2015年10月13日更新 ラオスでワクチン由来のポリオが発生しています

ポリオ(急性灰白髄炎)は、ポリオウイルスによって急性の麻痺が起こる病気です。ウイルスが人の口の中に入って、腸の中で増えることで感染します。

2015年10月12日付で公表されたWHOの情報によりますと、10月8日にラオスの国際保健規約(IHR)国家担当者はワクチン由来のポリオウイルス1型患者1人をWHOに報告しました。

症例の詳細情報

ラオスで、ワクチン由来のポリオウイルス1型(cVDPV1)の流行による患者1人が確認されました。患者は8歳男児で、9月7日に麻痺を発症し、9月11日に死亡しました。

このウイルスの遺伝子配列は10月6日にワクチン由来であることが確認され、2年以上もこの地域で流行していたことが示唆されています。この患児はボーリカムサイ県Bolikhan地方に住んでいました。この地域は、以前から予防接種率が低く、2009年から2014年における3回の経口ポリオワクチン接種率は40%から66%と報告され、2015年も現在までは44%でした。

ラオスに常在した野生型ウイルスの最後の患者は1993年に報告されました。

公衆衛生上の取り組み

この流行への取り組みでは、包括的な流行への対策活動が、ポリオウイルス流行時の対策への世界ポリオ撲滅推進計画の標準対策手順に沿って行われています。保健省、WHO、ユニセフ、米国疾病管理センターのラオス事務所が合同チームを創り、さらに調査を行うために10月7日にボーリカムサイ県を訪れました。感染の影響を受けた村で行われた迅速調査では、経口ポリオワクチンの接種率が低いことが示されました。患者の家族周辺での発症患者の発見への調査が継続され、患者家族と地域の健康な子どもからの糞便検体が収集されています。

国と県レベルでの緊急対策センター(EOCs)が、感染流行への対応活動を指揮するために立ち上げられています。ボーリカムサイ県と隣接するいくつかの県で、経口ポリオワクチンの追加接種を行う大規模な予防接種キャンペーンへの準備が進められています。追加キャンペーンの範囲は、現在進行中の調査終了後に確定される予定です。

WHOのリスク評価

ワクチン由来のポリオウイルス(cVDPVs)の流行は、稀ではありますが、経口ポリオワクチンの遺伝子から変異したポリオウイルスの遺伝子株でしばしば報告されることです。これらは、予防接種が不十分ないくつかの集団では発生することがあります。

永久にポリオを終結させるためには、野生型とワクチン由来、両方のポリオを撲滅する必要があります。ワクチン由来のポリオウイルスにリスクがあるために、永続的にポリオのない世界を確保するためには経口ポリオウイルスは使用を停止していかなければなりません。経口ポリオウイルスワクチンは、経口ポリオワクチンの2型の除去に始まり、段階的に取り除かれていっています。2016年4月に予定されている経口ポリオワクチンの3価から2価への切り替えは実質的なワクチン由来のポリオウイルスのリスクの軽減となります(ワクチン由来のポリオウイルスの90%が2型を原因とするため)。最終的には、全ての経口ポリオワクチンの使用を停止し、ワクチン由来のポリオウイルスを引き起こすことのない不活化ワクチンへ移行する段階が設定されています。

相対的にこの地域で出入りする人々は限定されており、ワクチンの予防接種活動が計画されていることから、WHOはラオスからワクチン由来のポリオウイルス1型(cVDPV1)が国際的に拡大する危険性は低いと評価しています。

WHOからのアドバイス

すべての国、特に、頻繁にポリオ発生の影響を受けた国や地域を旅行したり接触を持ったりする人のいる国では、新たないかなるウイルスの感染輸入をも速やかに検出し、迅速に対策しやすくするために、急性弛緩性麻痺(AFP)患者のサーベイランスを強化することが重要です。加えて、国、領土および地域はいかなるウイルスの新たな侵入の影響も最小限にとどめるために、地域レベルで一様に定期予防接種の高い接種率を維持することが必要です。

WHO海外旅行および健康情報では、ポリオ発生の影響を受けた地域に旅行するすべての者に対して十分にポリオの予防接種を受けることを勧めています。感染地域からの住民および4週間以上の滞在者は、その出発に先立つこと4週から12か月の間に、経口ポリオワクチンまたは不活化ポリオワクチンの追加接種を受けることが必要です。

感染症情報

ポリオ(急性灰白髄炎)

出典

WHO. Disease outbreak news. Circulating vaccine-derived poliovirus - Lao People's Democratic Republic. 12 October 2015.
http://www.who.int/csr/don/12-october-2015-polio/en/