インフルエンザA(H5)ー英国(グレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国)

Disease outbreak news   2022年1月14日

2022年1月6日、英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)の国際保健規則(IHR)担当窓口は、南西イングランドでヒトにおける鳥インフルエンザA(H5)の検査確定例が検出されたことをWHOに通知しました。
 
この患者は、多数の飼育環境下にある鳥と暮らしており、その鳥たちは2021年12月18日に発症しています。その後、英国動植物衛生庁(APHA)ウェイブリッジ(Weybridge)検査所の英国国立基準検査所で高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)A(H5N1)の陽性反応が確認されたものです。 鳥インフルエンザ感染者の定期的なフォローアップの一環として、2021年12月24日に患者から上気道拭い液検体を採取し、H5亜型のインフルエンザA陽性と判定されました。ウイルスのさらなる特徴の解明は現在進行中です。この結果は、翌日以降に採取された2つの上気道拭い液検体でも再現されました。この症例は臨床的に無症状のままであり、現在、感染性はないと考えられています。
 
感染した敷地内の鳥から採取したサンプルからのウイルス分離に成功した後、APHAはこれらの鳥に存在するHPAI A(H5N1)ウイルスの全ゲノム配列データを解析しました。ゲノム解析の結果、生成された配列には、ヒトに対する特異的な親和性の増加を示す強い相関関係はないことが示されました。

公衆衛生上の取り組み

すべての接触者は特定され、国の公衆衛生プロトコルに沿って管理されています。接触者はいずれも症状を訴えておらず、現在までに二次感染は確認されていません。
 
感染した施設はAPHAの職員が訪問し、すべての鳥の殺処分を完了しました。敷地外の完全な除染と清掃を含むいくつかの措置が完了しました。
 
環境・食料・農村地域省は、感染した施設の周辺3キロメートルを捕獲鳥(モニタリング)管理区域とすることを決定しました。この区域は、予備洗浄と消毒の完了後、少なくとも21日間は維持され、区域内のすべての商業施設の臨床検査を含む監視活動が実施されるまでは解除されない予定です。

WHOによるリスク評価

2003年以降、インフルエンザA(H5N1)のヒト感染は、今回の英国での事例を含め、世界で合計863例、455名の死者が報告されています。今回の症例に先立ち、直近で報告されたヒトでの症例は、2020年10月にラオス人民民主共和国で、裏庭の家禽に曝露した1歳女児が発症したものです(詳細は、2020年11月17日発行の「疾病発生ニュース(Disease Outbreak News)」をご覧ください)。
 
2021年10月1日以降、高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)の家禽類感染は73羽、野鳥での検出は471羽となっています
 
本例は、英国で初めて報告されたインフルエンザA(H5)のヒト感染例です。この症例は臨床的には無症状のままでした。この1例以外にはウイルスは検出されていません。ヒトと動物の両方の保健機関による公衆衛生措置が実施されています。入手可能な情報に基づき、WHOはこのウイルスが一般住民にもたらすリスクは低いと評価し、職業柄、ウイルスに曝露される人のリスクについては低~中程度とみなしています。
 
ヒトにおけるインフルエンザA(H5N1)の予防のための特定のワクチンはありません。パンデミック対策として、ヒトのH5感染を予防するワクチンの候補が開発されています。疫学的状況の綿密な分析、ヒトおよび家禽における最新のウイルスのさらなる特徴づけ、血清学的調査は、関連するリスクを評価し、リスク管理手段を適時調整するために重要です。

WHOからのアドバイス

本件は、インフルエンザの公衆衛生上の取り組みとサーベイランスに関する現在のWHOの勧告内容に影響を与えるものではありません。
 
インフルエンザウイルスは常に変異しやすい性質があるため、WHOは、ヒト(または動物)の健康に影響を与える可能性のある新たな、または蔓延しているインフルエンザウイルスに関連するウイルス学的、疫学的、臨床的変化を検出・監視し、リスク評価のためにそうしたウイルスと関連情報を適時に共有するグローバルサーベイランスの重要性を引き続き強調しています。
 
新型インフルエンザウイルスの全ての亜型によるヒトへの感染例は、国際保健規則(IHR)の下で通知すべきであり、IHR(2005年)の加盟国は、パンデミックを引き起こす可能性のあるA型インフルエンザウイルスによる最近のヒトへの感染について、検査で確定された事例は直ちにWHOに通知することが義務付けられています。この通知には発病の立証は必要ありません(詳しくは、国際保健規則(2005年)に基づきあらゆる状況下で届け出が必要な4つの疾病の症例定義をご覧ください)。
 
変異ウイルスを含むパンデミックの可能性を持つ新型インフルエンザウイルスによるヒトへの感染が確認された場合、動物への曝露歴、旅行歴、接触者追跡などの徹底した疫学調査を(確定検査結果を待つ間でも)行う必要があります。疫学的調査には、新型ウイルスの人から人への感染を示唆するような異常な呼吸器系の問題の早期発見が含まれ、患者が発生した時間と場所から採取した臨床サンプルは、さらなる特性評価のために検査されWHOの協力センターに送られなければなりません。
 
鳥インフルエンザウイルスが地域で蔓延している場合、感染個体のサンプルを取ったり、殺処分や卵・羽毛や汚物の処分、汚染された施設の清掃などの特定の高リスク活動に携わる人々は、適切な個人保護具・服の使用について訓練を受け、必要な個人防護具・服などを提供されるべきです。これらの活動に従事するすべての人は、家禽類やその環境と最終接触日から7日間、地元の保健当局に登録し、注意深く監視されるべきです。
 
動物におけるインフルエンザの発生が確認されている国への渡航者は、農場、生きた動物の取り引きされる市場での動物との接触、動物が屠殺される可能性のある場所への立ち入り、動物の糞で汚染されていると思われる表面への接触を避ける必要があります。渡航者は、石鹸と水で頻繁に手を洗う必要があります。また、渡航者は食品安全と良好な食品衛生を遵守し、食品衛生の徹底されたもののみ消費するようにする必要があります。感染地域から感染者が海外に渡航した場合、渡航中または到着後に他国で感染が検出される可能性があります。この場合、このウイルスはヒトの間で容易に感染する能力を獲得していないため、さらなる地域レベルの広がりは考えにくいとされています。
 
WHOは、現在入手可能な情報に基づき、英国への渡航や貿易を制限することを推奨していません。

出典

nfluenza A (H5) - United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland
Disease Outbreak News: 14 January, 2022
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/influenza-a-(h5)---united-kingdom-of-great-britain-and-northern-ireland