2018年02月08日更新 薬剤耐性・淋菌への警鐘-アメリカ大陸

 2018年2月2日付で汎米保健機構(PAHO)は、広域スペクトル・セファロスポリン系抗生物質への薬剤耐性・淋菌への警戒を促しています。

概要

 PAHO/WHOは、広域スペクトル・セファロスポリン系抗生物質への薬剤耐性・淋菌の報告が増えていることを踏まえ、患者の発見を支援するために、各加盟国に対して調査活動と検査能力を強化し、適正な治療を提供し、(感染への)ハイ・リスク集団を同定すべきとを要請しました。また、患者の予防と速やかな管理は、抗生物質への耐性(の拡大)を緩和させる上で、欠くことのできない対策となります。

背景

 淋病は、経験的に第1選択薬として使用されてきたほとんど全ての系統の抗生物質に対して耐性を示す驚くべき能力をもつために、世界的に感染制御への取り組みが必要とされる優先の性感染症(STI)の1つに挙げられています。スルファニル・アミド、ペニシリン、テトラサイクリン、古くから使用されているマクロライド(例えば、エリスロマイシン)、フルオロキノロンなどの抗生物質は、現在、これらに耐性をもつ淋菌株の罹患率が高いために、世界的に淋菌への治療にはあまり推奨なくなりました。ラテン・アメリカ抗菌耐性サーベイランス・ネットワークのデータによれば、2005年から2015年までに、中南米では、テトラサイクリン、ペニシリン、シプロフロキサシンに対する高いレベルでの耐性が示されました。

 現在、広域スペクトル・セファロスポリン系抗生物質は、淋病に対し単独療法で使用できる治療に推奨できる最後の抗生物質となっています。そのため、淋菌を治療可能な感染症として留めておくためには、耐性(の出現)を予防し、制御することが急務となっています。

淋病(ICD 10 A54.0 -A54.2

 淋病は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)を起因菌として、感染者の粘膜からの滲出物と接触することで伝播されます。ほとんどが、口腔、膣、肛門での性交渉をコンドームを使用しないで行ったことの結果としての感染です。潜伏期間は1〜14日ですが、さらに長いこともあります。症状のない泌尿・生殖器感染症が、特に女性で頻繁に見られます。淋菌は適正に治療されないと、生殖器に合併症を引き起こすことがあります。有効な治療法は、数時間以内に感染(の侵入)を終らせることです。

アメリカ大陸での淋病の発生状況

 アメリカ大陸では、2007年以降、セフトリアキソン耐性淋菌(N. gonorrhoeae)が報告されており、2017年10月現在、アメリカ大陸の4つの国(アルゼンチン、ブラジル、カナダ、米国)で、この病原体による感染が確認されています。

 アルゼンチンでは、2014年に、病気や最近の旅行歴のない男性から、セフトリアキソンとセフィキシムに耐性の淋菌分離株が検出されました。2011年から2015年までに、セファロスポリン系抗生物質への感受性が低下した細菌株およびセファロスポリン系抗生物質への耐性株が2.3%から7.9%に増加したことが報告されました。これらのほとんどは遺伝子配列(ST)1407またはそれに密接に関連した配列に属していました。この遺伝子配列の耐性株は、多くの国で治療の失敗と関連しており、フランスやスペインで高頻度に分離される耐性株が関係しています。

 ブラジルでは、2007年に、セフトリアキソン耐性(淋菌)株が合計で7株報告されました。

 カナダでは、2017年に症状のない女性から、セフトリアキソン耐性淋菌株が発見されました。疫学データおよび遺伝子解析のデータでは、アジアからの広がりが示唆されました。この耐性株は、セフトリアキソン、セフィ​​キシム、シプロフロキサシン、テトラサイクリンに耐性がありました。アジスロマイシンには感受性がありました。

 米国では、アジスロマイシンへの耐性淋菌が8株分離されたことが報告されました。ハワイでも2016年にセフトリアキソンに対する感受性が低下した淋菌が5株報告されました。プエルトリコでは、セフトリアキソンに対して高いレベルの耐性株の分離が、2014年に報告されました。

 最近、いくつもの国でアジスロマイシンへの耐性が高く、セフトリアキソンに対する感受性の低下が報告されています。しかし、セフトリアキソンとアジスロマイシンの同時投与による治療は、依然として、世界中で有効です。これまでのところ、2014年に英国で1例、同時投与による治療での失敗が報告されています。

出典

PAHO. Epidemiological Alert. 2 February 2018
Extended-Spectrum Cephalosporin Resistance in Neisseria gonorrhoeae
http://www.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&Itemid=270&gid=43498&lang=en