パンデミック・インフルエンザ(H1N1)-更新
WHO(GAR) 2009年12月30日
今週の更新情報
2009年12月27日現在、世界中の208以上の国や地域から少なくても12,220人を超える死亡例を含む、パンデミック・インフルエンザH1N1の検査確定症例が報告されています。
WHOは、WHO地域事務局や加盟国との頻繁な協議や、複数のデータのモニタリングを通して、流行の経過を積極的に監視しています。
最新の状況
現在、パンデミック・インフルエンザの感染が最も活発に起きているのは、中部および東ヨーロッパです。少なくても東ヨーロッパの3ヶ国、グルジア、モンテネグロ、ウクライナでは、最近の数週間で、ILI(インフルエンザ様疾患)とARI(急性呼吸器感染症)の目立った増加が報告されました。 パンデミック・インフルエンザの流行と並行して、呼吸器疾患の強さが高い状態が続いているのは、南部および東部ヨーロッパで、特に、ギリシャ、ポーランド、ブルガリア、セルビア、ウクライナ、ロシアのウラル地方で高くなっています。西ヨーロッパでは、インフルエンザの感染は活発な状態が続いていますが、 全体的な活動性は、そのピークが過ぎました。21ヶ国(20を超える定点検体を調べている国)のうち、少なくても13ヶ国で、定点検体の30%以上がインフルエンザ陽性であったと報告されていますが、70%を超えたピーク時よりも減少しています。西部ヨーロッパで検出されたインフルエンザウイルスは、すべてパンデミック H1N1 2009でしたが、ロシアでは、非常に少数で、検出されたすべてのインフルエンザウイルスのうち1%未満ですが、季節性のインフルエンザウイルスが検出されたと報告されました。さらに、限られたデータによれば、活発で強い感染が、地中海沿岸のアフリカ北部の国々(アルジェリア、チュニジア、エジプト)で起こっていることが示されています。
中央アジアでは、限られたデータによれば、インフルエンザウイルスの流行は依然として活発な状態が続いていますが、数ヶ所では、最近、感染のピークに達したかもしれません。西アジアでは、イスラエル、イラン、イラク、オマーン、アフガニスタンでも、過去1ヶ月以内に感染のピークが過ぎたように見えますが、中央アジアと西アジアともに、感染が多少活発な状態が続いており、呼吸器疾患の活動性のレベルは、まだベースラインのレベルには戻っていません。
東アジアでは、インフルエンザの感染は、依然として活発な状態が続いていますが、全体としては減少しているように見えます。インフルエンザとILIの活動性は、日本、中国の北部および南部、台湾、香港で減少し続けています。モンゴルでは、1ヶ月以上前に大きな活動性のピークを迎え、その後、 活動性の低下が数週間続いた後に、ILIがわずかに増加したと報告されました。南アジアでは、インフルエンザの活動性は強い状態が続いており、特に、インド北部、ネパール、スリランカでは強くなっています。季節性のインフルエンザA(H3N2)ウイルスは、中国で、非常に少数であり、検出されたインフルエンザA型ウイルスの約2.5%ですが、依然として検出されています。
北米では、インフルエンザの感染は、依然として広範囲にわたっていますが、すべての国で、大幅に減少しました。アメリカでは、外来患者におけるILIの活動性は季節性のベースラインに戻り、重症度の指標である入院患者数や、小児の死亡率、P&I死亡率(肺炎とインフルエンザによる死亡率) は、10月下旬のピーク以来、大幅に減少しました。5歳から17歳、そして18歳から49歳の年齢層の入院率は、最近のインフルエンザの流行期に見られた割合をはるかに超過していましたが、65歳を超える年齢層での入院率は、最近のインフルエンザの流行期に見られた割合よりもはるかに低くなっていました。
中南米とカリブ海の熱帯地域では、インフルエンザの感染は、依然として地理的に広範囲にわたっています。疾患の活動性が増加している数ヶ国を除き、ほとんどの地域では、全体的な疾患の活動性は減少しているか、変わらないままです。
南半球の温帯地域では、パンデミック・インフルエンザの散発例が報告され続けていますが、地域での持続した感染はていません。
グローバルインフルエンザサーベイランスネットワーク(GISN)は、パンデミック・インフルエンザウイルスや季節性のインフルエンザウイルス、その他のインフルエンザウイルスを含む、人に感染する、あるいは人に感染する可能性のあるインフルエンザウイルスの世界的な広がりを監視し続けています。
- (*):温帯地域とは、北回帰線の北にある、または南回帰線の南にある地域、そして、熱帯地域とは北回帰線と南回帰線の間にある地域と定義します。
- (**):略記として、 インフルエンザ様疾患(ILI)、急性呼吸器感染症(ARI)、重症急性呼吸器感染症(SARI) と記載しています。
この報告週(2009年12月13日から12月19日)では、合計27ヶ国がFluNetに報告をしました。インフルエンザウイルスが陽性であったと報告された検体数は7,380検体でした。このうち、6,422検体(87%)はパンデミックH1N1、16検体(0.2%)は季節性 A(H1)、117検体(1.6%)はA(H3)、571検体(7.7%)はA(型別未分類)、254検体(3.4%)はインフルエンザBでした。
上記の数は、FluNetに報告された検体と結果の数です。いくつかの研究所(NIC)では、パンデミックの影響で、季節性亜型の試験を行っていません。したがって、このデータは注意して解釈しなければなりません。
WHOのヨーロッパ地域のウイルス学的な詳しい情報はEuroFlu Weekly Electronic Bulletinを参照して下さい。
2009 年4月19日のH1N1パンデミックの始まりから12月26日まで、累計153の国や地域が、合計21,524検体(16,545の臨床検体と4,979 のウイルス分離株)をWHOの協力センターと共有しました。これらのうち、15,620検体(臨床検体および分離株)が検査され、12,638検体 (80.9%)がインフルエンザウイルス陽性でした。これらの陽性のうち、8,419検体(66.6%)はパンデミックH1N1、3356検体 (26.6%)は季節性A型インフルエンザ、848検体(6.5%)はB型インフルエンザでした。
WHOのインフルエンザ調査協力センターを含めた、GISNが実施している組織的なサーベイランスでは、 抗インフルエンザ薬オセルタミビルに耐性を示すパンデミックウイルスH1N1の散発的な事例を監視し続けています。
これまでに、WHOの協力センターとGISNの検査施設で、少なくても86ヶ国のパンデミックA(H1N1)の検体および分離株について、抗ウイルス剤の感染性試験が実施されており、これまでに168例のオセルタミビル耐性ウイルスがGISNによって報告されています。
これらの耐性ウイルスは、すべて、同じH275Y部位の突然変異であり、ザナミビルに対する感受性はあります。世界中でパンデミック・インフルエンザウイルスの15,000検体(検体と分離株)以上が検査され、オセルタミビルに感受性があると分かっています。
現在までに分析されたパンデミック・インフルエンザH1N1 2009ウイルスは、すべて、抗原的にも遺伝子学的にも、ワクチン株であるA/California/7/2009 ウイルスに類似していました。
質的な指標(第29週~第51週:2009年7月13日~12月20日)
質的な指標としてモニターされている事象:インフルエンザの地理的な広がり、呼吸器疾患の傾向、急性呼吸器疾患の強さ(急性呼吸器疾患患者が人口に占める割合)、パンデミックが医療サービスに及ぼす影響
パンデミックの全世界的なモニタリングとサーベイランスの目的と方法については、この暫定ガイダンスを参照してください。
以下のリンク先に示されている地図は、質的な指標を示します。各週、約60ヶ国の情報を示しています。モニタリングは継続中であり、報告は時間が経過するとともに完全なものになると思われます。
質的指標を示した地図
2009年12月20日現在、IHR(国際保健規則)によってWHOに公式報告された、パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の検査確定診断症例数
前回の更新情報(12月23日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の確定例が報告された国や地域はありません。
前回の更新情報(12月23日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の死亡例が報告された国や地域:ネパール、アルメニア
地域 | 死亡者数* |
アフリカ地域事務局(AFRO) | 130 |
アメリカ地域事務局(AMRO) | 6670超 |
東地中海地域事務局(EMRO) | 693 |
ヨーロッパ地域事務局(EURO) | 2422超 |
東南アジア地域事務局(SEARO) | 1056 |
西太平洋地域事務局(WPRO) | 1249 |
総数 | 12220超 |
死亡者の報告数は、多くの死亡者で検査を実施しないか、インフルエンザに関連していると認識されないので、実際の死亡者数を下回ります。