2018年03月01日更新 黄熱の発生状況 - ブラジル(更新)

2018年2月27日にWHOからブラジルにおける黄熱の発生状況の更新情報が公開されました。

記事の詳細

2018年最初の4週間に、リオ・デ・ジャネイロ州、サンパウロ州、ミナス・ジェライス州で、黄熱の確定患者数が急激に増加しました。ブラジルでは、2017年7月1日から2018年2月16日までに、黄熱の確定患者が464人報告されており、死亡者は154人に上りました。確定患者は、サンパウロ州(患者181人、死亡者53人)、ミナス・ジェライス州(同225人、76人)、リオ・デ・ジャネイロ州(同57人、24例死亡)、連邦直轄区(死亡者1人)から報告されました。これまでの流行期と異なり、今回の流行期は、大都市近郊での患者の発生に伴い、サンパウロ州とリオ・デ・ジャネイロ州でより多くの患者が報告されていることで特徴付けられます。
サンパウロ州では、確定患者の57%がMairiporã行政地区(サンパウロ市の北15kmに位置する農村地帯)で感染しているようです。リオ・デ・ジャネイロ州では、確定患者の45%が、ValençaとTeresópolis行政地区の住民でした。後者は、リオ・デ・ジャネイロ市から96kmに位置しています。全ての確定患者が感染した可能性のある場所は、人以外の霊長目で黄熱の集団感染が記録された地域に一致していました。ミナス・ジェライス州では、確定患者の47%が、Belo Horizonte市の南部と南東部の行政地区で暮らしていました。Belo Horizonte市は、前年2016/2017シーズンの流行時には、患者が確認されていませんでした。

ワクチンを未接種の旅行者で、検査での確定患者2人(フランス人とオランダ人)が報告されました。この旅行者らは、ブラジルに滞在中、黄熱のリスクがあると考えられており、これまでにもウイルスの伝播が報告されているブラジル内の行政地区に滞在していました。また、アルゼンチン人からも、検査での確定患者2人が報告されました。彼らはリオ・デ・ジャネイロ州Angra do Reis(アングラ・ドス・レイス)市Ilha Grande(グランデ島)行政地区、サンパウロ州Isla Bellaで感染した可能性があることが報告されました(両行政地区ともに黄熱のリスクが知られています)。さらに、2月26日までに、チリ人からも黄熱患者3人(うち2人は死亡)が報告されました。彼らは、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロ州アングラ・ド・レイス市Ilha Grande行政地区で感染したようでした。

動物の集団感染が黄熱のシーズン前とシーズン中(の傾向)に沿って絶え間なく報告されており、これまでは黄熱のリスクがあるとはみられていなかった地域に拡大しています。これらの地域は、ウイルスの循環系を維持するのに好都合の生態系であることが示されています。2017年7月1日から2018年2月6日まで、人以外の霊長目での黄熱の集団感染が3,812件報告され、うち517件は検査確認されました。また、1,157件で調査が続けられており、1,397件は分類不能でした。741件は診断が棄却されました。動物の集団感染は、同国27連邦州のうち22州から報告されています。人以外の霊長目で黄熱の循環の確立が確認された動物の集団感染が、6州(エスピリト・サント州、マット・グロッソ州、ミナス・ジェライス州、リオ・デ・ジャネイロ州、サンパウロ州、トカンティンス州)で報告されました。サンパウロは、動物の集団感染全体の42%を占めていました。
さらに、ブラジル保健省は、保健省とEvandro Chagas研究所(パラ州ベレン)によって行われた調査を通じて、2017年にミナス・ジェライス州ItuêtaとAlvarengaの2つの行政地区の農村部で捕獲されたヒトスジシマカ(Aedes albopictus)から、黄熱ウイルスが検出されたことを発表しました。これらの知見は重要で、さらなる調査、特に、感染伝播を媒介する(蚊の)能力を確認することが必要になります。

公衆衛生上の取り組み

2017年9月以降、サンパウロ州で黄熱患者と人以外の霊長類での集団感染が確認されてから、国の担当局は徹底した大規模なキャンペーンと1軒毎のワクチン接種を行い、ワクチン接種への取り組みを強化してきました。また、州および行政地区の保健当局は、患者管理のための医療サービスを強化し、(感染)リスクの情報伝達への取り組みを行ってきました。

2018年1月25日に、ブラジル政府の保健当局は、リオ・デ・ジャネイロ州(15行政地区の1,000万人)とサンパウロ州(54行政地区の1,030万人)の69行政地区を対象とした予防接種キャンペーンを開始しました。
2018年2月16日現在、ブラジルの保健当局が実施した大規模な黄熱の予防接種キャンペーンの予備調査の結果では、430万人(分割用量で390万人、標準用量で379,900人)に黄熱ワクチンが接種されたことが示されています。この数字は、2州で2,000万人を超えるワクチン接種対象者の21%に当たります。リオ・デ・ジャネイロ州では、キャンペーンで達成されたワクチン接種率が低いため(対象人口の12.1%)、州の保健当局はキャンペーンが延長されました。また、サンパウロ州でも、キャンペーン中に接種対象者の29.6%しかワクチン接種を受けていないことから、キャンペーンをさらに数日間延長することの必要性を査定しています。Bahia(バイーア州)では、キャンペーンとして8つの行政地区330万人を対象にワクチン接種が2月19日に開始されました。

WHOによるリスク・アセスメント

この数週間での患者や動物の集団感染の急激な増加は、(感染)リスクのある地域で持続するウイルスの循環と、大都市近郊、特にサンパウロやリオ・デ・ジャネイロ、さらに黄熱のリスクがあるとは考えられていなかった行政地区など、新しい地域への(感染の)拡散によるものです。

これまでのところ、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)が感染の伝播に関わっていることは報告されていません。2016/2017年に感染の発生した州の一部で行われた昆虫学的調査では、主に森林型黄熱を伝播するHaemagogus属の蚊で陽性が示されました。最近では、ブラジル保健省によって、2017年にミナス・ジェライス州ItuêtaとAlvarengaの2つの行政地区の農村部で捕獲されたヒトスジシマカ(Aedes albopictus)から、黄熱ウイルスが検出されたことが明らかとなりました。この知見には、さらに調査が必要となります。

サンパウロ州とリオ・デ・ジャネイロ州での大規模な予防接種キャンペーンの予備調査の結果では、かなりの数の人々がリスクに曝されていることを示唆する低い予防接種率となっており、リスクの高い集団や接種を届けられない集団に対して、ワクチン接種の活動と(感染)リスクの情報伝達の強化が必要となります。ワクチンを接種していない旅行者2人(おそらくは3人)に黄熱の確定患者が発生していることは、加盟国が国際旅行者に向けた勧告の普及を強化することの必要性を示しています。

WHOからのアドバイス

黄熱ウイルスは、Haemagogus属やSabethes属のような森林に生息する蚊によって猿に伝播しています。人もこれらの蚊に刺されると、予防接種を受けていなければ感染することがあります。
予防接種は、黄熱を予防するための最も重要な対策の1つです。ワクチンは数十年にわたり使われてきて、安全で無理のない価格であり、予防接種を受けた人の90%以上が10日以内に、予防接種を受けた人の99%が30日以内に、黄熱に有効な免疫を得ることができます。単回の接種で生涯にわたり免疫保護が得られます。

現在のブラジルでの流行は、すべての黄熱患者がHaemagogus属およびSabethes属の蚊と関連しています。黄熱の(感染)リスクのある地域で暮らす住民および旅行者は、基本的な予防対策を取っておく必要があります。対策には、虫除け剤の使用、長袖と長ズボンの着用、蚊の侵入を防ぐための網戸の設置などがあります。
ウイルス血症を伴い帰国した旅行者は、黄熱を伝播できる環境が揃う地域(生態学的な要因と媒介できる蚊の存在など)で、主に局所的な黄熱の循環系を確立させるリスクを保っています。WHOは、2018年1月16日に国際的な旅行者向けの推奨事項を更新しました。
ネッタイシマカ(Aedes aegypti)によってウイルスが人から人に伝播するようになると、都市部での黄熱ウイルスの伝播が起こります。 ブラジルでは、1942年に都市部での黄熱の発生が記録されました。

WHOは疫学的状況への監視を行い、入手できる最新の情報に基づいて、リスク評価を繰り返し検討していきます。

出典

WHO.Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 27February2018
Yellow fever- Brazil
http://www.who.int/csr/don/27-february-2018-yellow-fever-brazil/en/