海外渡航のためのワクチン(予防接種)
◎ 予防接種証明書を要求される場合
感染症が流行している地域の国々に入国する際やそれらの流行国から入国、乗り継ぐときに予防接種証明書の提示を求める国があります。
また、渡航目的によっては、入学や留学、病院で面会の際にも予防接種証明書を要求される場合があります。
◎ 自分自身を感染症から守り、周囲の人への二次感染を防止する。
外国では、日本にはない病気が発生しています。また、日本にいる時よりも感染リスクが高い病気があります。予防接種によって予防できる病気は限られていますが、接種により罹患や重症化のリスクを下げることができます。必要な予防接種は、渡航先、渡航期間、渡航形態、渡航目的、渡航者自身の年齢、健康状態、予防接種歴などによって異なります。
事前に渡航先の感染症情報を収集するとともに、それぞれの予防接種について理解した上で、渡航者一人一人が接種を行う医師とよく相談して、予防接種を受けるかどうかを決めてください。
予防接種の計画は余裕をもって早めに!
★予防接種実施機関の探し方
予防接種の種類と推奨される方
予防接種 | 対象 |
黄熱 | 感染リスクのある地域に渡航する人 入国に際して証明書の提示を求める国へ渡航する人 |
A型肝炎 | 流行地域に渡航する人、70歳以下 |
B型肝炎 | 血液や体液に接触する(受診や性行為など含む)可能性のある人 |
破傷風 | 渡航先の仕事や辺境地への旅行などでケガをする可能性がある人 |
狂犬病 | 動物研究者など、動物と直接接触する人 イヌやキツネ、コウモリなどの哺乳動物が多い地域へ行く人で、特に 医療アクセスがよくない地域へ行く人 |
ポリオ | 流行地域に渡航する人 |
日本脳炎 | 流行地域に長期滞在する人(主に東南アジアでブタを飼っている農村部) |
麻しん風しん | 疾患への免疫が不十分な人 |
インフルエンザ | 流行時期または流行地域に渡航する人 |
髄膜炎菌 | 流行地域に渡航する人、留学等に際して証明書の提示を求められる人、学生寮や宿舎での共同生活を予定している人 |
★渡航者自身の予防接種歴については、母子健康手帳に記録されています。記録が見つからない場合は、必要に応じて接種時にお住まいになっていた自治体にお問い合わせください(記録の保管状況は自治体により異なっています)。日本での接種年齢やスケジュールについては、こちら(国立感染症研究所)をご参照ください。
★日本国内で承認されているワクチンについては、日本で接種可能なワクチンの種類(国立感染症研究所)をご覧下さい。
予防接種で予防できる病気
破傷風
日本では、小児期にジフテリア・百日咳・ポリオとの4種混合ワクチン(DPT-IPV)、ジフテリア・百日咳との3種混合ワクチン(DPT)、ジフテリアとの2種混合ワクチン(DT) が用いられています。1968年(昭和43年)からは3種混合ワクチン(DPT)、2012年(平成24年)からは4種混合ワクチン(DPT-IPV)として接種されています。追加の2種混合ワクチン(DT)を12歳時に受けていれば、20代前半くらいまでは免疫が持続するとされています。その後は、1回の追加接種で約10年間有効な免疫がつきます。
A型肝炎
ワクチンは2~4週間隔で2回接種します。6か月目に追加接種をすると少なくとも5年以上の効果が続くとされています。
B型肝炎
一般に健康な(免疫不全でない)成人の感染では一過性感染が多く、急性肝炎の経過をとるものと感染しても症状が出ない不顕性感染となるものがあります。一過性感染例では劇症化して死亡する例(約2%)を除くと、多くは、およそ3か月で肝機能が正常化します。ワクチンは4週間隔で2回接種し、さらに、20~24週間後に1回接種します。
狂犬病
なお、曝露前のワクチン接種を行っている場合であっても、狂犬病が存在しないとされる限られた国々以外、特に狂犬病発生地域では、動物に引っかかれたり、咬まれたりした場合には曝露後(動物に咬まれた後)にもワクチン接種が必要であることに注意が必要です。曝露後の接種に関しては、咬まれた傷の状況や使用できるワクチンの種類により接種回数が異なりますので、接種を行う医師にご相談ください。適切に曝露後ワクチンを接種できれば、発症を予防することができます。
(参考)国立国際医療研究センター病院 狂犬病の予防について
http://www.hosp.ncgm.go.jp/isc/vaccines/010/index.html
日本脳炎
ポリオ(急性灰白髄炎)
ポリオはポリオウイルスによって、急性の麻痺が起こる病気です。
WHOでは、患者が発生している国に渡航する場合には、以前にポリオの予防接種を受けていても、渡航前に追加の接種をすすめています。ポリオ発生国(アフガニスタン、米国、アルジェリア、イエメン、イスラエル、インドネシア、ウクライナ、英国、エジプト、エチオピア、エリトリア、ガーナ、カナダ、カメルーン、ギニア、ケニア、コートジボワール、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、ザンビア、ジブチ、ジンバブエ、スーダン、セネガル、ソマリア、タンザニア、チャド、中央アフリカ、トーゴ、ナイジェリア、ニジェール、パキスタン、ブルキナファソ、ブルンジ、ベナン、ボツワナ、マダガスカル、マラウイ、マリ、モーリタニア、モザンビーク)に渡航される方は、現地での行動様式や感染状況に応じて追加の予防接種を検討してください。
日本では、特に1975年(昭和50年)から1977年(昭和52年)生まれの人は、ポリオに対する免疫が低いことがわかっています。
参考
1)Statement following the Thirty-seventh Meeting of the IHR Emergency Committee for Polio (who.int)
https://www.who.int/news/item/22-12-2023-statement-following-the-thirty-seventh-meeting-of-the-ihr-emergency-committee-for-polio(最終閲覧日2024年3月13日)
2)海外安全ホームページ: 広域情報 (mofa.go.jp)
https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2023C059.html (最終閲覧日2024年3月13日)
3) https://polioeradication.org/(最終閲覧日2024年3月13日)
黄熱
ジフテリア
日本では、小児期に破傷風・百日咳・ポリオとの4種混合ワクチン(DPT-IPV)、百日咳・破傷風との3種混合ワクチン(DPT)、破傷風との2種混合ワクチン(DT)が用いられています。1968年(昭和43年)からは3種混合ワクチン(DPT)、2012年(平成24年)からは4種混合ワクチン(DPT-IPV)として接種されています。追加の2種混合ワクチン(DT)を12歳時に受けていれば、20代前半くらいまでは免疫が持続していますので、それまでは追加の接種は不要です。その後は、1回の追加接種で約10年間の有効な免疫がつきます。
麻しん
日本では、小児期に2回の予防接種が行われ、風しんとの混合ワクチン(MR)が用いられています。
麻しんにかかったことがない方、麻しんの予防接種を受けたことがない方、ワクチンを1回しか接種していない方または予防接種を受けたかどうかがわからない方など麻しん(はしか)への免疫が不十分な方は、予防接種を検討してください。
麻しんについての詳しい情報は厚生労働省「麻しん・風しん」、国立感染症研究所「麻疹」、「はしかから身を守るために」(ビデオ)をご参照下さい。
風しん
通常は自然に治りますが、まれに脳炎を引き起こし入院が必要になることがあります。
妊娠20週頃までの妊婦が風しんウイルスに感染すると、生まれてくる子どもが先天性風しん症候群になり、難聴・白内障・心臓の病気などをもって生まれてくることがあり、予防のためには、妊娠前に家族や周囲の人も含めて予防接種を受けておくことが最も重要です。
日本では、小児期に2回の予防接種が行われ、麻しんとの混合ワクチン(MR)が用いられています。加えて、昭和37年4月2日から昭和54年4月1日までの間に生まれた男性については、2025年3月31日まで無料で風しんの予防接種を受けられる機会が設けられています。詳細はお住まいの自治体にお問い合わせください。
風しんにかかったことがない方、風しんの予防接種を受けたことがない方、ワクチンを1回しか接種していない方または予防接種を受けたかどうかがわからない方など風しんへの免疫が不十分な方は、予防接種を検討してください。
風しんについての詳しい情報は厚生労働省「麻しん・風しん」、国立感染症研究所「風しん」をご参照下さい。
髄膜炎菌感染症
髄膜炎菌にはいくつかのタイプがあり、A群はアフリカのサハラ砂漠の南側、髄膜炎ベルト地帯と呼ばれる大西洋からインド洋に至る東西に細長い地域が流行の中心ですが、メッカへの巡礼など人が密集する環境により西アジアでも時に流行が見られています。日本や欧米でもB群、C群、Y群、W-135群などが学生などの間で集団感染を起こしました。
予防には、髄膜炎菌のA、C、W、Y群に対する4価結合型ワクチンが有効ですが、このワクチンではB群は予防できません。米国のようにこのワクチンを原則として全ての小児 (10代)を接種対象としている国もあり、こうした国へ留学する場合には、入学前に接種証明書の提示を求められる場合があります。
新型コロナウイルス
各国の入国に際しての条件等については、新型コロナウイルスに係る日本からの渡航者・日本人に対する各国・地域の入国制限措置及び入国に際しての条件・行動制限措置(https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/pdfhistory_world.html外務省ホームページ(最終閲覧日2024年3月13日)を参照してください。
海外渡航で検討する予防接種の種類の目安(地域別)
黄熱についての詳細は、各国・地域の黄熱予防接種証明書要求及び推奨状況
(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/yellow_fever_certificate.html)
も併せてご参照ください。
【各地域で感染リスクがありワクチンで予防や重症化の防止ができる疾患】
地域 | Area | 黄熱 | A型 肝炎 |
B型 肝炎 |
ポリオ | 狂犬病 | 日本 脳炎 |
髄膜 炎菌 |
麻しん 風しん |
水痘 | 破傷風 | インフルエンザ |
北アメリカ | Northern America | ◎ | ○ | ○ | ○ | |||||||
カリブ | Caribbean | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ||||
中央アメリカ | Central America | (●※1) | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | |||
南アメリカ | South America | ● | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | |||
中央アジア | Central Asia | ◎ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | |||
東アジア | Eastern Asia | ◎ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | |||
東南アジア | South-eastern Asia | ◎ | ○ | (○※3) | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ||
南アジア | Southern Asia | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ||
西アジア | Western Asia | ◎ | ○ | (○※4) | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | |||
豪州・ニュージーランド | Australia and New Zealand | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ||||||
メラネシア | Melanesia | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ||||
ミクロネシア | Micronesia | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ||||
ポリネシア | Polynesia | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ||||
北アフリカ | Northern Africa | (●※2) | ◎ | ○ | ○ | ○ | (○※2) | ◎ | ○ | ○ | ○ | |
東アフリカ | Eastern Africa | ● | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | |
中央アフリカ | Middle Africa | ● | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | |
西アフリカ | Western Africa | ● | ◎ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ | |
南アフリカ | Southern Africa | ◎ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | |||
北ヨーロッパ | Northern Europe | ◎ | ○ | ○ | ○ | |||||||
東ヨーロッパ | Eastern Europe | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | |||
西ヨーロッパ | Western Europe | ◎ | ○ | ○ | ○ | |||||||
南ヨーロッパ | Southern Europe | ◎ | ○ | ○ | ○ |
●:黄熱に感染するリスクがある地域に渡航する場合は、渡航10日前までに予防接種が必要です
◎:疾患に感染するリスクがある地域に渡航する場合は、渡航前の予防接種の検討をお勧めしています
○:局地的な発生地域への滞在、感染リスクがある行程、渡航者のご年齢等の免疫状況等によって、渡航前の予防接種が検討されます
(接種には、混合ワクチンが使用される場合もあります。)
※1 パナマ
※2 スーダン南部
※3 一部の国
※4 一部の国
※印の最新情報等については下記をご参照ください(最終閲覧日2024年3月13日)
Vaccination requirements and recommendations for international travellers; and malaria situation per country – 2022 edition (who.int)
Statement following the Thirty-seventh Meeting of the IHR Emergency Committee for Polio (who.int)
実際のワクチン接種にあたっては、接種医師から十分な説明を受けた上で接種を行うかどうかを決めましょう。