感染症についての情報

ハンタウイルス感染症(腎症候性出血熱、ハンタウイルス肺症候群) Hantavirus Infection

ハンタウイルスはネズミなどのげっ歯類の一部が持っているウイルスです。分類上はブニヤウイルス科のハンタウイルス属に属します。流行地域でウイルスを持っているげっ歯類にかまれたり、排泄物に触れたり、排泄物を含んだほこりを吸い込んだりすることによって感染します。腎症候性出血熱、ハンタウイルス肺症候群という2つの疾患を起こします。

腎症候性出血熱 Hemorrhagic Fever with Renal Syndrome:HFRS

発熱、腎臓の障害を特徴とする疾患で、主な流行地域は極東アジア(中国、数万例/年)と北欧・東欧(数千例/年)を主とするユーラシア大陸全域です。わが国では1960~70年代に発生の報告がありますが、その後はみられていません。

どうやってうつる

ウイルスを持ったげっ歯類の糞や尿が粘膜や傷口に直接触れたり、排泄物の含まれたほこりを吸いこんだり、直接げっ歯類に咬まれたりすることで感染します。ヒトからヒトへの感染例は報告されていません。

症状

10~20日の潜伏期の後に、突然の発熱、頭痛、悪寒、脱力、めまい、背部痛、腹痛、嘔吐が生じます。また、顔面の発赤、目の充血、発疹などの出血症状がみられることもあります。軽症型では上気道炎症状と微熱、検査でわかる程度の尿異常だけで回復します。一方、重症型は発熱に続いて、低血圧・ショック(4~10日)、尿の減少(8~13日)、尿の増加(20~28日)、回復という強い腎機能障害を伴います。重症型では3~15%が死亡します。

治療

ショック状態や急性の腎機能障害を起こしうることを考慮しながら治療することが重要です。また、抗ウイルス薬であるリバビリンが有効であるという報告があります。

予防

予防接種はわが国にはありません。げっ歯類との接触がないように環境を整備することが予防上のポイントとなります。糞や尿で汚染された場合には、掃除機やほうきなどのほこりを巻き上げるような器具は使わずに、漂白剤で汚染部を十分に湿らせます。その後ペーパータオルなどを用いてふき取り、ごみ袋に入れて廃棄します。

ハンタウイルス肺症候群 Hantavirus Pulmonary Syndrome

1993年、米国南西部で初めて流行が確認された呼吸器疾患で、新種のハンタウイルスが病原体であること判明しました。これまでに、米国、カナダ、南米(アルゼンチン、チリ、パラグアイ、ブラジル、ウルグアイ、ボリビア、パナマ)で患者が発生しています。約40%が死亡する重症度の高い疾患です。

どうやってうつる

北米ではシカマウス、南米ではコトンラットやコメネズミなどのげっ歯類から感染します。いずれのげっ歯類も日本には生息していません。ウイルスを持ったげっ歯類の糞尿が混ざったほこりを吸い込むことで感染します。北米のハンタウイルス肺症候群では、ヒトからヒトへの感染は起こらないと考えられています。

症状

潜伏期間は1~5週間と推定されています。突然の発熱、頭痛、悪寒がみられます(1~4日間)。その後、呼吸困難、酸素欠乏状態が急速に出現します。呼吸数の増加、脈拍数の増加が顕著になります。入院時の症状として発熱、筋痛、悪寒がほぼ全例でみられ、嘔気、嘔吐、下痢および倦怠がしばしばみられます。 他に短い呼吸、めまい、関節痛、背部痛、胸痛、腹痛、発汗および咳がみられ、まれに鼻汁や咽喉痛があります。

治療

早期の集中治療が必須で、時に早い時点での人工呼吸が必要となります。集中治療を行う前でも酸素不足を防がなければなりません。感染者に対しては血中酸素飽和度、水分のバランスおよび血圧を注意深く観察する必要があります。

予防

腎症候性出血熱の場合と同様に、げっ歯類との接触がないように環境を整え、汚染された場合には適切な処理をします。