2014年05月16日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況について (更新26)

 5月15日付けで公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、ヨルダン、レバノン、オランダ、アラブ首長国連邦(UAE)、米国からMERS(マーズ)コロナウイルスに感染した確定患者が報告されました。

オランダ
 5月14日、オランダの国立IHRフォーカルポイント(NFP)からWHOへ、オランダで初めてのMERS-CoV感染患者が検査確定診断されたと報告がありました。患者は70歳のオランダ人男性で2014年4月26日から5月10日までサウジアラビアに渡航歴がありました。

 患者はサウジアラビアのメディナ滞在中の2014年5月1日に発症しました。患者は5月6日にメッカの救急診療部で診察を受け、抗生剤の投与を受けました。サウジアラビア滞在中に呼吸器症状はありませんでした。5月10日にオランダへ帰国した際、呼吸器症状の発症を含め症状が悪化して、同日入院しました。5月13日にMERS-CoVが陽性となりました。現在ICUに入院中ですが、状態は安定しています。

 報告では、患者の動物との接触や生の動物製品の摂食はありません。航空機内を含め、濃厚接触者の同定が開始されました。

米国
 2014年5月12日、米国IHRフォーカルポイントから合衆国内で2例目となる検査確定診断のMERS-CoV患者が報告されました。患者は40代男性で、サウジアラビアのジッダ在住のヘルスケアワーカーです。

 2014年5月1日にロンドンヒースロー経由の民間機で米国マサチューセッツ州ボストンへ渡航しました。ボストンからジョージア州アトランタ、フロリダ州オーランドへ移動しています。

 患者は2014年5月1日のジッダからロンドンへの航空機内で体調不良を感じ、軽度発熱、悪寒、軽度の咳がみられました。5月9日救急外来を受診し入院になりました。状態は安定しています。

 CDCの国際移住検疫局(Global Migration and Quarantine:DGMQ)部門は地域、州、国際関係機関と連携して対応を続け、また接触者の同定、居場所の確認、面談を行うため航空会社から搭乗者リストを手に入れました。

アラブ首長国連邦
 2014年5月11日、アラブ首長国連邦IHRフォーカルポイント(NFP)からアブダビ在住のMERS-CoV患者が新たに9人報告されました。2人はUAE国籍、1人はオマーン国籍、6人はそれぞれ異なる国籍ですが、アブダビに住んでいました。

 ・51歳オマーン国籍男性、オマーンのブライミ特別行政区居住。2014年4月18日に発熱、4月20日に
 入院し、4月23日にMERS-CoV陽性。現在隔離入院中で状態は安定。併存疾患(基礎疾患)があり、
 渡航歴はなく、動物との接触歴やMERS-CoV確定患者との接触歴もない。オマーンのNFPもすでに
 この症例について報告をうけている。

 ・39歳女性で、アブダビ在住のヘルスケアワーカー。接触者調査でスクリーニングされた。無症状
 で、4月25日の検査で確定診断。4月18日にWHOへ報告されたMERS-CoV確定患者への接触歴が
 あり、基礎疾患はなく、渡航歴や動物との接触歴もない。

 ・30歳UAE国籍男性で、アブダビ在住。2014年4月24日、咳と息切れで救急外来を受診。臨床状態
 は安定しており、外来で治療された。4月25日MERS-CoV陽性となり現在入院しているが状態は良
 好。報告によると基礎疾患があり、渡航歴無し、動物との接触歴無し、MERS-CoV確定患者との接
 触歴無し。

 ・42歳UAE国籍男性で、アブダビ在住。無症状で、この報告の最初の確定患者との接触者スクリー
 ニングで確認。4月25日の検査でMERS-CoV陽性。渡航歴と動物との接触歴無し。

 ・30歳女性でアブダビ在住のヘルスケアワーカー。4月15日に咽頭痛出現。病院内での集団発生に
 関連したヘルスケアワーカーに対する一般的なスクリーニングが4月16日に実施され喀痰を採取さ
 れた。4月17日にMERS-CoV陽性となり同日入院し、4月22日に退院。基礎疾患はなく、重大な渡航
 歴はなく、動物との接触歴無し。

 ・44歳男性でアブダビ在住のヘルスケアワーカー。2014年4月19日軽度の咽頭痛出現。4月17日に
 WHOへ報告のあった確定患者と4月13日の集会で接触歴あり。4月21日の検査でMERS-CoV陽性。
 4月22日に入院し5月1日に退院。基礎疾患はなく、重大な渡航歴と動物との接触歴無し。

 ・41歳男性で、アブダビ在住の病院職員。無症状で、患者との接触歴もなかったが、職場の一般的
 なスクリーニング検査で発見。4月21日の検査でMERS-CoV陽性、4月22日に入院し4月27日に退
 院。基礎疾患はなく重大な渡航歴や動物との接触歴無し。

 ・68歳男性で、アブダビ在住の病院職員。無症状で、患者との接触歴もなかったが、職場の一般的
 なスクリーニング検査で発見。4月23日の検査でMERS-CoV陽性、4月24日に隔離入院、4月30日
 に退院。基礎疾患があり、重大な渡航歴はなく、動物との接触歴無し。

 ・45歳男性で、アブダビ在住の病院職員。無症状で、患者との接触歴もなかったが、職場の一般的
 なスクリーニング検査で発見。4月26日に検査でMERS-CoV陽性、同日隔離入院し5月1日に退院。
 基礎疾患はなく、大きな渡航歴や動物との接触歴無し。

 2014年5月8日、アラブ首長国連邦IHRフォーカルポイント(NFP)からアブダビ在住のMERS-CoV患者が新たに4人報告されました。

 ・37歳男性で、アブダビで働く外国人建設労働者。4月23日に発症し、4月29日に入院。5月1日の検
 査でMERS-CoV陽性が確認され、現在はICUで状態は重篤だが安定。基礎疾患はなく、渡航歴もな
 く、確定患者や動物との接触歴なし。

 ・38歳女性で、アブダビのクリニック行政担当者。4月20日に発症し4月26日に入院。初期の検査で
 MERS-CoVは陰性で、4月27日に再度検査され5月1日に陽性。現在はICUに入院中で状態は重篤
 だが安定。いくつかの基礎疾患があり、渡航歴無し、確定患者との接触歴、動物との接触歴、ラクダ
 の生のミルクの飲用歴無し。

 ・61歳男性で、アブダビ在住の外国籍洋品店オーナー。3月18日から心房細動と慢性閉塞性肺疾患
 (COPD)で入院中。4月29日に検体が採取され5月1日にMERS-CoV検査陽性。現在ICU入院中で、
 状態は重篤だが安定。渡航歴無し、確定患者や動物との接触歴無し、ラクダの生のミルクの飲用歴
 無し。

 ・34歳女性でアブダビ在住の外国人。無症状で、明らかな確定患者との接触歴はなく、職場のマスス
 クリーニングで発見。4月29日に検体が採取され5月1日にMERS-CoV検査陽性。基礎疾患はなく、
 渡航歴無し、確定患者や動物との接触歴無し。患者はベジタリアンで殺菌された乳製品のみを摂
 食。

 さらに4月8日、アラブ首長国連邦NFPからWHOへMERS-CoV患者が新たに1人報告されました。

 ・59歳男性で、アブダビ在住の農場作業員。3月28日に発熱で発症。3月30日にICU入院。4月3日、
 MES-CoV確定診断。入院した確定患者との接触歴があったと報告あり。

 公衆衛生担当部門は接触者の追跡調査と疫学的調査を継続しており、さらに進展があれば連絡があります。

ヨルダン
 2014年5月11日、ヨルダンNFPはWHOへ新たに1人のMERS-CoV症例を報告しました。

 症例は50歳男性でヨルダン国籍のヘルスケアワーカーで、ザルカ行政区在住です。5月7日に発症しました。5月10日、症状が悪化し胸部レントゲン写真で肺炎と診断されました。同日入院し、検査でMERS-CoV陽性となりました。2人のMERS-CoV確定患者との接触歴があります。現在状態は安定しており、渡航歴、動物との接触歴はありません。

 6人の家族、24人のヘルスケアワーカーの追跡調査とMERS-CoVスクリーニングが現在続いています。

レバノン
 2014年5月8日、レバノン国立IHRフォーカルポイント(NFP)から初めてのMERS-CoV確定患者が報告されました。

 2014年4月22日、60歳男性のヘルスケアワーカーでレバノン人が高熱を訴えました。4月27日、肺炎と診断され、4月30日入院しました。発熱、呼吸困難、湿性咳嗽の症状です。5月2日、MERS-CoV陽性の結果が出ました。患者は基礎疾患がありましたが、状態は安定していて5月7日に退院しました。

 患者は確定患者との接触歴、動物との接触歴、ラクダの生ミルクの飲用歴はないと報告されています。発症する14日以内の渡航歴も報告されていません。

 患者は湾岸地域全域を旅行し、特にクウェート、サウジアラビア、UAEへ出かけていました。患者の渡航についての調査が継続しています。最近の渡航は発症の5週間前にUAEへ出かけ発症の8週間前にジッダでMERS-CoV患者が急増した病院の一つを訪れていました。

 全体として、これまでに、WHOに報告されたMERSコロナウイルスに感染した確定患者は死亡者173人を含み572人になりました。この合計数にはこの報告書の18人を含み、サウジアラビアから5月5日から5月9日までに報告された58人の確定患者が含まれています。WHOはこれらの症例の情報についてサウジアラビアと協力し、さらにできるだけ速やかに更新していきます。

WHOのアドバイス
 現在の状況と利用可能な情報に基づいて、WHOはすべての加盟国へ、重症急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを継続し、通常と異なる傾向がみられた場合には慎重に検討するよう推奨しています。

 医療機関でMERSコロナウイルスに感染するかもしれないため、感染予防・制御を強化し続ける必要があります。MERSコロナウイルスの感染が疑われる患者や確定患者に医療を提供する施設では、他の患者やヘルスケアワーカー、医療機関を訪れる人にウイルスが感染するリスクを減らすために適切な対策を行うべきです。すべての医療従事者に対して感染予防・制御に関する教育と訓練を定期的に実施すべきです。

 MERSコロナウイルスに感染した患者の中には、軽症の患者や、所見が非典型的である患者がおり、患者を常に早期に発見できるわけではありません。そのため、MERSコロナウイルスや他の病原体に感染した疑いがある患者や確定患者の有無にかかわらず、常に、どの場所でも、すべての患者に対して標準予防策を実施することが重要です。

 急性呼吸器感染症の症状のある患者に医療を提供する際には、飛沫予防策を追加すべきです。また、MERSコロナウイルスに感染した可能性がある患者や確定患者に医療を提供する際には、眼の防護を加えた接触予防策を追加すべきです。エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気予防策を行う必要があります。

 臨床的にも疫学的にもMERSコロナウイルスの感染が強く疑われる場合には、その患者の最初の鼻咽頭スワブ(ぬぐい液)の検査が陰性であっても、感染している可能性があるとして管理すべきです。最初の検査が陰性であっても、再検査を行うべきで、下気道からの検体が望ましいです。

 医療従事者は、引き続き、警戒するよう勧められます。最近、中東から帰国し、SARIを発症した患者には、現在のサーベイランスに関する推奨に示されている通り、MERSコロナウイルスの検査をすべきです。WHOは、すべての加盟国に対し、MERSコロナウイルスの新たな感染者が発生した際には、考えられる感染源と臨床経過の情報を合わせて、速やかに評価して報告するよう呼びかけています。感染様式を確認するための感染源調査は速やかに実施されるべきで、それにより、ウイルスの更なる伝播を防ぐことができます。

 MERSコロナウイルスに感染して重症となるリスクが高い人は、ウイルスが存在する可能性があると知られる農場や飼育小屋を訪れる際に、動物との接触を避けるべきです。一般市民は、農場を訪れる際に、動物を触る前と触った後の定期的な手洗いを行う、病気の動物との接触を避ける、食品衛生対策を実施する等の一般的な衛生対策をしっかりと実施すべきです。

 WHOは、この事例に関して、入国時の特別なスクリーニングおよび渡航や貿易を制限することを推奨していません。

 海外渡航時には、手洗いの励行や動物との接触を避けるなど、一般的な衛生対策を心がけていただくとともに、MERSコロナウイルスの患者が発生している国に滞在した後に、発熱や咳などの呼吸器症状が現れた場合には、検疫所にご相談ください。

出典

WHO Global Alert and Response
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) – update
http://www.who.int/csr/don/2014_05_15_mers/en/

参考

FORTH 最新ニュース
中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)に関するIHR緊急委員会第5回会議でのWHOの声明 (2014年5月16日)
http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2014/05161151.html

中東呼吸器症候群コロナウイルスMERS-CoV (リスクアセスメント) (2014年5日2日)
http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2014/05021419.html