2018年02月21日更新 黄熱の発生状況-アメリカ大陸(更新)

 2018年2月16日付で汎米保健機構(PAHO)より、アメリカ大陸での黄熱の発生状況に関する情報が公表されました。南半球は夏シーズンであり、対策への注意が必要です。

アメリカ大陸での黄熱の発生状況

 2016年第1週から2018年1月にかけて、ボリビア、ブラジル、コロンビア、エクアドル、フランス領ギアナ、ペルー、スリナムなど、アメリカ大陸7つの国と地域で、黄熱の確定患者が報告されました。アメリカ大陸では、この間に報告された感染者数と動物の感染件数が、この数十年間で確実に最高値に達しました。

 前回2018年1月12日に、PAHO/WHOから黄熱の疫学情報が発信されて以降、ブラジルペルーで新たな黄熱患者が報告されました。これらの国の発生状況は、次のようになっています。

 ブラジルでは、2017年7月1日から2018年2月15日までに、黄熱の確定患者409人(死亡者118人を含む)がでました。これは、昨年の同じ時期に報告された数値(患者532人、死亡者166人)よりも少なくなっています。確定患者の報告数が多い州は、順に、サンパウロ州(患者183人、死亡者46人)、ミナスジェライス州(同157人、44人)、リオデジャネイロ州(同68人、27人)、連邦直轄区(死亡者1人)でした。

 2018年最初の4週間に、黄熱の確定患者の大幅な増加がサンパウロ州でみられました。また、リオデジャネイロ州では、大都市の近郊で患者が報告されていた前年2016/2017シーズンの(患者)数を大幅に超えました。サンパウロ州では、確定患者の57%が、Mairiporã行政地区の郊外で感染した可能性が高くなっていました。ここは、サンパウロ市の北15kmに位置しています。リオデジャネイロ州では、確定患者の45%が、ValençaとTeresópolis行政地区の住民でした。後者は、リオデジャネイロ市から96kmに位置しています。ミナスジェライス州では、確定患者の47%が、Belo Horizonte市の南部と南東部の行政地区で暮らしていました。ここは、前年2016/2017シーズンの流行時には、患者が確認されていませんでした。全ての確定患者が感染した可能性のある場所は、人以外の霊長目での黄熱への集団感染が記録された地域に一致していました。

 また、ヨーロッパ在住で、これまでにワクチンを接種したことのない旅行者2人が黄熱と確定診断されました。彼らは、黄熱のリスクがあると考えられ、これまでにもウイルスの伝播が報告されているブラジルの行政地区に滞在していました。

 2018年2月15日に、ブラジル保健省は、Evandro Chagas研究所(パラ州ベレン)によって行われた調査を通じて、2017年にミナスジェライス州ItuêtaとAlvarengaの2つの行政地区の農村部で捕獲されたヒトスジシマカ(Aedes albopictus)から、黄熱ウイルスを検出したことを発表しました。これらの発見は重要で、さらなる調査、特に、感染伝播を媒介する能力を確認することが必要なことを示しています。

 これまでのところ、ネッタイシマカが感染の伝播に関わっていることは報告されていません。

 ブラジルでの動物の集団感染について、2017年7月1日から2018年2月15日までに、合計で3,481件の動物の集団感染が報告されました。これは、1,659件が報告された前年2016/2017シーズンの流行時の件数よりも多いことを示しています。

 これら3,481件のうち、499件で黄熱への感染が確認されました。1,242件では分類不能(検体を採取できず)、1,018件で調査中が続けられています。722件は、判定が棄却されました。確認された動物の集団感染が最も多かったのはサンパウロ州でした。動物の集団感染は、Espiritu Santo(エスピリトサント州)、Mato Grosso(マットグロッソ州)、ミナスジェライス州、リオデジャネイロ州、Tocantins(トカンティンス州)でも確認されました。動物の集団感染は、27の連邦行政地区で発生しています。ここには、これまで、黄熱のリスクがあるとは考えられていなかった地区が含まれています。

 今シーズンに報告された動物の集団感染の件数は、昨シーズンに報告された合計数よりも多くなっています。この状況は、サンパウロやリオデジャネイロのような大都市の環境に非常に近い地域で動物の集団感染が発生している事実からも明らかです。分布地域は、動物の集団感染の波がサンパウロ州の南に向かって進んでいることを示しています。仮に感染発生の波が10年前と同じパターンで繰り返されるならば、今回、ブラジル南東部や南部に及ぼしている感染発生の波は、今後、アルゼンチン、パラグアイなど近隣諸国に達する可能性があります。

 一連の感染発生への対策として、連邦政府と州当局は、感染しやすい人々に免疫力を付けるために大規模なワクチン接種キャンペーンを実施しています。2018年2月15日現在、ブラジルの保健当局が実施した大規模な黄熱の予防接種キャンペーンの速報結果では、リオデジャネイロ州(15行政地区の1,000万人)とサンパウロ州(54行政地区の1,030万人)を対象とする69行政地区で、395万人(分割用量で360万人、標準用量で356,800人)に黄熱ワクチンが接種されたことが示されています。

 この数字は、2州でのワクチン接種の対象者2,050万人の19.3%に当たります。リオデジャネイロ州ではキャンペーンで達成されたワクチン接種率が低いため(対象人口の12%)、州の保健当局はキャンペーンを延長しました。また、サンパウロ州(接種者は対象人口の26%)でも、キャンペーンをさらに数日間延長することの必要性を査定しています。Bahia(バイーア州)では、キャンペーンとして8つの行政地区330万人を対象にワクチン接種が2月19日に開始されます。

 ペルーでは、2018年第1週から第4週までに、感染の可能性の高い患者3人が報告されました。1人は検査で確定診断されました。3人は全員が、黄熱ワクチンを接種していませんでした。

 最初の患者2人は、Ucayali(ウカヤリ)県Coronel Portillo(コロネル・ポルティージョ)郡Calleria地区Pucallpaの街の住民です。この地域は、黄熱(感染)のリスクがあると考えられていました。患者2人は、第2週に症状が現れました。一人目の患者は死亡しました。そして、もう一人の患者は、その配偶者で、退院できました。2人目の患者は、Elisa法検査によるIgMとRT-PCR法検査によって確認されました。検査確認された患者には、Pucallpaの街への旅行歴はありませんでした。そのため、感染の可能性のある場所に関する調査が続けられています。

 三人目の患者は、Madre de Dios(マードレ・デ・ディオス)県Inambari地区Union Progresoの住民です。この地域も、黄熱(感染)のリスクがあると考えられていました。2018年の第4週に症状が現れました。現在、確認検査が行われています。この患者は、LaberintoやColoradoの街、さらに鉱山集積地のあるUnión Guacamayoで河川での運搬作業者として働いていました。

 ペルーでは、2017年1月から12月までに、6県14人の黄熱患者が報告されました。Huánuco(ワヌコ)県で1人、Ayacucho(アヤクーチョ)県で3人、Cusco(クスコ)県で人、Junín(フニン)県で6人、Loreto(ロレート)県で1人、San Martin(サン・マルティン)県で2人です。

各国の担当当局へのアドバイス

 ワクチンを接種していない旅行者に黄熱の確定患者が発生していることは、加盟国が国際旅行者に向けた勧告の普及を強化する必要性を強く示しています。PAHO/WHOは、加盟国に対し、黄熱ワクチン接種が推奨されている地域に向かう際に、(感染)リスクのある人々を最小限に留め、情報を理解しワクチンを受ける旅行者を維持するために必要となる行動を取らせるための取り組みを続けていくことを要請しています。

 2018年1月16日に、WHOは「黄熱ワクチンの推奨事項の情報更新-ブラジル」と題した最新情報を掲載しました。

黄熱ワクチンの接種について

 黄熱ワクチンは安全で高くはない価格であり、ワクチン接種した者には10日後に80〜100%、30日後には99%の幅で免疫の効果が現れるようになります。接種は単回で生涯にわたり免疫保護を得るのに十分であり、(免疫力の)増強のための追加接種は必要ありません。

 入手できるワクチンの量には限りがあり、合理的な使用を念頭に置く必要があるため、PAHO/WHOは、次のことを繰り返し各国の保健当局に勧告しています。
1)リスクのある地域では、行政地区のレベルでこの地域に暮らす住民のワクチン接種率が少なくとも95%を維持していることの評価を実施すること
2)現在、感染の流行が発生していない国では、予防接種キャンペーンを行うべきではありません。感染の可能性の高い人々にワクチン使用の優先順位が与えられるべきであり、再ワクチン接種を避けるべきです。
3)感染が常在する地域へ向かう全ての旅行者は、少なくとも旅行の10日前に、確実に予防接種を行うべきです。
4)ワクチンが利用できる状況に応じて、加盟国は感染の流行に対処するために小規模の備蓄をして置かなければなりません。
5)十分にワクチンが入手できる状況になるまでは、感染が常在していない地域での小児に対する定期予防接種は延期してください。(このとき)入手できる状況になったら、ワクチン接種スケジュールを完了するために、追加の(接種)キャンペーンを実施してください。

注意事項

 ワクチン接種を受けたことのない60歳以上の人で、有害事象が発生するリスクに直面している場合には、黄熱に罹患したときの疫学的なリスクを個別に評価することが求められます。
•予防接種を必要とするCD4陽性細胞数≧200 cells / mm3で、症状のないHIV感染者には、ワクチン接種の求めに応じることができます。
•妊娠女性は、緊急性のある状況で予防接種を受けるべきであり、保健当局の勧告に従う必要があります。
•乳児にワクチンのウイルスを伝播させるリスク(黄熱は生ワクチンである)は、母乳育児中の女性での予防接種の効果よりも低いため、感染が常在する地域で暮らす授乳中の女性にも予防接種は推奨されます。
•黄熱が流行している地域への旅行を予定する妊娠中または授乳中の女性に対しては、旅行を延期するか、避けるかを検討し、それができないときには予防接種が推奨されます。彼女らには、予防接種の潜在的なリスクとベネフィットについてのアドバイスを受け、情報に基づいて意志決定される必要があります。母乳育児によるメリット(受益)は、代替の栄養食品によるものよりも優れています。

 次のような人には、黄熱ワクチンは禁忌となっています。
•免疫不全の病態にある人(胸腺疾患患者、症候性のHIV感染者、悪性新生物の治療中の患者、免疫抑制治療中の患者、免疫を調節治療している患者、最近の臓器移植した患者、現在または最近の放射線療法を受けた患者など)。
•鶏卵や鶏卵から作る製品に対し重度のアレルギーのある人

出典

PAHO. Epidemiological Update. 16 February 2018
Yellow Fever
http://www.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&Itemid=270&gid=43619&lang=en