地域における予防接種率の最適性を下回る可能性、散発的な患者発生への国内の対応と(可能ならば)より大規模での予防接種キャンペーンを実施することの対応能力を踏まえ、WHOは、国レベルでは全体のリスクは高いと評価しています。現時点で、感染の発生している州(ザンファラ州、おそらくはケビ州[ニジェールとの国境から約400kmに位置する])に隣接する州では、この国での住民の免疫応答能の低さ(35.4%)から、地域的に(感染が)広がるリスクが中程度あります。世界全体のレベルではリスクは低い状態です。

 患者数の増加のリスクは、一部が、媒介する蚊の密度が住民との間で感染伝播を持続できる能力を持てるかどうかにあります。しかし、現在のところ、クワラ州以外では昆虫学上の情報は入手できていません。この地域は(これから)乾季に入り、媒介する蚊の密度は全体的に低くなります。しかし、住民の中で黄熱の発生を増幅させることのできるAedes aegypti(ネッタイシマカ)は、住居周辺にある人工の容器物にも生息し、人の生活に寄生する媒介昆虫であり、乾燥の進んだ環境条件でも適度に発生する種類の蚊です。

 ナイジェリアは、現在、他の州でコレラやラッサ熱などが発生し、北東部では人道的危機状態にあるなど、いくつもの公衆衛生上の緊急事態に同時に直面しています。この発生状況は厳格に監視されています。

WHOからのアドバイス

 予防接種および蚊の駆除は、黄熱の予防および制御のための主軸となる手段です。WHOと支援組織は、現在の感染発生を抑制するために、これらの対策を実施している現地の関係当局を、引き続き支援していきます。

 WHOは、ナイジェリアには持続的かつ定期的な黄熱ウイルスが伝播していることの証拠があることから、この国に行く生後9か月以上のすべての国際旅行者に、黄熱の予防接種を勧めています。ナイジェリアでは、黄熱のリスクのある国から到着した1歳以上の旅行者には、黄熱の予防接種証明書が必要にもなります。黄熱の予防接種は、安全かつ非常に有効性が高く、生涯にわたり免疫で保護します。IHR(2005)第3版によれば、WHOが承認するワクチンを使用した黄熱ワクチンの国際的な接種証明書の有効期限は、ワクチン接種された人に生涯有効となりました。入国の条件として、黄熱ワクチンの追加投与が国際旅行者に要求されることはありません。

 WHOは、この感染発生で入手できている情報に基づく限り、ナイジェリアへの旅行および貿易に如何なる制限も勧めてはいません。

蚊に刺されないための対策

・可能な限り、しっかりと網戸が取り付けられているか、エアコンが設置されている、または、蚊をしっかりと駆除しているホテルやリゾート施設を選んで滞在してください。
・長袖のシャツ、ズボンを着て、できるだけ皮膚の露出部を少なくするようにしてください。
・流行地域では、屋外にでかける場合や網戸が取り付けられていない建物にいる場合には、ディート(DEET)などの有効成分が含まれている虫よけ剤を皮膚の露出部につけてください。使用する場合には、必ず添付文書に記載されている使用法を守ってください。日焼け止めを使う場合は、先に日焼け止めをつけてから、虫よけ剤を使用してください。
・子ども、とくに乳児への虫よけ剤の使用については、小児科医にご相談ください。虫よけ剤が使用できない場合、ベビーカーにぴったりと合う蚊帳でベビーカーを被うように注意してください。

心配な場合には早めの受診を

・海外で発熱などの症状が出たら、できる限り早く医療機関を受診してください。
・また、ご帰国の際に、発熱や心配な症状のある方は検疫所の担当官にご相談ください。帰国後に発症した場合や症状が改善しない場合、受診の前に、お近くの保健所か医療機関または検疫所にご連絡ください。
・医療機関を受診する時には、医師に、渡航先や渡航期間、渡航先での活動などについて、詳しく伝えてください。

出典

WHO. Disease Outbreak News, Emergencies preparedness, response. 22 December 2017
Yellow Fever - Nigeria
http://www.who.int/csr/don/22-december-2017-yellow-fever-nigeria/en/