2014年05月26日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況について (更新28)

 5月22日、23日付けで公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、米国の国立IHRフォーカルポイント(NFP)から、米国で5月2日に報告されたMERS(マーズ)コロナウイルス感染患者との接触者で、感染症例が確認されたと、また21日、アラブ首長国連邦(UAE)から新たに3人のMERS-CoV感染症例が確認されたとWHOへ報告がありました。

米国
 最初に確認された患者の接触者調査の一部として、接触者のMERS-CoVの検査が実施されました。接触者が最初の感染者に接触した10日後の呼吸器検体のPCRによるMERS-CoVの検査は陰性でした。接触後14日後の5月16日に採取した血液検査で抗体が陽性でした。現在接触者は無症状です。症例は70代男性で、基礎疾患がありましたが、米国外への渡航歴はありませんでした。(この症例は5月20日FORTHの新着ニュース、CDCプレスリリースの症例と同一症例です。リンク

アラブ首長国連邦
 2014年5月21日、アラブ首長国連邦IHRフォーカルポイント(NFP)からアブダビ在住のMERS-CoV患者が新たに3人報告されました。詳細は以下のとおりです。

 ・71歳男性で、アブダビ在住。いくつかの基礎疾患があり、2014年2月11日入院。5月4日発熱し、5月
 7日PCRでMERS-CoV陽性。現在の状態は安定している。入院中、確定症例(5月11日にWHOへ報
 告のあった39歳女性のヘルスワーカー)との接触あり。男性は動物との接触歴、ラクダの生製品の
 摂食歴なし。

 ・26歳男性で、アブダビ在住。検査で確定診断された症例との接触歴はなく、5月7日、職場の一般
 的なスクリーニングで確認。2014年5月8日のPCRで陽性。スクリーニング時点で無症状であったが、
 5月1日に軽度の咳があったことが調査で判明。男性には基礎疾患はなく、渡航歴なし。動物との接
 触歴があったが(ウシ、ヒツジはあるが、ラクダはなし)、ラクダの生製品の摂食歴はなし。5月8日に
 隔離入院し5月14日に退院。

 ・36歳男性で、アブダビ在住。5月2日に発熱、軽度の呼吸困難で発症し、5月4日に外来受診。症状
 が悪化し、5月7日に高熱、呼吸困難の悪化で入院。5月9日にPCRでMERS-CoV陽性。5月12日に回
 復し退院。男性には基礎疾患があったが、確定患者との接触、渡航歴の報告なし。動物との接触
 歴、ラクダの生製品の摂食歴もなかった。

 接触者調査は継続して行われており、さらなる情報があれば追加発表されます。

 全体として、これまでに、WHOに報告されたMERSコロナウイルスに感染した確定患者は死亡者193人を含み635人になりました。この合計数には今回更新の症例報告を含み、サウジアラビアから5月16日から5月18日までに報告された17人の確定患者が含まれています。WHOはこれらの症例の情報についてサウジアラビアと協力し、さらにできるだけ速やかに更新していきます。

WHOのアドバイス
 現在の状況と利用可能な情報に基づいて、WHOはすべての加盟国へ、重症急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを継続し、通常と異なる傾向がみられた場合には慎重に検討するよう推奨しています。

 医療機関でMERSコロナウイルスに感染するかもしれないため、感染予防・制御を強化し続ける必要があります。MERSコロナウイルスの感染が疑われる患者や確定患者に医療を提供する施設では、他の患者やヘルスケアワーカー、医療機関を訪れる人にウイルスが感染するリスクを減らすために適切な対策を行うべきです。すべての医療従事者に対して感染予防・制御に関する教育と訓練を定期的に実施すべきです。

 MERSコロナウイルスに感染した患者の中には、軽症の患者や、所見が非典型的である患者がおり、患者を常に早期に発見できるわけではありません。そのため、MERSコロナウイルスや他の病原体に感染した疑いがある患者や確定患者の有無にかかわらず、常に、どの場所でも、すべての患者に対して標準予防策を実施することが重要です。

 急性呼吸器感染症の症状のある患者に医療を提供する際には、飛沫予防策を追加すべきです。また、MERSコロナウイルスに感染した可能性がある患者や確定患者に医療を提供する際には、眼の防護を加えた接触予防策を追加すべきです。エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気予防策を行う必要があります。

 臨床的にも疫学的にもMERSコロナウイルスの感染が強く疑われる場合には、その患者の最初の鼻咽頭スワブ(ぬぐい液)の検査が陰性であっても、感染している可能性があるとして管理すべきです。最初の検査が陰性であっても、再検査を行うべきで、下気道からの検体が望ましいです。

 医療従事者は、引き続き、警戒するよう勧められます。最近、中東から帰国し、SARIを発症した患者には、現在のサーベイランスに関する推奨に示されている通り、MERSコロナウイルスの検査をすべきです。WHOは、すべての加盟国に対し、MERSコロナウイルスの新たな感染者が発生した際には、考えられる感染源と臨床経過の情報を合わせて、速やかに評価して報告するよう呼びかけています。感染様式を確認するための感染源調査は速やかに実施されるべきで、それにより、ウイルスの更なる伝播を防ぐことができます。

 MERSコロナウイルスに感染して重症となるリスクが高い人は、ウイルスが存在する可能性があると知られる農場や飼育小屋を訪れる際に、動物との接触を避けるべきです。一般市民は、農場を訪れる際に、動物を触る前と触った後の定期的な手洗いを行う、病気の動物との接触を避ける、食品衛生対策を実施する等の一般的な衛生対策をしっかりと実施すべきです。

 WHOは、この事例に関して、入国時の特別なスクリーニングおよび渡航や貿易を制限することを推奨していません。

 海外渡航時には、手洗いの励行や動物との接触を避けるなど、一般的な衛生対策を心がけていただくとともに、MERSコロナウイルスの患者が発生している国に滞在した後に、発熱や咳などの呼吸器症状が現れた場合には、検疫所にご相談ください。

出典

WHO Global Alert and Response
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) – update
http://www.who.int/csr/don/2014_05_23_mers/en/ 
http://www.who.int/csr/don/2014_05_22_mers/en/

参考

FORTH 最新ニュース
中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)に関するIHR緊急委員会第5回会議でのWHOの声明 (2014年5月16日)
http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2014/05161151.html

中東呼吸器症候群コロナウイルスMERS-CoV (リスクアセスメント) (2014年5日2日)
http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2014/05021419.html