エボラウイルス病(スーダン型)- ウガンダ共和国

Disease outbreak news  2022年10月28日

ウガンダ共和国におけるエボラウイルス病の流行:主要な疫学的指標(2022年10月26日現在)

 確定症例数 115
 推定症例数 21
 確定死亡者数 32
 推定死亡者数 21
 回復症例数 34
 医療従事者における感染者数 15
 感染した地域数 7/147
 フォローアップ中の接触者数 1844
 最初の症例が確定してからの日数 39

発生の概要

2022年9月20日、ウガンダ共和国(以下、「ウガンダ」という。)保健当局は、9月19日にウガンダ中央部ムベンデ(Mubende)県マドゥドゥ(Madudu)小郡の村で患者が確認されたことを受け、スーダン型エボラウイルス(以下、「SUDV」という。)によるエボラウイルス病の発生を宣言しました。
 
10月26日現在、合計115人の確定患者と21人の推定患者が報告されています。死亡数は確定患者で32人と推定患者で21人(確定患者におけるCFR:27.8%)となっています。医療従事者では、15人の患者と4人の死亡が報告されています。
 
10月26日の時点で、国内の9県で1,844人の接触者が追跡調査を受けています。この流行が始まって以来、累積で3,166人の接触者がリストアップされ、そのうち37.7%にあたる1,194人が21日間のフォローアップ期間を終えています。
 
流行開始以来、合計94件の安全で尊厳のある埋葬が行われ、そのうち97.9%にあたる92件は共同埋葬でした。


図1. 2022年9月20日~10月26日のスーダン型エボラウイルス病の確定症例と推定症例の発症日・転帰(生死)。
 
最も影響を受けている県は、全確定症例の54.7%にあたる63例を報告したムベンデ(Mubende)県で、特にマドゥドゥ(Madudu)小郡では全確定症例の18.2%にあたる21例の確定症例が報告されています。前週(2022年10月20日)以降、さらに2県から新たな患者が報告され、感染地区の数は7県となりました。
 
表1. 2022年10月26日現在のSUDVによるエボラウイルス病の県、小群別の確定患者数、確定死亡者数、推定死亡者数



図2. 2022年10月26日時点のSUDVによるエボラウイルス病の確定患者・死亡者の地区別分布
 

公衆衛生上の取り組み

ウガンダにおける保健省、WHO、パートナーによる公衆衛生上の取り組みについての詳細は、WHOアフリカ地域事務局が発行する最新の状況報告書をご参照ください。https://www.afro.who.int/countries/publications?country=879
 
ワクチン開発
 
WHOは、ウガンダで無作為化臨床試験を実施するスーダン型エボラウイルスに対するワクチン候補を特定するために、ワクチン開発者との国際協議を開始しました。検討中のワクチン候補は、cAd3、cAdOX1、rVSV SUDV GPの3つです。臨床試験プロトコルは、ウガンダの倫理・規制委員会で審査中です。
 
臨床試験の各段階で、WHOの優先順位決定委員会は、ワクチン候補の有効性と安全性について収集された証拠を検討し、対応活動に反映させる予定です。
 
近隣諸国における準備と運用態勢
 
近隣6カ国(ブルンジ、コンゴ民主共和国、ケニア、ルワンダ、南スーダン、タンザニア連合共和国)の保健省、国内および国際パートナー、WHOは、スーダン型エボラウイルス病の準備行動を支援しています。これらの活動には、スーダン型エボラウイルス病のための多部門調整機構の活性化、迅速対応チームの再研修、検査施設での再研修、コミュニティベースの監視システムの活性化・強化、コミュニティの関与とリスクコミュニケーション、侵入地点(PoE)の強化、ケース管理能力の評価と強化、その他の活動が含まれます。
 
各国は、SUDVのコミュニティへ侵入を阻止するために、リスクの高い県や小群のレベルに運用準備活動を分担・連鎖・連携するようしています。ウガンダとウガンダに隣接する6カ国の複数の高リスク地区における準備能力の機能を定量化・記録し、実際の準備状況のリアルタイムモニタリングを容易にするため、主要パフォーマンス指標を測定する新しいオンライン準備評価ツールが開発されました。
 
さらに、これらの6カ国では、外部のステークホルダーが共同で準備状況を評価するものとなっています。合同評価ミッション(JAM)は、国レベルだけでなく、リスクの高いサブナショナル・レベルの県や小群でも準備状況の評価しています。JAMの報告書は、リスクのあるすべての国とすべての地域にわたる準備態勢の詳細な状況を示すものです。
 
WHOは、国境地域や近隣諸国のコミュニティにおけるコミュニティでのサーベイランスと準備行動の強化を通じて、早期発見と地域封じ込めを支援するコミュニティ準備のためのチェックリストを開発しています。
 

WHOによるリスク評価

ウガンダは、ザイール型エボラウイルス病やスーダン型エボラウイルス病の発生に対応した経験があり、必要な措置が迅速に開始されています。今回の発生は、2012年以来、ウガンダで初めて発生したスーダン型エボラウイルスによるものです。スーダン型エボラウイルス病の予防と治療のためのワクチンや治療薬が認可されていないため、公衆衛生に深刻な影響を及ぼす可能性のリスクが高いです。
 
2022年9月21日、WHOはこの事象のリスクを国家レベルでは高い、地域および世界レベルでは低いと評価しました。WHOの迅速リスク評価(RRA)は、入手可能で共有された情報に基づいて今後修正される予定ですが、スーダン型エボラウイルス病発生の都市環境への地理的拡大を考慮すると、現在のリスクは国家レベルで非常に高く、地域レベルでも高く、世界レベルでは低いままの評価となります。

WHOからのアドバイス

スーダン型エボラウイルス病のアウトブレイクコントロールを成功させるには、臨床管理、サーベイランス、接触者追跡、優れた検査業務、医療機関やコミュニティにおけるIPC対策の実施、安全で尊厳ある埋葬、コミュニティの関与と社会動員を含む一連の介入策の適用に依存します。
 
症例が確認された場合、早期に支持療法を開始することで、スーダン型エボラウイルス病による死亡を大幅に減少させることができることが示されています。
 
WHOは、今回の流行に関する入手可能な情報に基づき、ウガンダへの渡航や貿易を制限しないよう勧告しています。

出典

Ebola Disease caused by Sudan virus - Uganda
Disease Outbreak News 28 October 2022
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2022-DON421