2018年02月09日更新 麻しんの発生状況-アメリカ大陸

 2018年2月6日付で、汎米保健機関(PAHO)より、今年初めての麻しんの発生状況の発表がありました。ヨーロッパでの麻しん患者の報告が増加していたことを踏まえて、(アメリカ大陸地域でも)人々を麻しんと風しんから防ぐために、各加盟国に調査活動の体制を強化し、適切な対策を実施することと、アメリカ大陸地域でこれらの病気が既にゼロである状態の維持に努めることが求められています。

世界における発生状況の概要

 2016年11月から2017年12月にかけて、ヨーロッパ地域の国々からは麻しんの確定診断患者17,584人が報告されました。そのうち、91%(15,978人)が2017年に報告されました。この間、ルーマニアでの発生率が最高(人口100万人あたり291.5人)であり、次いでイタリア(人口100万人あたり83.2人)、タジキスタン(人口100万人あたり77.2人)と続いていました。

 ヨーロッパ地域では、2017年1月から10月までに、ヨーロッパ地域で報告された患者(15,978人)のうち、55%(8,842人)で検査確認(血清学的検査、ウイルスの検出・分離)されました。(残る)45%は、疫学的な関連性や臨床経過の一致から(麻しんに)分類されました。麻しんによる死亡者が26人報告され、このうちの15人はルーマニアからの報告でした。これらの国で確認された遺伝子亜型は、ルーマニアではB3とD8、イタリアではB3、D8とH1、タジキスタンでもH1でした。報告された患者の多くが0歳から14歳までの年齢層でした。これらは全患者の57%を占めていました。

 この他の大陸では、2016年から2017年にかけて、中国、エチオピア、インド、インドネシア、ラオス、モンゴル、ナイジェリア、フィリピン、スリランカ、スーダン、タイ、ベトナムなどで、麻しんの流行が報告されました。

アメリカ大陸における発生状況の概要

 アメリカ大陸では、2017年1月から2018年1月までに、アメリカ大陸地域の6か国から麻しん確定患者人が報告されました。内訳は、アンティグア・バーブーダで1人、アルゼンチンで3人、カナダで45人、グアテマラで1人、アメリカ合衆国で120人、ベネズエラで952人でした。

 また、アンティグア・バーブーダとグアテマラから報告された患者は、前者は英国からの、後者はドイツからの、ともに感染輸入の患者でした。

 2018年1月24日に、アンティグア・バーブーダのIHR国家担当者からPAHO/WHOに対し、輸入感染患者が報告されました。患者は、19歳の女性で、1月19日に発疹が発現していましたが、1月20日に英国からアンティグア・バーブーダに旅行で来ていました。この患者には、麻しんワクチンの接種歴がありませんでした。

 患者は、カリブ海・公衆衛生機関(Caribbean Public Health Agency; CAPRHA)によって、1月30日に検査で確認されました。この国の保健当局には、患者が確認された当日に届けられ、対応のための調査と感染制御への活動が開始されました。これまでのところ、2次感染の患者は確認されていません。

 グアテマラからは、2018年1月19日に、麻しん患者の感染輸入が報告されました。この国では、この20年間、麻しん患者はでていませんでした。患者は17歳で1月17日に発疹が発現し、2017年10月から2018年1月2日まで、ドイツを旅行していました。グアテマラに帰国する数日前に、ドイツで麻しんの診断が確定した他の患者と接触機会がありました。

 これまでのところ、2次感染の患者は確認されていません。確認された患者のウイルスの亜型はB3であると、実施された検査で同定されました。

 グアテマラ国家当局によって、速やかに調査と感染制御への活動が実施されました。対応策は、次のようになっています。

・国民に対し、リスクへの途絶えることのない情報伝達
・ウイルス曝露のあった接触者およびその他の者に対し、2018年第4週までにMMRワクチン3,623回分の接種を実施
・患者の住居地から半径5区画以内で生後6か月以上6歳未満の子どもへの無条件での予防接種
・接触者の(調査)追跡と経過観察

 2018年2月1日までに、麻しん疑い患者3人が確認されました。検査結果では、この中の全員が麻しんIgMが陰性でした。

 ベネズエラでは、2017年第26週に最初の麻しん患者が見つかって以降、2018年第4週までに、麻しん疑い患者1,703人が報告され、調査されています。このうち、952人(検査確認が732人と疫学的な関連性によるものが220人)が確認され、751人が診断棄却されました。2017年第38週までは発生率が(前週よりも)高くなり、それ以降は発生率が減る傾向となりました。このデータは暫定的なものなので、注意深く解釈する必要があります。そして、今後の数週間の傾向は、引き続き監視しておく必要があります。

 Apure(アプレ)、Anzoátegui(アンソアテギ )、Delta Amacuro(デルタアマクロ)、 the Capital District(首都地区)、Miranda(ミランダ)、Monagas(モナガス)、Vargas(バルガス)、Zulia(スリア)の各州からも患者は報告されましたが、ほとんどの患者はBolívar(ボリバル)州からで、確認された全患者の82%を占めていました。ボリバル州、カロニ県は発生の中心です。他の地理的地域へのウイルスの拡散は、鉱業と商業活動に関する正式、非公式の経済活動に基づく、住民に高い移動性の動向などの要因の存在によって説明されます。確定患者の中で、最も影響を受けた年齢層は、5歳未満の子どもで、確定患者の59%を占め、続いて6歳~15歳のグループが確定患者の30%を占めています。

 一連の介入において、国の緊急対策計画では、地域と地方行政の緊急対策チームの活用、ワクチン接種戦略の実施と活動、疫学調査活動、接触者の追跡と経過観察、医療従事者の研修、国レベルでの制度整備への支援などを含め、このウイルスの感染伝播を遮断できるように設計されました。

 ベネズエラが麻しん流行の阻止とジフテリアの感染制御への対策計画を実施する中で、PAHO / WHOはベネズエラ国民保健省(MPPS)を支援していっています。

 南北アメリカ地域では、国際専門家会議(IEC)が2015年に風しんに対して、2016年に麻しんに対して、それぞれにゼロとなったことが初めて宣言されました。麻しんウイルスの侵入および拡散を防ぐための軸となる対策には、麻しん疑い患者と風しん疑い患者をどんな場合でも速やかに発見することに十分な感知度を備えた質の高い調査体制の実施を行いながら、感染し易い人々にワクチンを接種することが必要となります。

出典

PAHO. Epidemiological Update. 6 February 2018
Measles - Epidemiological Update
http://www.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&Itemid=270&gid=43506&lang=en