新型コロナウイルス感染症に係る世界の状況報告(更新111)

COVID-19 Weekly Epidemiological Update(WHO)2023年4月20日

世界の概況

新規感染者数については、2023年3月20日から2023年4月16日までの期間(以下「過去28日間」という。)に2,848,275人と報告され、前の過去28日間(2023年2月20日から3月19日までの期間をいう。以下同じ。)と比較して27%減少しました(図1及び表1)。新規死亡者数については、過去28日間に17,877人と報告され、前の過去28日間と比較して32%減少しました(図1及び表1)。この全体的な減少傾向にもかかわらず、報告された感染者数及び死亡者数の重要な増加が東南アジア地域、東地中海地域や他の国で観察されました。2023年4月16日時点で、全世界の累積感染者数にあっては763,665,202人、累積死亡者数にあっては6,912,080人です。
 
報告された新型コロナウイルス感染症の感染者については、有病率の調査で示されたとおり、過小評価したものです。これについては、部分的には多くの国における検査数の減少及び報告の遅延によるものです。この報告に示されたデータについては、不完全のおそれがあり、それゆえ、慎重に解釈する必要があります。さらに、過去数週間のデータについては、各国によって提出された新型コロナウイルス感染症の感染者数及び死亡者数における後ろ向きの変化を組み込みながら継続して更新されています。
 
WHOは、28日間の間隔を使用して疫学的傾向の変化を示します。この比較的広い時間間隔は、報告の遅延を説明し、新規感染者数の週毎の変動が緩徐となり、パンデミックが加速又は失速する点が明らかな図を継続して提供します。集計されたデータについては、WHOの新型コロナウイルス感染症ダッシュボードでいまだ利用可能であり、データのダウンロードが可能です。
 
管轄地域別の新規感染者数(過去28日間)については、アフリカ地域で52%、西太平洋地域で33%、北米・中南米地域で32%及び欧州地域で28%減少しました(東南アジア地域で654%及び東地中海地域で96%増加しました。)。管轄地域別の新規死亡者数(過去28日間)については、北米・中南米地域で31%、西太平洋地域で64%、アフリカ地域で47%及び欧州地域で30%減少しました(東南アジア地域で210%及び東地中海地域で134%増加しました。)。
 
各国別では、新規感染者数が多い上位5か国(過去28日間)は、米国(432,798人、45%減少)、韓国(286,182人、6%増加)、ロシア(259,138人、24%減少)、フランス(219,428人、65%増加)及びブラジル(212,578人、35%増加)でした。また、過去28日間における新規死亡者数が多い上位5か国は、米国(5,559人、32%減少)、ブラジル(1,177人、26%減少)、ロシア(994人、4%減少)、ドイツ(813人、58%減少)及びイラン(754人、193%増加)でした。
 
図1 2023年4月16日時点のWHO管轄地域別の新型コロナウイルス感染者数及び世界の死亡者数の推移(28日間隔)
 
表1 2023年4月16日時点におけるWHO管轄地域別の新型コロナウイルス感染者の感染者数及び死亡者数(28日間隔であり、新規及び累積数を含む。)

新型コロナウイルスの注目すべき変異株及び監視中である変異株

世界的な拡散及び有病率

世界的に2023年3月20日から2023年4月16日までの期間(28日間)において、39,873の検体がGISAIDを通じて共有されました。
 
WHOは、XBB.1.5系統及びXBB.1.16系統という2つの注目すべき変異株(以下「VOI」という。)を調査しています。XBB.1.16系統は、ウイルスの進化に関する技術諮問会合の後にWHOのVOI一覧へ追加されました(2023年4月17日)。XBB.1.16系統は、XBB系統(2つのBA.2下位系統の組換え体である。)の下位系統です。当該の変異株は、2023年1月に最初に報告され、2023年3月22日にWHOの監視中である変異株(以下「VUM」という。)一覧に追加されました。さらに、WHOは、6つのVUM及びその下位系統(BA.2.75系統、CH.1.1系統、BQ.1系統、XBB系統、XBB.1.9.1系統及びXBF系統)を調査しています。
 
XBB.1.5系統は、世界的に96か国から報告されています。XBB.1.5系統は、疫学的第13週(2023年3月27日から4月2日までの期間をいう。以下同じ。)に検体の50.8%を占めており、疫学的第9週(2023年2月27日から3月5日までの期間をいう。以下同じ。)の46.2%から増加しています。
 
XBB.1.6系統は、31か国で報告されています。XBB.1.16系統は、疫学的第13週に提出された検体の4.2%を占めており、疫学的第9週の0.5%から増加しています。XBB.1.16系統の有病率については、GISAIDデータ(特定の系統を特定するアミノ酸置換(T12730A、T28297C及びA28447G)を使用する。)から推定されています。XBB.1.16系統は、推定される増加の優位性及び免疫逃避を理由に世界的に拡散し、感染者発生の増加に寄与するおそれがあります。ただし、現時点で重症度に関する増加の徴候は観察されていません。当初のXBB.1.16系統に関するリスクアセスメントが進行中であり、近日中に公開されます。
 
表2は、VOIとVUMを報告している国の数及び疫学的第9週から13週までの有病率を示しています。VUMについては、XBB*系統及びXBB.1.9.1*系統が増加傾向を示しています。当該の2つのVUMについては、疫学的第9週の8.4%及び4.4%の有病率と比較して疫学的第13週の検体の25.8%及び7.9%をそれぞれ占めました。他のVUMについては、当該期間に減少又は安定傾向を示しています。増加傾向を示すVOI及びVUMにあっては橙色で、安定しているものにあっては青色で、減少傾向を示すものにあっては緑色で強調して示されます。
 
表2 新型コロナウイルスのVOI及びVUMの週別有病率(疫学的第9週から13週までの期間)


*印は、下位系統を含みます(他に個別に明記されているものを除く。)。例えばXBB*系統は、XBB.1.5系統、XBB.1.9.1系統、XBF系統及びXBB.1.16系統を含みません。
$XBB.1.16系統の有病率は、核酸(T12730A、T28297C及びA28447G)を用いて2023年4月17日にGISAIDから抽出されました。
+他のものについては、他の流行している系統です(VOI、VUM、BA.1*系統、BA.2*系統、BA.3*系統、BA.4*系統、BA.5*系統及びBF.7*系統を除く。)。

WHO管轄地域別の概況

アフリカ地域

新規感染者数については、過去28日間で7,752人と報告され、前の28日間と比較して52%減少しました。アフリカ地域内におけるデータが利用可能な50か国の11か国(全体の22%)については、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、モーリタニアで7,000%(2人から142人)、サントメ・プリンシペで1,438%(16人から246人)及びガーナで159%(128人から331人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、過去28日間で17人と報告され、前の28日間と比較して47%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前の28日間との比較
南アフリカ 2,099人 3.5人 79%減少
モーリシャス 1,944人 152.9人 69%増加
ザンビア 533人 3.0人 41%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前の28日間との比較
ジンバブエ 6人 1.0人未満 60%減少
サントメ・プリンシペ 3人 1.4人
カメルーン 2人 1.0人未満 33%減少
※過去28日間の報告がない。

北米・中南米地域

新規感染者数については、過去28日間で812,525人と報告され、前の28日間と比較して32%減少しました。当該地域内におけるデータが利用可能な56か国の8か国(全体の14%)については、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、サバで3,400%(2人から70人)、バルバドスで249%(153人から534人)及びウルグアイで105%(1,000人から2,049人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、過去28日間で8,126人と報告され、前の28日間と比較して31%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前の28日間との比較
米国 432,798人 130.8人 45%減少
ブラジル 212,578人 100.0人 35%増加
チリ 50,819人 265.8人 36%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前の28日間との比較
米国 5,559人 1.7人 32%減少
ブラジル 1,177人 1.0人未満 26%減少
ペルー 354人 1.1人 11%増加
 

東地中海地域

新規感染者数については、過去28日間で55,634人と報告され、前の28日間と比較して96%増加しました。東地中海地域内におけるデータが利用可能な22か国中の9か国(全体の41%)では、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、アフガニスタンで311%(690人から2,836人)、カタールで267%(2,451人から8,996人)及びサウジアラビアで203%(2,328人から7,044人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、過去28日間で857人と報告され、前の28日間と比較して134%増加しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前の28日間との比較
イラン 24,020人 28.6人 90%増加
カタール 8,996人 312.2人 267%増加
サウジアラビア 7,044人 20.2人 203%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前の28日間との比較
イラン 754人 1.0人未満 193%増加
レバノン 34人 1.0人未満 6%減少
チュニジア 22人 1.0人未満 16%増加
 

欧州地域

新規感染者数については、過去28日間で1,141,620人と報告され、前の28日間と比較して28%減少しました。欧州地域内におけるデータが利用可能な61か国中の11か国(全体の18%)では、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、ジブラルタルで83%(48人から88人)、アゼルバイジャンで78%(879人から1,563人)及びブルガリアで72%(2,188人から3,769人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、過去28日間で6,927人と報告され、前の28日間と比較して30%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前の28日間との比較
ロシア 259,138人 177.6人 24%減少
フランス 219,428人 337.4人 65%増加
ドイツ 82,957人 99.7人 71%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前の28日間との比較
ロシア 994人 1.0人未満 4%減少
ドイツ 813人 1.0人 58%減少
スペイン 713人 1.5人 111%増加
 

東南アジア地域

新規感染者数については、過去28日間で141,367人と報告され、前の28日間と比較して654%増加しました。東南アジア地域内におけるデータが利用可能な11か国中の8か国(全体の73%)では、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、ネパールで1,933%(49人から996人)、インドで1,068%(10,503人から122,695人)及びモルディブで1,004%(26人から287人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、過去28日間で484と報告され、前の28日間と比較して210%増加しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前の28日間との比較
インド 122,695人 8.9人 1,068%増加    
インドネシア 16,091人 5.9人 125%増加
ネパール 996人 3.4人 1,933%増加
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前の28日間との比較
インド 312人 1.0人未満 643%増加
インドネシア 152人 1.0人未満 79%増加
タイ 13人 1.0人未満 52%減少
 

西太平洋地域

新規感染者数については、過去28日間で689,377人と報告され、前の28日間と比較して33%減少しました。西太平洋地域内におけるデータが利用可能な35か国中の10か国(全体の29%)では、20%以上の新規感染者数の増加が報告され、ベトナムで878%(329人から3,217人)、クック諸島で267%(6人から22人)及びモンゴルで267%(15人から55人)の最大の増加が報告されました。
 
新規死亡者数については、過去28日間で1,466人と報告され、前の28日間と比較して64%減少しました。
 
新規感染者数が多い上位3か国
国名 新規感染者数 人口10万人当たりの
新規感染者数
前の28日間との比較
韓国 286,182人 558.2人 6%増加
日本 199,392人 157.7人 30%減少
豪国 77,134人 302.5人 5%減少
 
新規死亡者数が多い上位3か国
国名 新規死亡者数 人口10万人当たりの
新規死亡者数
前の28日間との比較
日本 709人 1.0人未満 61%減少
韓国 201人 1.0人未満 34%減少
フィリピン 161人 1.0人未満 36%減少
 

入院及び集中治療室入室

合計75,486件の新規入院数及び2,758件のICU入室数が世界的に報告されました(2023年3月13日から2023年4月9日までの期間(以下本項における「過去28日間」という。))。これについては、過去28日間の前の28日間(2023年2月13日から3月12日までの期間をいう。以下同じ。)と比較して新規入院数が4%増加し、新規ICU入室数が4%減少したことを示しています。当該の提示された入院数に関するデータについては、暫定的なものであり、新規のデータが利用可能になると、変更となるおそれがあります。さらに、入院データは、報告遅延の対象です。これらのデータについては、新型コロナウイルスの偶発的な感染による入院及び新型コロナウイルス感染症の重症化による入院の双方が含まれる可能性があります。
 
過去28日間に52か国(22%)が新たな入院に関するデータを少なくとも1回WHOへ報告しました。新規入院数のデータに関する高い割合を報告した地域については、欧州地域(38%、23か国)、東地中海地域(27%、6か国)、東南アジア地域(27%、3か国)、アフリカ地域(20%、10か国)、北米・中南米地域(13%、7か国)及び西太平洋地域(9%、3か国)です。
 
新規入院数を一貫して報告した25か国のうち8か国(32%)が前の28日間と比較して20%以上の増加を記録しました(カタール(441%、46件から249件)、アフガニスタン(43%、7件から10件)、フランス(39%、7,540件から10,485件)、インドネシア(35%、1,280件から1,732件)、ラトビア(34%、532件から713件)、ウクライナ(26%、13,872件から17,423件)、エストニア(25%、443件から555件)及びマレーシア(21%、3,712件から4,498件))。新規入院数が最多の国については、ウクライナ(26%増加、13,872件から17,423件)、フランス(39%増加、7,540件から10,485件)及びイタリア(25%減少、11,785件から8,866件)です。
 
WHO管轄6地域全体の過去28日間に合計38か国(16%)が新たなICU入室に関するデータを少なくとも1回WHOに報告しました。新たなICU入室のデータに関する高い割合を報告している各国の地域については、欧州地域(30%、18国)、東地中海地域(23%、5か国)、東南アジア地域(18%、2か国)、アフリカ地域(10%、5か国)、北米・中南米地域(9%、5か国)及び西太平洋地域(9%、3か国)です。
 
一貫して新たなICU入室数を報告した23か国(10%)のうち、5か国(22%)が前の28日間と比較して20%以上の増加を示しました(カタール(75%増加、4件から7件)、フランス(33%増加、721件から959件)、パキスタン(29%増加、17件から22件)、マレーシア(28%増加、29件から37件)及びインドネシア(26%増加、82件から103件))。ICU入室数が最多の国については、フランス(33%増加、721件から959件)、ウクライナ(3%減少、451件から438件)及びイタリア(34%減少、447件から294件)でした。
 
図4 WHOへ週毎に報告された新型コロナウイルス感染症の感染者数、死亡者数、入院数及びICU入室数(2023年4月9日時点)
※直近の数週間は報告遅延の対象のため、減少傾向として解釈しません。


 

出典

World Health Organization. “Weekly epidemiological update on COVID-19 – 20 April 2023”.WHO.2023.https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update-on-covid-19---20-april-2023,(参照2023-04-21).