2013年10月18日更新 アメリカ大陸におけるハンタウイルス肺症候群の発生状況について

ハンタウイルス肺症候群は、ハンタウイルスによって起こる病気で、げっ歯類の糞や尿が混ざったほこりを吸い込むことで感染する病気です。感染してから1~6週間後に、初期の症状として、発熱、筋肉痛、だるさが現れます。また、頭痛、めまい、寒気、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛がみられることもあります。初期の症状が現れてから4~10日後に呼吸困難や血圧低下が起こり、死亡することもあります。致死率は35%から50%に達します。

10 月17日付で公表された汎米保健機関(PAHO)の情報によりますと、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、カナダ、チリ、エクアドル、パナマ、パラグアイ、米国、ウルグアイ、ベネズエラで、過去数年間にハンタウイルス肺症候群の患者が発生しました。

アルゼンチンでは、1997年以降、ハンタウイルス肺症候群の患者が発生しており、年間平均患者数は83人です。2011年の患者数は年間平均患者数の2倍に増加しました。しかし、2012年と今年第35週までの患者数は年間平均患者数を下回り、減少しています。

カナダでは、ハンタウイルス肺症候群の患者発生は稀ですが、年間数人の患者が発生しており、主に春(3月から4月)と秋(9月から11月)に増加します。2000年以降、全国で届出対象疾患になり、これまでに64人の確定患者が報告されています。2009年は患者の発生報告はありませんでした。今年は10月11日現在、12人の患者が報告されており、過去14年間の年間平均患者数を上回りました。患者が発生している地域は主に西部で、アルバータ(Alberta)州、ブリティッシュ・コロンビア(British Columbia)州、マニトバ(Manitoba )州、サスカチュワン(Saskatchewan)州です。

チリでは、1995年以降の年間平均患者数は67人です。患者は主に春から夏(9月から3月)にかけて発生しています。しかし、2011年には、主にロス・ラゴス(Los Lagos)州とアイセン(Aysen)州において、6月から10月にかけて、げっ歯類の増加と同時に患者数が増加しました。2012年の初旬にチリの中部と南部で発生した山火事の影響で、げっ歯類は他の地域に移動しました。2012年に、ビオビオ(Biobío)州とラ・アラウカニア州のマレコ(Malleco)県にハンタウイルスに関する注意喚起が行われました。今年は第40週までにハンタウイルス肺症候群の患者が33人発生したほか、ハンタウイルスに感染した軽症の確定患者が3人報告されています。この患者数は、2011年と2012年の患者数を下回っています。

パラグアイでは、1995年にチャコ(Chaco)地方で、初めてハンタウイルス肺症候群の患者が発生しました。2011年には56人、2012年には18人の患者が発生しました。今年は第40週までに2人の患者が報告されています。

パナマでは、1999年以降、ハンタウイルス肺症候群の確定患者が発生しており、年間平均患者数は12人です。しかし、2012年には16人の患者が発生し、今年は8月21日までに14人の確定患者が発生しています。

米国では、1993年以降、34州でハンタウイルス肺症候群の確定患者が発生しており、年間平均患者数は29人です。2012年には30人の患者が報告され、今年は9月21日までに7人の患者が報告されています。2008年に初めてソウルウイルスによる腎症候性出血熱の地域内感染が確認されました。

ウルグアイでは、1997年以降、ハンタウイルス肺症候群の確定患者が発生しており、年間平均患者数は9人です。患者はカネローネス(Canelones)県とモンテビデオ(Montevideo)県で多く報告されています。2010年に初めて北部で患者が報告されました。

感染を予防するためには、げっ歯類との接触がないように環境を整える必要があります。げっ歯類に触らないようにするほか、屋内でもげっ歯類がいるような場所は避け、ほこりを舞い上げないように注意する必要があります。

感染症情報ハンタウイルス感染症

出典

PAHOEpidemiological AlertHantavirus Pulmonary Syndrome(HPS) 17 October 2013
http://www.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&gid=
23387&Itemid=