新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO) 2021年7月6日

世界の概況

2021年7月4日時点で、直近1週間(6月28日~7月4日)の新規感染者数は260万人以上が報告され、新規死亡者数は5万4,000人以上が報告されました。前週と比較して、新規感染者数は同程度、新規死亡者数は7%減少しました(図1)。2020年10月初旬以降の報告において、最も少ない新規死亡者数となりましたが、世界的に見ると、COVID-19の発生率は依然として非常に高く、これまでに全世界で報告された感染者の累計は1億8,300万人を超え、死亡者の累計は約400万人となっています。
 
アメリカ地域を除く全ての地域において、新規感染者数が増加しました。ヨーロッパ地域では前週に比べて感染者が急増(30%)し、アフリカ地域では死亡者が急増(23%)しました(表1)。また、アメリカ地域と東南アジア地域を除く全ての地域において、死亡者数の増加が報告されました。
 
直近1週間における新規感染者数が多い上位5か国は、ブラジル(新規感染者数364,709人、30%減少)、インド(新規感染者数312,250人、11%減少)、コロンビア(新規感染者数204,556人、同程度)、インドネシア(新規感染者数168,780人、35%増加)、イギリス(新規感染者数161,805人、67%増加)でした。また、過去1週間で人口10万人当たりの新規感染者数が最も多かったのは、セーシェル(758人)、モンゴル(472人)、コロンビア(402人)、ナミビア(367人)、キプロス(324人)でした。
 
懸念すべき変異株(VOC)の状況について、アルファ株は173の国・地域(前週比+1)、ベータ株は122の国・地域(前週比+2)、ガンマ株は74の国・地域(前週比+2)、デルタ株は104の国・地域(前週比+7)で、それぞれ報告されています。各国の検査能力の向上やデータ収集が強化されている影響もあり、VOCを報告する国や地域が増加し続けています。アルファ株の報告が続いている一方で、デルタ株の感染拡大が進んでいます。
 
注目すべき変異株(VOI)は最新の評価に基づき、イプシロン株(B.1.427/B.1.429)、ゼータ株(P.2)、シータ株(P.3)について、VOIから監視を継続する変異株に再分類されました。
 
図1 2021年7月4日時点の週別・WHO管轄地域別のCOVID-19感染者数及び世界の死亡者数の推移


表1 2021年7月4日時点のWHO管轄地域別の新規・累積COVID-19確定症例数及び死亡者数

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は20万4,000人以上で、新規死亡者数は3,300人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は15%増加し、新規死亡者数は23%増加しました。多くの国々で、感染者と死亡者の増加が報告されおり、地域全体では6週連続で感染者数と死亡者数が顕著に増加(特に南部・東部)しています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
南アフリカ共和国 132,450人 223.3人 28%増加
ザンビア 16,456人 89.5人 14%減少
ナミビア 9,342人 367.7人 28%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
南アフリカ共和国 1,729人 2.9人 46%増加
ザンビア 430人 2.3人 16%増加
ウガンダ 325人 1人未満 34%増加
 

アメリカ地域

直近1週間で確認された新規感染者数は99万2,000人以上で、新規死亡者数は2万6,000人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は13%減少し、新規死亡者数は11%減少しました。地域別では唯一、新規感染者と新規死亡者の両方の減少が報告されました。新規感染者数が100万人を下回ったのは2020年10月以来ですが、南・中央アメリカやカリブ海地域の多くの国々では、過去数週間に渡って高いレベルの感染率と死亡率が報告されています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
ブラジル 364,709人 171.6人 30%減少
コロンビア 204,556人 402.0人 同程度
アルゼンチン 137,852人 305.0人 5%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ブラジル 10,810人 5.1人 14%減少
コロンビア 4,402人 8.7人 4%減少
アルゼンチン 3,403人 7.5人 9%減少
 

東地中海地域

直近1週間で確認された新規感染者数は24万5,000人以上で、新規死亡者数は3,400人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は11%増加し、新規死亡者数は2%増加しました。新規感染者数は2か月ほど減少していましたが、3週連続で増加しています。新規死亡者数は、大きな増減のない経過が続いています。
 
人口10万人当たりの新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
イラン・イスラム共和国 83,054人 98.9人 17%増加
イラク 43,979人 109.3人 16%増加
チュニジア 35,452人 300.0人 59%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
イラン・イスラム共和国 916人 1.1人 7%増加
チュニジア 682人 5.8人 10%増加
アフガニスタン 549人 1.4人 4%増加
 

ヨーロッパ地域

直近1週間で確認された新規感染者数50万5,000人以上で、新規死亡者数は6,900人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は30%増加し、新規死亡者数は6%増加しました。いずれも過去3か月間は減少傾向が続いていましたが、2週間前から増加に転じています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
イギリス 161,805人 238.3人 67%増加
ロシア連邦 159,650人 109.4人 19%増加
トルコ 32,224人 43.0人 7%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
ロシア連邦 4,643人 3.2人 18%増加
トルコ 350人 1人未満 13%減少
ドイツ 276人 1人未満 25%減少
 

東南アジア地域

直近1週間で確認された新規感染者数は61万3,000人以上で、新規死亡者数は1万1,000人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は7%増加し、新規死亡者数は12%減少しました。地域全体の新規感染者数は、インドの傾向を反映して減少を続けていましたが、わずかながら増加に転じました。バングラデシュ、インドネシア、ミャンマー、タイなど一部の国々では、感染者と死亡者の大幅な増加が続いています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
インド 312,250人 22.6人 11%減少
インドネシア 168,780人 61.7人 35%増加
バングラデシュ 56,511人 34.3人 54%増加
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
インド 6,254人 0.5人 31%減少
インドネシア 3,444人 1.3人 39%増加
バングラデシュ 893人 0.5人 43%増加
 

西太平洋地域

西太平洋地域
直近1週間で確認された新規感染者数は12万8,000人以上で、新規死亡者数は1,900人以上でした。前週と比較して、新規感染者数は10%増加し、新規死亡者数は7%増加しました。カンボジア、フィジー、マレーシアは、いずれも増加傾向が続いています。
 
新規感染者が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前週との比較
マレーシア 44,145人 136.4人 18%増加
フィリピン 38,507人 35.1人 同程度
モンゴル 15,478人 472.1人 4%減少
 
新規死亡者が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前週との比較
フィリピン 819人 1人未満 16%増加
マレーシア 550人 1.7人 3%増加
日本 185人 1人未満 28%減少
 

変異株の状況

2021年5月31日、WHOは、新型コロナウイルスの変異株に関する一般の人々の議論を促進するために、懸念すべき変異株(VOC)及び注目すべき変異株(VOI)の言いやすい・覚えやすい新たな呼称を発表しました(表2・表3)。
 
また、VOCやVOIの影響についての理解が進み、サーベイランスや対応の必要性が高まっていることから、WHOは定義を定期的に見直し、調整しています。今後、変異株の状況については、別のページを新たに設けてとりまとめることとしました。
 
SARS-CoV-2変異株の追跡
https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/
 
最新の評価に基づき、イプシロン株(B.1.427/B.1.429)、ゼータ株(P.2)、シータ株(P.3)については、VOIから監視を継続する変異株に再分類されました。これらの変異株の検出数は減少しており、世界的に発生率が低下していることから、他のVOCやVOIと比較して公衆衛生上のリスクが減少していることを示唆しています。
 
イプシロン株は、感染性の増加、一部の抗体治療に対する感受性のわずかな低下、回復期およびワクチン接種後の血清による中和の減少が報告されています。7月6日時点で45か国から報告されており、世界的な有病率は、2月初旬のピーク時5%から、0.5%以下に減少しました。報告数の98%は米国が占めており、アルファ株、ガンマ株、デルタ株などの出現とともに減少し、有病率は0.2%まで低下しています。米国疾病予防管理センター(CDC)は、ワクチンや治療法が有効であることが示唆されていることから、6月29日にイプシロン株を国内VOCから除外しました。
 
ゼータ株は、中和抗体に対する耐性に関与するスパイク状アミノ酸のE484K変異を有していますが、他のVOCやVOIで確認されている変異を有していません。2020年10月に南米の一部地域で患者数が増加した際に出現し、潜在的なリスクの増加が示唆されました。世界的な有病率は低い水準で推移し、2021年3月以降は非常に低い水準(0.5%未満)まで漸減しています。7月6日時点で42か国から報告されており、報告数の52%(n=2,319)はブラジルが占め、2021年1月初旬の有病率55%がピークで、4月中旬以降は低下し続けています。
 
シータ株は、中和抗体に対する抵抗性の増加を示唆するいくつかのアミノ酸の変異を有しており、潜在的に感染性が高いと考えられていますが、現時点で、この変異株の検出数は少ない状況が続いています。7月6日時点で14か国から報告されており、報告数の71%(n=191)はフィリピンが占め、主に今年初めにセントラル・ビサヤ地域で報告されたクラスターです。
 
【VOCの呼称】
・イギリス由来の変異株(B.1.1.7)→ アルファ株
・南アフリカ由来の変異株(B.1.351)→ ベータ株
・ブラジル由来の変異株(P.1)→ ガンマ株
・インド由来の変異株(B.1.617.2)→ デルタ株
 
【VOIの呼称】
・複数国由来の変異株(B.1.525) → イータ株
・アメリカ合衆国由来の変異株(B.1.526)→ イオタ株
・インド由来の変異株(B.1.617.1)→ カッパ株
・ペルー由来の変異株(C.37)→ ラムダ株(6月14日追加)
 
【監視を継続する変異株(VOIから除外)】
・アメリカ合衆国由来の変異株(B.1.427/B.1.429)→ イプシロン株(7月6日変更)
・ブラジル由来の変異株(P.2)→ ゼータ株(7月6日変更)
・フィリピン由来の変異株(P.3)→ シータ株(7月6日変更)

表2 2021年7月6日時点の懸念すべき変異株(VOC)


表3 2021年7月6日時点の注目すべき変異株(VOI)


図2 2021年7月6日時点の懸念すべき変異株(VOC)の流行状況

出典

COVID-19 Situation reports
COVID-19 Weekly Epidemiological Update: 6 July 2021
https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---6-july-2021

翻訳協力:関西空港検疫所