中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)に関するIHR緊急委員会第5回会議でのWHOの声明

2014年5月14日 WHO(原文[英語]へのリンク

MERS-CoVに関し、国際保健規則(2005)のもと、事務局長によって召集された緊急委員会の第5回会合が、2014年5月13日(火)ジュネーブ時間(CEST)12:07から17:12までテレビ会議によって開催されました。

緊急委員会のメンバーに加えて、3名の専門家アドバイザーが情報セッションに限定して参加しました。このアドバイザーは、事務局長に対する公式の助言作成には参加しませんでした。

さらに、2013年12月以来MERS-CoVの症例あるいは感染の証拠について報告してきた、MERS-CoVの影響を受けた13か国(エジプト、ギリシャ、ヨルダン、クウェート、レバノン、マレーシア、オマーン、フィリピン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、アメリカ合衆国およびイエメン)が、テレビ会議の最初の部分で参席しました。

WHOの事務局は、疫学面および科学面での進展状況に関する更新情報およびその評価について情報提供を行いましたが、これには、コミュニティーのレベルや病院での最近の症例増加について、伝播様式について、また2014年4月28日~5月5日かけてWHOが行ったサウジアラビアへの派遣調査での主な結果などが含まれていました。

MERS-CoVの影響を受けた国々は、各国がとった措置や現状に対する懸念など、各国における最近の事例に関する情報を提供しました。

委員会のメンバーは、提供された情報について議論しました。現在の情報に基づいて、委員会は、公衆衛生に与える影響の観点から、状況の深刻度は増大したが、ヒトからヒトへの伝播が続いているという証拠はないことを提示しました。討議の結果、委員会は、国際的な公衆衛生上の脅威となりうる事象(PHEIC)の条件はまだ満たされていないという結論を下しました。

しかしながら、委員会は、現在の状況に関する懸念が著しく増大したことを強調しました。委員会の懸念が集中したのは、最近の症例数の急増、感染予防と感染制御の体系的な脆弱性、また重大情報の欠落、そして、非常にMERS-CoVに感受性の高い国に症例が輸出される可能性があることについてでした。委員会は、WHOと加盟国に対し、下記の項目に対して直ちに対応するように要求しました。

  • 国家における感染予防と感染制御策を改善し、すべての国々の医療施設でそれらを実行すること。これはMERS-CoVの影響を受けた国で最も緊急に行わなければならない。
  • 疫学情報、特に危険因子についてより理解を深め、防御措置の有効性をよりよく評価するために、症例対照調査、血清学的調査、環境調査、動物調査などの必須の調査を開始し、加速すること。
  • 非常にMERS-CoVに感受性の高い国々、特にサハラ以南のアフリカ諸国について、地域での実現困難性を考慮しながら支援すること。
  • 症例および接触者の同定および管理を強化すること。
  • 一般大衆、医療専門家、高リスクの人、そして政策決定者に対して、MERS-CoVに関する認識を最大限に高め、効果的なリスク・コミュニケーションを行うこと。
  • 各省庁間で、また特に国際獣疫事務局(OIE)および国連食糧農業機関(FAO)といった関連国際組織と、相互の共同作業および情報共有を強化すること。
  • MERS-CoVの一層の拡散を防御するために、大規模な大衆集会(マスギャザリング)について、その際の助言事項を作成し、それを広く浸透させること。
  • 国際保健規則(2005)に従って、タイミングよくWHOと情報共有すること。

委員会の助言および現在利用可能な情報に基づき、事務局長はこの委員会の評価を受理しました。事務局長は委員会の作業に対して感謝を表明しました。

WHOの事務局は、委員会のメンバーとアドバイザーに対し、引き続き定期的に更新情報を提供していきます。委員会の懸案事項を考慮し、緊急委員会は2014年6月に、あるいは状況によって必要な場合にはそれ以前に再召集されることになります。

出典

WHO statement14 May 2014
WHO statement on the Fifth Meeting of the IHR Emergency Committee concerning MERS-CoV
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2014/mers-20140514/en/