2018年01月16日更新 黄熱の発生状況-アメリカ大陸

 2018年1月12日付で汎米保健機構(PAHO)より、今年初めて、アメリカ大陸での黄熱の発生状況に関する情報が公表されました。

アメリカ大陸での黄熱の発生状況

 2016年第1週から2017年12月に、ボリビア、ブラジル、コロンビア、エクアドル、フランス領ギアナ、ペルー、スリナムなど、アメリカ大陸7つの国と地域で、黄熱の確定患者が報告されました。アメリカ大陸では、この間に報告された感染者数と動物での感染件数が、この数十年間で確実に最高値に達しました。観察されている増加(傾向)は、(黄熱への)免疫能をもっていない人々に、このウイルスが拡散しやすい生態系が大きく関係しています。
 PAHO/WHOから、前回12月13日に黄熱の疫学情報が発信されて以降、新たな黄熱患者の報告はブラジルからだけでした。この国の発生状況は、次のようになっています。

 ブラジルでは、2016年第2四半期から2017年6月までの黄熱の流行中に、確定患者777人と死亡者261人、そして、動物の集団感染1659件が報告されましたが、その後は感染伝播が低下した状態となりました。2017年第28週から第52週にかけては、連邦直轄区(1人)、サンパウロ州(8人)、ミナスジェライス州(1人)、リオデジャネイロ州(1人)で、確定患者11人が報告されました。サンパウロ州の確定患者について、感染したとみられる場所は、Itatiba、Jundiaí、Mairiporã、Nazaré Paulistaの各行政地区です。ミナスジェライス州とリオデジャネイロ州で感染したとみられる場所は、BrumadinhoとGupimirimの各行政地区です。

 2017年7月から2018年第1週までに、動物の集団感染が2,296件報告されました。このうち、358件が黄熱への感染を確認、790件が分類不能(検体を採取できず)、687件が調査中として残っています。461件は、判定が棄却されました。確認された動物の集団感染が最も多かったのはサンパウロ州で、322件でした。動物の集団感染は、Mato Grosso(マットグロッソ州)でも1件、リオデジャネイロ州でも3件が確認されました。2016-2017年にも動物の集団感染が発生しているミナスジェライス州とサンパウロ州で、同様に発生が確認されており、人への感染のリスクの続いていることが示唆されています。
 動物の集団感染2,296件は、21州の行政地区から報告されました。ここには、これまで、黄熱のリスクがあるとは考えられていなかった地区が含まれています。

 これまでのところ、ネッタイシマカが感染の伝播に関わっていることは報告されていません。

 10年前に、ブラジル南東部と南部で発生した黄熱と流行と動物での集団感染の波が、その後、アルゼンチンやパラグアイにまで達したことを考えると、2017年-2018年の期間中も、ブラジル南東部での黄熱の状況に細心の注意を払って監視する必要があります。

 ブラジル保健省は、2018年1月初めに、黄熱の流行発生を防ぐために、標準量(0.5mL)と分割量(0.1mL)の両方の用量で、大規模な黄熱の予防接種キャンペーンを実施する計画を発表しました。このキャンペーンは、サンパウロ、リオデジャネイロ、バイアの3州76市町村に住む1,970万人(分割量で1,500万人、標準量で470万人)に、2月から3月にかけて実施されます。また、(感染)リスクがあると考えられている地域では、標準量でのワクチン接種が行われます。

PAHOからの勧告事項

 PAHO / WHOは、黄熱の予防接種が要求され、情報が提供され、ワクチン接種が行われている地域に向かう旅行者に対し、加盟国が必要な措置を講じていくことを要請しています。

黄熱ワクチンの接種について
 黄熱ワクチンは安全で高くはない価格であり、ワクチン接種した者には10日後に80〜100%、30日後には99%の幅で免疫の効果が現れるようになります。接種は単回で生涯にわたり免疫保護を得るのに十分であり、(免疫力の)増強のための追加接種は必要ありません。

 入手できるワクチンの量には限りがあり、合理的な使用を念頭に置く必要があるため、PAHO/WHOは、次のことを繰り返し各国の保健当局に勧告しています。
1)リスクのある地域では、行政地区のレベルでこの地域に暮らす住民のワクチン接種率が少なくとも95%を維持していることの評価を実施すること
2)現在、感染の流行が発生していない国では、予防接種キャンペーンを行うべきではありません。感染の可能性の高い人々にワクチン使用の優先順位が与えられるべきであり、再ワクチン接種を避けるべきです。
3)感染が常在する地域へ向かう全ての旅行者は、少なくとも旅行の10日前に、確実に予防接種を行うべきです。
4)ワクチンが利用できる状況に応じて、加盟国は感染の流行に対処するために小規模の備蓄をして置かなければなりません。
5)十分にワクチンが入手できる状況になるまでは、感染が常在していない地域での小児に対する定期予防接種は延期してください。(このとき)入手できる状況になったら、ワクチン接種スケジュールを完了するために、追加の(接種)キャンペーンを実施してください。

注意事項
 ワクチン接種を受けたことのない60歳以上の人で、有害事象が発生するリスクに直面している場合には、黄熱に罹患したときの疫学的なリスクを個別に評価することが求められます。
•予防接種を必要とするCD4陽性細胞数≧200 cells / mm3で、症状のないHIV感染者には、ワクチン接種の求めに応じることができます。
•妊娠女性は、緊急性のある状況で予防接種を受けるべきであり、保健当局の勧告に従う必要があります。
•乳児にワクチンのウイルスを伝播させるリスク(黄熱は生ワクチンである)は、母乳育児中の女性での予防接種の効果よりも低いため、感染が常在する地域で暮らす授乳中の女性にも予防接種は推奨されます。
•黄熱が流行している地域への旅行を予定する妊娠中または授乳中の女性に対しては、旅行を延期するか、避けるかを検討し、それができないときには予防接種が推奨されます。彼女らには、予防接種の潜在的なリスクとベネフィットについてのアドバイスを受け、情報に基づいて意志決定される必要があります。母乳育児によるメリット(受益)は、代替の栄養食品によるものよりも優れています。

 次のような人には、黄熱ワクチンは禁忌となっています。
•免疫不全の病態にある人(胸腺疾患患者、症候性のHIV感染者、悪性新生物の治療中の患者、免疫抑制治療中の患者、免疫を調節治療している患者、最近の臓器移植した患者、現在または最近の放射線療法を受けた患者など)。
•鶏卵や鶏卵から作る製品に対し重度のアレルギーのある人

出典

PAHO. Epidemiological Update. 12 January 2018
Yellow Fever
http://www.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_download&gid=43319&Itemid=270&lang=en