2016年01月08日更新 アメリカ大陸での黄熱に対する警戒情報

 2015年12月31日付で汎米保健機関(PAHO)より、アメリカ大陸での黄熱に関する警戒情報が発表されました。そのうち、旅行者に関係する文章を抜粋しています。

 アメリカ大陸のいくつかの地域での黄熱の発生の観点から、また、継続するエルニーニョ南方振動(ENSO)の状況から、汎米保健機関/世界保健機関(PAHO/ WHO)は、黄熱患者の発見と確認への対処能力の確立と維持、特に黄熱の発生リスクのある地域で必要な場合には、感染が疑われる患者の発見と可能性の高い患者の管理ができる最新の知識をもつ医学専門家の確保を、加盟国に対して進言しています。また、加盟国には感染リスクの高い集団に対して高率にワクチン接種率を維持することを求めています。

アメリカ大陸での発生状況

 アメリカの地域では、過去10年間に、黄熱の患者が、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、コロンビア、エクアドル、パラグアイ、ペルー、ベネズエラから報告されました。2015年には、アメリカ大陸ではボリビア、ブラジル、ペルーの3か国から黄熱ウイルスの伝播が報告されました。

 2015年12月、ボリビアでは、Chuquisaca (チュキサカ)県Monteagudo (モンテアグド)の行政地区で動物間での感染流行(ヒト以外の霊長類の死亡)があったことが報告されました。国立熱帯病センター(CENETROP)の分析では、黄熱を肯定する結果が示されています。人での患者は発見されていません。

 2014年7月、ブラジルでは、黄熱ウイルスの存在が確認されたヒト以外の霊長類における動物間での感染流行により、この国に黄熱ウイルスが再出現したことが宣言されました。2014年7月から2015年6月までに、4人の死亡者を含む7人の黄熱患者が確認されました。発生地域別の患者の分布は、ゴイアス州(5人)、マット・グロッソ・ド・スーウ州(1人)、パラー州(1人)でした。年齢層は7歳から59歳までで、患者はすべて男性でした。彼らはいずれもワクチンを接種しておらず、4人は旅行中に、2人は農村地域での活動中に、1人は農村地域に居住していてウイルスに感染しました。また、リオ・グランデ・ド・ノルテ州の保健局長は、2015年7月にNatal(ナタール)で死亡した患者が最初の検査で黄熱に対して肯定的であったという調査結果を報告しました。患者は、流行地域への旅行歴がなく、その行政地区では他にも患者は登録されていませんでした。この行政地区で黄熱が最後に感染伝播した記録は1930年になります。

 ブラジルでの黄熱による動物間の感染流行も、トカンティンス州(2014年に1地区と2015年に4地区)、ゴイアス州(2015年に3地区)、ミナス・ジェライス州(2015年に1地区)、パラ-州(2015年に1地区),連邦直轄地区(2015年に1地区)で確認されました。

 ペルーでは、2015年疫学週(EW)49週までに、死亡者3人を含む黄熱疑い患者56人の報告がありました。報告された患者のうち、11人は確定患者に、12人は可能の高い患者に分類され、残る患者は診断除外されました。2015年の確定患者と可能性の高い患者の合計数(23人)は、2014に観察された患者数(15人)よりも多くなっています。確定患者および可能性の高い患者の発生した地域は、ロレート県(8人)、フニン県(5人)、サン・マルティン県(5人)、パスコ県(2人)、クスコ県(1人)、ワヌコ県(1人)、マードレ・デ・ディオス県(1人)でした。

感染に対する注意

 アメリカ大陸のある地域では動物間での感染流行と人での患者が発生し、高密度で広範囲にネッタイシマカが分布することと森林型黄熱ウイルス流行地域に移動し戻ってきた人の条件が組み合わさることにより、都市型黄熱が発生するリスクのあることが示されています。

 さらに、2016年もエルニーニョ南方振動(ENSO)による気候変動が続くと予想されることにも注意が必要です。これらの変化は、黄熱病を含む様々な動物媒介性からの疾患の発生率、地理的分布および季節性の感染伝播に影響を与える可能性があります。

 これらの点とエルニーニョ現象の状況を踏まえ、PAHO/ WHOは、患者の発見と確定、感染を鑑別でき、患者を治療できる最新の知識をもつ医学専門家を確保し、感染リスクの高い集団には十分なワクチン接種率を維持することを勧めています。

感染予防と感染制御対策

予防接種
 ワクチン接種は、黄熱予防のための唯一つの重要な対策です。予防接種は(国によっては)子どもの定期予防接種の中で、また、リスク地域での予防接種率を高めるための1度に大勢に行われるキャンペーンで、そして、黄熱リスク国に行く旅行者に対して行われています。

 黄熱ワクチンは、安全かつ安価で、10日以内に80〜100%の人々に、30日以内に99%の免疫力で、黄熱病に対して有効となる免疫力を獲得します。黄熱ワクチンは単回投与で黄熱に対する終生免疫を持続し、黄熱ワクチンの増強接種は必要とされていません。接種後の重篤な有害事象はほとんど報告されていません。

 もし、ワクチン接種の利用が限られているならば、国家当局はワクチンの接種対象者を定めるために、リスク地域での黄熱に対するワクチン接種率の評価を実施することが勧められます。また、国におけるワクチンの備蓄は潜在する感染の集団発生への対策のために維持されるべきです。

 ワクチン接種を控えるべき人には以下の人があります。
・全身の健康状態が弱っている急性熱性疾患を伴う人
・鶏卵および/またはその誘導体に対し過敏症の既往歴のある人
・疫学上の緊急時および保健当局から特別に推奨された場合を除いた妊娠女性
・関連疾患(癌、白血病、エイズなど)のある人や薬物によって免疫が抑制された人
・生後6ヶ月未満の幼児(ワクチン研究施設に接種を相談してください)
・すべての年齢で胸腺に関係する疾患のある人

感染症情報 : 黄熱

出典

PAHO. Epidemiological Update. Yellow Fever. 31 December 2015
http://www.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&Itemid=270&gid=32648&lang=en