パンデミック・ インフルエンザ(H1N1)-更新

WHO(GAR)  2010年2月26日

今週の更新情報

2010年2月21日現在、世界中の213以上の国や地域から少なくても16,226人を超える死亡例を含む、パンデミック・インフルエンザH1N1 2009の検査確定症例が報告されています。

WHOは、WHO地域事務局や加盟国との頻繁な協議や、複数のデータのモニタリングを通して、流行の経過を積極的に監視しています。

最新の状況

北半球の温帯地域では、パンデミック・インフルエンザウイルスは多くの国の全域で検出され続けていますが、ほとんどの場所では、全体としてのインフルエンザの活動性は弱まり続けています。現在、感染が最も活発な地域は、南・東南アジアの一部と、東部・南東部ヨーロッパの限られた地域です。

東南アジアでは、パンデミック・インフルエンザウイルスの流行が続きましたが、全体としての呼吸器疾患の活動性は、数ヶ国を除き、低いままで変化はありませんでした。ブルネイでは、2月に、インフルエンザの活動性が地理的に広範囲にわたっていると報告され、これに関連して、呼吸器疾患が増加傾向にあり、強くなっていました。ミャンマーとタイは、2月前半に、インフルエンザの地理的な広がりに関連して、呼吸器疾患が増加傾向にあると報告しましたが、両国ともに、現在の全体的な強さは弱いままです。タイは、直近の報告週で、約3分の1の県では、医療機関受診者の5%超がILIによる受診であったと報告しました。東アジアでは、ウイルスのサーベイランスデータによれば、パンデミック・インフルエンザウイルスと季節性のB型インフルエンザウイルスの同時流行が続いていると示唆されます。モンゴルにおいて、最近、ILI の活動性が増加したのは、季節性のB型インフルエンザウイルスの流行が増加したことによるのかもしれません。日本と韓国では、全体的なインフルエンザの活動性は減少し続けており、ベースラインの水準に戻っています。香港と台湾では、パンデミック・インフルエンザウイルスは低い水準での流行が続いており、全体的なILIの活動性は、活動性のピークがみられた秋に比べ、かなり低い状態です。南アジアでは、全体的なインフルエンザの活動性は低いままですが、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染は、インド西部で続いています。

ヨーロッパでは、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染は、中部と南東部ヨーロッパ全域で続いていますが、全体的な活動性は低いままでした。ギリシア、ブルガリア、トルコ、スロバキア、モルドバ、ロシアの一部は例外で、呼吸器疾患の活動性が中等度との報告が続きました。グルジア、スロバキア、ロシアの一部では、呼吸器疾患が増加傾向であるとの報告が続きましたが、この活動性の増加は、呼吸器感染症を起こす他のウイルスの流行によるものかもしれません。20検体以上の定点呼吸器検体を検査している国で、最近の報告週にインフルエンザの陽性検体が20%を超えたと報告した国はありませんでした。

北アフリカと西アジアでは、ほとんどの国では、呼吸器疾患の割合は減少し続けたか、ベースラインに戻っており、パンデミック・インフルエンザウイルスの流行は低い水準で続いています。アフガニスタンでは、医療機関に対する影響が中等度の、呼吸器疾患の増加傾向が報告されましたが、この最近の増加がインフルエンザウイルスの流行に関連しているかどうかは不明です。

サハラ以南のアフリカでは、限られたデータですが、ほとんどの地域では、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染は散発的な状態が続いたと示唆されます。西アフリカでは、数ヶ国で、パンデミック・インフルエンザの確定患者数のわずかな増加が報告され続けており、この地域で感染が始まっているようだということを示していますが、データは非常に限定されたものです。

アメリカ大陸では、熱帯地域も、北部の温帯地域も、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染は低い水準で続いていますが、大部分の地域では、全体的なパンデミック・インフルエンザの活動性は、減少か、低いままの状態が続きました。中米とカリブ海沿岸諸国では、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染は持続していますが、大部分の地域では、全体的な活動性は低いか、変化がないままです。

パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009ウイルスは、世界中で流行している優勢なウイルスとしてとどまっています。最近、中国で、季節性のB型インフルエンザウイルスの検出割合が増加したことに加え、アフリカとアジアの一部で、季節性のH3N2とB型のウイルスが低い水準で流行しています。

要約しますと、パンデミック・インフルエンザウイルスは熱帯地域で広く流行が続いており、ヨーロッパの一部の地域で流行が続いています。世界の多くの地域で呼吸器疾患の活動性が増加しているのは、B型インフルエンザウイルスとRSウイルスの感染が増加していることによります。季節性のH3N2インフルエンザはアジアと東アフリカ地域で検出され続けています。

グローバルインフルエンザサーベイランスネットワーク(GISN)は、パンデミック・インフルエンザウイルスや季節性のインフルエンザウイルス、その他のインフルエンザウイルスを含む、人に感染する、あるいは人に感染する可能性のあるインフルエンザウイルスの世界的な広がりを監視し続けています。ウイルス学的なサーベイランスと抗ウイルス薬に対する耐性についてのより詳しい情報は、下記のウイルスのサーベイランスデータの更新情報を参照してください。

  1. (*):温帯地域とは、北回帰線の北にある、または南回帰線の南にある地域、そして、熱帯地域とは北回帰線と南回帰線の間にある地域と定義します。
  2. (**):略記として、 インフルエンザ様疾患(ILI)、急性呼吸器感染症(ARI)、重症急性呼吸器感染症(SARI) と記載しています。

質的な指標(第29週~第6週:2009年7月13日~2010年2月13日)

質的な指標としてモニターされている事象:インフルエンザの地理的な広がり、呼吸器疾患の傾向、急性呼吸器疾患の強さ(急性呼吸器疾患患者が人口に占める割合)、パンデミックが医療サービスに及ぼす影響

パンデミックの全世界的なモニタリングとサーベイランスの目的と方法については、この暫定ガイダンスを参照してください。

以下のリンク先に示されている地図は、質的な指標を示します。各週、約60ヶ国の情報を示しています。モニタリングは継続中であり、報告は時間が経過するとともに完全なものになると思われます。

2010年2月21日現在、IHR(国際保健規則)によってWHOに公式報告された、パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の検査確定診断症例数

前回の更新情報(2月19日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の確定例が報告された国や地域:ニジェール

前回の更新情報(2月19日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の死亡例が報告された国や地域はありません

地域 死亡者数
アフリカ地域事務局(AFRO) 167
アメリカ地域事務局(AMRO) 7484超
東地中海地域事務局(EMRO) 1018
ヨーロッパ地域事務局(EURO) 4266超
東南アジア地域事務局(SEARO) 1601
西太平洋地域事務局(WPRO) 1690
総数 16226超

死亡者の報告数は、多くの死亡者で検査を実施しないか、インフルエンザに関連していると認識されないので、実際の死亡者数を下回ります。

詳しくは、こちらをご覧ください