新型コロナウイルスのアウトブレイクに関するIHR(国際保健規則)緊急委員会 第2回会合に関する声明

原文の公表は1月30日です。最新の情報を確認してください。

 

2020年1月30日 WHO Statement

中国での新型コロナウイルスのアウトブレイクに関する国際保健規則(IHR)のもとでWHO事務局長が招集した緊急委員会の第2回会合が開催されました。これはアウトブレイクが他の国への輸出している状況のなか、2020年1月30日木曜日の13時30分から18時35分に(ジュネーブ時間)開催されました。委員会の役割は、PHEIC(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)の決定について最終判断をする事務局長に助言することです。また、委員会は公衆衛生に関して助言し、場合に応じて公的な暫定勧告を提案します。

会議の議事録

緊急委員会のメンバーとアドバイザーは、電話会議によって招集されました。事務局長は委員会を歓迎し彼らの支援に謝意を示しました。彼は会議を議長のDidierHoussin教授に引き渡しました。Houssin教授も委員会を歓迎し事務局に発言を求めました。コンプライアンス、リスク管理、および倫理の部門の代表者が、委員会メンバーの役割と責任について説明しました。委員会のメンバーは、機密保持の義務と、利益相反とみなされる可能性のある個人的、経済的、または専門的なつながりを開示する責任をリマインドされました。 出席した各メンバーは調査を受けて、会議に関連すると判断される利益相反は無いと判断されました。前回の会議から変更はありませんでした。その後、議長は会議の議題を確認し、発表者を紹介しました。
中国保健省の代表は、現況と進んでいる公衆衛生対策について報告しました。 現在、中国全国で7,711例の確定例と12,167例の疑い例があります。 確定例のうち、1,370人が重症で170人が死亡しました。124人が回復し病院から退院しました。
WHO事務局は、他の国の状況の概要を提供しました。 現在、18か国で83件の症例があります。 これらのうち、中国への旅行歴がなかったのは7例のみでした。中国以外の3カ国でヒトからヒトへの感染がみられました。うち1例では重症となっており、死亡した例はありませんでした。
委員会は、第1回目の最初の会合において、この事象(イベント)がPHEICに該当するかどうかについて意見が分かれました。その時点の委員会の助言は、この事象(イベント)はPHEICに該当しないというものとなりましたが、委員会メンバーは状況の緊急性に一致した見解を持ち、委員会は翌日に会議を継続することを提案し、そこでは同じ結論に達しました。
今回の2回目の会議は、症例数が大幅に増加していること、確定例を報告する国が追加されたことを踏まえて、開催するものです。

結論とアドバイス

委員会は、中国政府当局の最高レベルのリーダーシップと政治のコミットメント(透明性へのコミットメント、現在のアウトブレイクを調査して封じ込める努力)を歓迎しました。中国は迅速にウイルスを特定し、その塩基配列を共有したので、他の国は迅速にウイルスを診断し、自国を守ることができるようになりました。そして診断ツールが急速に開発されることにつながりました。
中国が実行した非常に強力な措置には、WHOとの日々のやりとりや、さらなる拡散を防ぐための包括的な他機関・複数部局のアプローチが含まれます。また、他の都市や県でも公衆衛生対策を講じています。ウイルスの重症化の可能性及び伝播の強さに関する研究を実施し、データと生物学的資料を共有しています。 国はまた、彼らの支援を必要とする他の国と協力することに同意しました。中国がとった措置は、中国のためのみならず、世界の他の国々にとっても役立つものです。委員会は、WHOとそのパートナーの主導的な役割を認めました。
また、委員会は1か月で5つのWHO地域で症例が報告されているなか、まだ多くの未知のものがあることと、そして、武漢の外および中国の外でヒトからヒトへの感染が発生していることを認めました。委員会は、各国が疾患を早期に検知し、患者を隔離して治療し、接触者を追跡し、リスクに応じて社会のなかで距離をとる措置を促すといった強力な措置を講じれば、ウイルスの拡散を阻止することは依然として可能であると考えています 。状況が展開し続けることにあわせて、感染拡大の防止と低減のための戦略的目標や方策を拡充させていくように認識しておくことが重要です。委員会は、このアウトブレイクが現時点においてPHEICの基準に合致していると意見が一致し、暫定的な勧告として発出される以下のような助言を提案しました。
委員会は、中国、中国の国民、アウトブレイクの最前線で行った中国の行動、そして透明性が期待され成功させていることについて、支援と感謝の精神や観点から、このPHEICの宣言はみなされるべき(解されるべき)と強調しました。また、グローバルな連帯の必要性の観点から、追加の支援を必要とするかもしれない他の地域での準備を強化するためにグローバルな調整された取組が必要であるとしました。

WHOに対するアドバイス

委員会は、国内および地域の専門家を含む、中国へのWHOの学際的な技術ミッションを歓迎しました。このミッションは、取組や対応をレビューし支援するべきものです。アウトブレイクの動物感染源、疾患の臨床的範囲とその重症度、地域社会と医療施設におけるヒトからヒトへの感染の程度、アウトブレイクを制御する取組の調査をします。この状況と影響についての理解を促進し、経験と成功事例の共有を可能になるように、このミッションは国際社会に情報を提供します。
委員会は、隠れた伝播を除外し排除し、リスク管理の措置を通知するために、潜在的な感染源を研究することの重要性を再強調しています。
また、委員会は流行の地域循環が発生しているかどうかを把握するために、病原体ゲノム塩基配列決定を含む湖北省以外の地域で強化された監視の必要性を強調しました。WHOは、この専門家のネットワークを引き続き活用して、アウトブレイクをグローバルに封じ込める方法を評価する必要があります。WHOは、特に脆弱な国や地域に対して、準備と即応に関する集中的な支援を提供すべきです。低所得および中所得国のために、迅速な開発を確保するための措置、有望なワクチン、診断薬、抗ウイルス薬へのアクセス、その他の治療法が開発されるべきです。
WHOは、このアウトブレイクに対応するために必要なすべての技術的および運用上の支援を、パートナーや協力機関の広範なネットワークを含めて、引き続き提供すべきです。包括的なリスクコミュニケーション戦略を実施し、そして、新型コロナウイルスに関連する研究と科学的発展を前に進めることを可能にすることにつながります。
WHOは、国際保健規則の文言をめぐって交渉を再開しないですむような方法で、PHEICとPHEICでないという2つの可能性の間の部分に中間レベルのアラートを設置することについて、妥当性を引き続き調査する必要があります。WHOは、透明性をもって状況を適時、見直しをしながら、エビデンスに基づいた推奨事項を更新する必要があります。
委員会は、入手可能な現在の情報に基づいて、渡航または貿易の制限をしないことを推奨します。
事務局長は、新型コロナウイルスのアウトブレイクがPHEICに該当すると宣言し、委員会の助言を受け入れ、国際保健規則にもとづく暫定的な勧告としてこの助言を公表します。
 
 

中国に対するアドバイス

次のことを継続してください。
●包括的なリスクコミュニケーション戦略を実施して、アウトブレイクの展開や状況、人々における予防及び防護の対策、封じ込め策について、定期的に人々に周知すること
●現在の流行の封じ込めのための公衆衛生対策を強化すること
●保健医療システムの回復力・強靭性(レジリエンス)を確保し、医療従事者を守りマンパワーを確保すること
●中国全土でサーベイランスと積極的な症例検出を強化すること
●WHOおよびパートナーと協力して、このアウトブレイクの疫学および展開と封じ込め対策を把握し評価するための調査を実施すること
●症例に関するデータを共有すること
●このアウトブレイクにおける人獣共通感染の発生源、とりわけ潜在的な地域循環する可能性の特定を続けること。そして、把握したらすぐにWHOに共有すること
●国際交通への干渉を最小限に抑えながら、さらなる評価と治療を行うために症状のある旅行者を早期に発見することを目的として、国際空港と国際港で出国(出航)スクリーニングを実施すること

全ての国に対するアドバイス

さらなる国際的な症例の輸出がどの国でも現れることが予想されます。したがって、積極的なサーベイランス、早期発見、隔離と症例管理、接触追跡と新型コロナウイルスの伝播の防止などについて、すべての国が封じ込めの準備を整えるべきです。そしてすべてのデータをWHOと共有すべきです。技術的助言がWHOのWebサイトで入手できます。
IHR(国際保健規則)に従って、各国はWHOと情報を共有することが法的に義務付けられていることを再確認(リマインド)します。動物での2019-nCoVの検出(種に関する情報、診断テスト、および関連する疫学的情報を含む)は、新興疾患として国際獣疫事務局(OIE)に報告する必要があります。各国は、ヒトの感染を減らし、二次感染と国際的な広がりを防ぎ、マルチセクターのコミュニケーションと連携を通じて国際的な対応に貢献し、ウイルスと病気に関する知識を増やし、積極的に研究を進めることに特に重点を置くべきです。
委員会は、入手可能な現在の情報に基づいて旅行または貿易の制限を推奨していません。各国は、IHRの要求に応じて、実施した渡航に関する措置についてWHOに通知する必要があります。 国は、IHRの第3条の原則に沿って、汚名(スティグマ)や差別を促進する行動に対して警告されています。委員会は、事務局長にこれらの問題に関するさらなる助言を提供し、この急速に進化する状況を考慮して、必要に応じて新しいケースバイケースの勧告を行うよう求めました。

グローバルコミュニティに対して

これは新しいコロナウイルスであり、同様のコロナウイルスは定期的な情報共有と研究に多大な努力を必要とすることが以前に示されています。したがって、グローバルコミュニティはIHR(国際保健規則)の第44条に従って、連帯と協力を引き続き実行すべきです。この新しいウイルスの感染源の特定、ヒトからヒトへの感染の強さ、潜在的な患者の輸入に対する備え、必要な治療法を開発するための研究について、相互に支援すべきです。低および中所得国に対して支援を提供します。この事象(イベント)への対応を可能にするとともに、診断、有望なワクチン及び治療へのアクセスを促進します。
国際保健規則の締約国は、追加の健康対策を実施することによって、国際的な交通を著しく妨げる場合(国際渡航者、手荷物、貨物、コンテナ、輸送、物品などの入国または出国の拒否、またはそれらの24時間以上の遅延)は、国際保健規則第43条に基づいて、実施から48時間以内に公衆衛生上の根拠と正当性をWHOに伝える義務があります。 WHOは正当性を検討したうえで、各国に再検討を要請する場合があります。WHOは、把握した措置と正当化に関する情報を他の締約国と共有する必要があります。
緊急委員会は3か月以内の事務局長が判断する時期に再招集されることになります。事務局長は、委員会の活動に謝意を表しました。

出典

Statement on the second meeting of the International Health Regulations (2005) Emergency Committee regarding the outbreak of novel coronavirus (2019-nCoV)
WHO Statement 30 January 2020
https://www.who.int/news-room/detail/30-01-2020-statement-on-the-second-meeting-of-the-international-health-regulations-(2005)-emergency-committee-regarding-the-outbreak-of-novel-coronavirus-(2019-ncov)