パンデミック・インフルエンザ(H1N1)-更新

WHO(GAR)  2010年1月22日

今週の更新情報

2010年1月17日現在、世界中の209以上の国や地域から少なくても14,142人を超える死亡例を含む、パンデミック・インフルエンザH1N1の検査確定症例が報告されています。

WHOは、WHO地域事務局や加盟国との頻繁な協議や、複数のデータのモニタリングを通して、流行の経過を積極的に監視しています。

最新の状況

全体的な状況としては、先週から大きな変化はありません。パンデミック・インフルエンザウイルスの感染が最も強く起こり続けているのは、北アフリカ、南アジア、そして、東部ヨーロッパの限られた地域です。北半球の温帯地域における、全体的なインフルエンザの活動性は、2009年10月下旬から11月下旬にかけてピークに達し、それ以降は低下し続けています。

北アフリカでは、限られたデータですが、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染は、依然として、地理的に広範囲にわたっており、地域全体で活発ですが、大部分の場所では最近ピークを迎えたようだと示唆されます。2010年1月上旬に呼吸器疾患の活動性が増加傾向であると報告したのはリビアのみです。エジプトは、現在、2009年12月中に呼吸器疾患の活動性が増加した後は、減少傾向であると報告しており、2010年1月上旬が活動性のピークであったと示唆されます。西アジアでは、限られたデータですが、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染は、依然として、地理的に広範囲にわたっていますが、全体的な活動性は、大部分の場所で、12月から1月の間に減少していることが示唆されます。

南アジアでは、亜大陸の北部と西部で、パンデミック・インフルエンザウイルスの活発な感染が続いていますが、全体的な活動性は最近ピークを迎えました。インドでは、インフルエンザの活動性は、主に北部と西部の州に限定されています。北部の州では2009年12月中旬にピークに達し、西部の州では2010年1 月上旬にピークに達しました。ネパールでは、ウイルスの活発な感染が続いており、呼吸器疾患の活動性の傾向は、2009年10月下旬以降、活動性の連続増加を報告した後、前週から変わらないままです。

ヨーロッパでは、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染は、依然として、西部、中央部、南東部の地域全体で、地理的に広範囲にわたっていますが、大部分の国では、全体的なインフルエンザの活動性は、低下し続けているか、低いままです。現在、感染が最も強く起こっている地域には、ポーランド、オーストリア、エストニア、ルーマニア、ハンガリー、モルドバがありますが、ルーマニア以外のすべての国では、ILIの活動性は11月にピークに達し、それ以降、かなり低下しました。ヨーロッパでインフルエンザ陽性検体が占める割合は、全体として、2009年11月上旬に45%とピークに達した後、20%に低下しました。パンデミックH1N1 2009ウイルスは、依然として、ヨーロッパ地域で流行している優勢なインフルエンザであり、季節性のインフルエンザウイルスは散発的に検出されるのみです。

東アジアでは、パンデミック・インフルエンザの活動性は、依然として広範囲にわたっていますが、大部分の場所で低下し続けています。モンゴルは、2010年1月上旬に呼吸器疾患が非常に強い状態だと報告しました。ILIの割合は 2009年10月下旬以降、予想される季節性のレベルを上回って上昇しましたが、2009年11月に観察された、かなり大きな活動性のピークよりも相当に低くなっています。日本では、全体的なインフルエンザの活動性は、2009年11月末にピークを迎えて以降、減少し続けていますが、12月下旬に沖縄で、地域的な活動性の増加がみられました。中国、香港、台湾では、パンデミック・インフルエンザの活動性は、依然として、広範囲にわたっていますが、低下し続けているか、変わらないままです。パンデミックH1N1ウイルスは、依然として、この地域で流行している優勢なインフルエンザですが、非常に少数ではあるものの、中国北部で、季節性のH3N2ウイルスの感染が続いています。

アメリカ大陸では、熱帯地域も、北部の温帯地域も、大部分の地域で、全体的なパンデミック・インフルエンザの活動性は、減少し続けているか、低いままです。

南半球の温帯地域では、パンデミック・インフルエンザの散発例が報告され続けていますが、地域での持続した感染はみられていません。

グローバルインフルエンザサーベイランスネットワーク(GISN)は、パンデミック・インフルエンザウイルスや季節性のインフルエンザウイルス、その他のインフルエンザウイルスを含む、人に感染する、あるいは人に感染する可能性のあるインフルエンザウイルスの世界的な広がりを監視し続けています。ウイルス学的なサーベイランスと抗ウイルス薬に対する耐性についてのより詳しい情報は、下記のウイルスのサーベイランスデータの更新情報を参照してください。

  1. (*):温帯地域とは、北回帰線の北にある、または南回帰線の南にある地域、そして、熱帯地域とは北回帰線と南回帰線の間にある地域と定義します。
  2. (**):略記として、 インフルエンザ様疾患(ILI)、急性呼吸器感染症(ARI)、重症急性呼吸器感染症(SARI) と記載しています。

質的な指標(第29週~第1週:2009年7月13日~2010年1月10日)

質的な指標としてモニターされている事象:インフルエンザの地理的な広がり、呼吸器疾患の傾向、急性呼吸器疾患の強さ(急性呼吸器疾患患者が人口に占める割合)、パンデミックが医療サービスに及ぼす影響

パンデミックの全世界的なモニタリングとサーベイランスの目的と方法については、この暫定ガイダンスを参照してください。

以下のリンク先に示されている地図は、質的な指標を示します。各週、約60ヶ国の情報を示しています。モニタリングは継続中であり、報告は時間が経過するとともに完全なものになると思われます。

2010年1月10日現在、IHR(国際保健規則)によってWHOに公式報告された、パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の検査確定診断症例数

前回の更新情報(1月15日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の確定例が報告された国や地域:マリ

前回の更新情報(1月15日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の死亡例が報告された国や地域はありません。

地域 死亡者数*
アフリカ地域事務局(AFRO) 131
アメリカ地域事務局(AMRO) 7094超
東地中海地域事務局(EMRO) 941
ヨーロッパ地域事務局(EURO) 3099超
東南アジア地域事務局(SEARO) 1366
西太平洋地域事務局(WPRO) 1511
総数 14142超

※表を左右に動かしてご覧ください。

死亡者の報告数は、多くの死亡者で検査を実施しないか、インフルエンザに関連していると認識されないので、実際の死亡者数を下回ります。

詳しくは、こちらをご覧ください