2016年11月02日更新 アメリカ大陸のコレラ発生状況 (更新3)

2016年10月18日付で汎米保健機関(PAHO)より、アメリカ大陸でのコレラ発生状況に関する情報が発表されました。

アメリカ大陸でのコレラ発生状況

2016年第1週から第38週までに、アメリカ大陸4か国で29,630人のコレラ患者が記録されました。内訳は、ドミニカ共和国1,069人、エクアドル1人、ハイチ28,559人、メキシコ1人です。アメリカ大陸では、2016年の総患者数の96.4%がハイチから報告されました。

ドミニカ共和国では、2016年第38週までに、死亡者18人(致死率1.7%)を含むコレラ疑い患者1,069人が報告されました。これは、2016年の死亡者数は、2014年と2015年に記録された致死率(それぞれ1.8%と2.7%)を下回っていますが、報告患者数は2014年(死亡者11人を含む患者603人)および2015年(死亡者15人を含む患者546人)に報告された患者数のほぼ2倍となっています。

ハイチでは、2016年第1週から第37週までに、死亡者267人を含むコレラ疑い患者28,559人が報告されました。2016年第37週までの患者数と死亡者数は2014年に報告された患者数を上回り、全国の患者死亡率(致死率)は2015年とほぼ同じですが、2014年(1.1%)よりも高くなりました。

ハイチでは、2016年10月にハリケーン・マシューがGrand'Anse(中央県)、Ouest(西県)、Nord-Ouest(北東県)、Sud(南県)に深刻な影響を与えました。コレラ患者の増加は、これが原因となっています。2016年10月9日までにハイチの保健・人口省(The Haiti Ministry of Public Health and Population[MSPP])から報告されたハリケーン被害の現状は、南県でコレラ患者が死亡者17人を含む117人、中央県で患者が死亡者3人を含む166人でした。

メキシコのNayarit(ナヤリット州)で、2016年9月23日に、コレラの確定患者が報告されました。患者は検査によってコレラ菌(Vibrio cholerae)O1、小川型と確認されました。患者が住んでいた周辺区画の家に積極的に患者調査を行ったことで、疑い患者59人が発見されました。検体が採取され、分析されましたが、全員がコレラ菌に対し陰性の結果でした。地方行政および州行政は、上水道での残留塩素の測定、食品サンプルの採取、モーアスワブを使った調査活動の実施、健康促進対策の確立など、健康リスク対策の各担当領域を協調しながら、感染の予防と管理への活動を始めました。

コレラは、コレラ菌によって、下痢や嘔吐が生じる病気です。症状が軽いこともありますが、重い下痢症状が起こると、大量の水分が失われ、脱水から死亡することがあります。

これらの流行地へ渡航、滞在される方は、今後の情報に注意していただくとともに、以下の対策を行ってください。

  • 飲料水や歯みがき、うがいの水にはミネラルウォーターを使うか、十分に沸騰させた水を使うこと。氷は生水から作られている可能性があるので食べないこと。
  • 食事は加熱されたものを、冷めないうちに食べること。
  • 食事の前、トイレの後には石けんと水で十分に手洗いすること。
  • 下痢になった場合、以下の作り方で作った水を十分にとり、できるだけ早く医療機関で診療を受けること。

図.吸水のよい水の作り方は、水1リットル+ティースプーンで砂糖6杯+塩1/2杯(涙のような塩かげん)です。下痢止めはむやみに服用しないでください。服用することで症状が悪化することがあります。「水1リットル+砂糖ティースプーン6杯+塩ティースプーン1/2杯」です。

感染症情報

出典

PAHO. Epidemiological Update. Cholera. 18 October 2016
Cholera in the Americas - Situation summary
http://www.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&gid=36598+&Itemid=999999&lang=en[PDF形式:210KB]