パンデミック・ インフルエンザ(H1N1)-更新

WHO(GAR)  2010年3月19日

今週の更新情報

2010年3月14日現在、世界中の213以上の国や地域から少なくても16,813人を超える死亡例を含む、パンデミック・インフルエンザH1N1 2009の検査確定症例が報告されています。

WHOは、WHO地域事務局や加盟国との頻繁な協議や、複数のデータのモニタリングを通して、流行の経過を積極的に監視しています。

最新の状況

パンデミック・インフルエンザの感染が最も活発にみられているのは、東南アジアと西アフリカです。限られたデータですが、中米とカリブ海諸国で、パンデミック・インフルエンザの活動性が増加しているかもしれないと示唆されます。南部・南東部ヨーロッパと、東・西・南アジアでは、パンデミック・インフルエンザウイルスの流行は低い水準で続いています。パンデミック・インフルエンザウイルスは世界中で流行している優勢なインフルエンザウイルスですが、季節性のB型インフルエンザウイルスは東アジアで優勢であり、東南アジアと東アフリカでは低い水準で検出されました。

南アジアと東南アジアで、パンデミック・インフルエンザの感染が最も活発な地域は、依然としてタイです。タイでは、この1ヶ月を超える間で、定点でのILI患者の呼吸器検体のうち、約25~30%がインフルエンザ陽性で、定点での肺炎による入院患者の呼吸器検体の10~35%がインフルエンザ陽性でした(パンデミックH1N1が優勢でしたが、少数ながら、季節性のB型ウイルスも検出されました)。タイにおける最近のパンデミック・インフルエンザの活動性は、重篤で致命的な疾患の合併はありますが、2009年6月から9月の早期にみられた感染のピークを上回るものではないようです。ミャンマーでは、2010年2月にパンデミックH1N1患者数が増加し、インフルエンザの活動性が増加しましたが、その後、呼吸器疾患の活動性は減少しているかもしれません。バングラデシュでは、過去2週間に、確定患者数の増加と、パンデミック・インフルエンザウイルスの地理的な拡大がみられ、呼吸器疾患の活動性が増加傾向にあると報告されました。インドでは、西部でパンデミック・インフルエンザウイルスの流行が低い水準で続いています。

東アジアでは、日本、韓国、香港、台湾で、パンデミック・インフルエンザの活動性はかなり減少し続けており、ベースラインに戻ったか、低い状態が続いています。中国では、パンデミック・インフルエンザの活動性はかなり下火になりましたが、B型インフルエンザウイルスの流行が続いています。モンゴルでは、最近、ILIの活動性が急に増加しましたが、ほとんどが季節性のB型インフルエンザウイルスの増加によるものでした。さらに、東・東南アジアの他の地域(日本、韓国、台湾、フィリピン、タイ、ベトナム、インドネシア、バングラデシュ)で、季節性のB型インフルエンザウイルスの流行が低い水準ではありますが、高まっています。季節性のH3N2ウイルスも、少数ですが、東・東南アジアの数ヶ国で検出されています。

西アフリカでは、限られたデータですが、パンデミック・インフルエンザの感染が、依然として、大部分の地域で活発に続いていると示唆されますが、明らかな活動性のピークはみられていません。ガーナでは、先週、採取された呼吸器検体のうち38%がインフルエンザ陽性でした。そのインフルエンザ陽性検体のうち、約70%がパンデミックH1N1でした。ナイジェリアからの限られた定点サーベイランスデータでは、過去2ヶ月以上にわたって、パンデミック・インフルエンザH1N1ウイルスの検出数の増加とともに、ILIの水準が増加したことが示唆されます。最近、パンデミックH1N1インフルエンザの局地的な集団発生も、東アフリカ、特にルワンダで報告されました。パンデミック・インフルエンザウイルスは、依然として、西・東アフリカで流行している優勢なインフルエンザウイルスですが、季節性のH3N2とB型ウイルスも少数検出されました。

アメリカ大陸の熱帯地域、特に中米とカリブ海諸国では、限られたデータですが、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染が活発であるかもしれないと示唆されます。中米とカリブ海諸国では、パンデミック・インフルエンザの広がりは、地域的から広範囲にわたると報告され、呼吸器疾患の活動性の様式は様々な傾向でした(ジャマイカ、バハマ、ニカラグア、パナマでは活動性が増加し、コスタリカ、グアテマラでは活動性が減少しました)。ホンジュラスでは、パンデミック・インフルエンザウイルス感染の確定患者は限られていますが、依然として、学校における呼吸器疾患の集団発生が数件報告されています。ブラジルでは、過去2週間以上にわたって、呼吸器疾患が増加傾向にあり、全体としての強さは低い状態ですが、インフルエンザウイルスが地域的に広がったと報告されました。

北アフリカと西アジアでは、限られたデータですが、パンデミック・インフルエンザウイルスの流行は、全域で低い水準で続いていると示唆されます。アフガニスタンでは過去3週間、イラクでは過去2週間、呼吸器疾患の活動性が増加傾向にあり、インフルエンザが地域的に拡大していると報告されましたが、両国ともに、全体的な活動性の強さは、依然として、弱いか中等度です。パンデミックの局地的、あるいは地域的な広がりは、モロッコ、リビア、エジプト、ヨルダン、イエメン、オマーンでも報告されました。

ヨーロッパでは、パンデミックウイルスの流行は、東部・南東部ヨーロッパの一部で流行が続いていますが、全体的にはパンデミック・インフルエンザの感染は減少し続けました。定点の呼吸器検体のうち、インフルエンザ陽性となった割合は、全体として低いままでした(5.1%)。パンデミックH1N12009ウイルスは、ヨーロッパ地域で流行している優勢なインフルエンザウイルスとして留まっていますが、ロシアとスウェーデンは例外で、B型インフルエンザがパンデミック・インフルエンザとともに優勢か、B型が優勢と報告されました。

アメリカ大陸の温帯地域では、インフルエンザウイルスの流行は低い水準で続いており、全体的なパンデミック・インフルエンザの感染は、依然として低いままです。

南半球の温帯地域では、全体的なインフルエンザの活動性は低いままで、パンデミックと季節性のインフルエンザウイルスは散発的に検出されています。

グローバルインフルエンザサーベイランスネットワーク(GISN)は、パンデミック・インフルエンザウイルスや季節性のインフルエンザウイルス、その他のインフルエンザウイルスを含む、人に感染する、あるいは人に感染する可能性のあるインフルエンザウイルスの世界的な広がりを監視し続けています。ウイルス学的なサーベイランスと抗ウイルス薬に対する耐性についてのより詳しい情報は、下記のウイルスのサーベイランスデータの更新情報を参照してください。

  1. (*):温帯地域とは、北回帰線の北にある、または南回帰線の南にある地域、そして、熱帯地域とは北回帰線と南回帰線の間にある地域と定義します。
  2. (**):略記として、 インフルエンザ様疾患(ILI)、急性呼吸器感染症(ARI)、重症急性呼吸器感染症(SARI) と記載しています。

質的な指標(第29週~第9週:2009年7月13日~2010年3月6日)

質的な指標としてモニターされている事象:インフルエンザの地理的な広がり、呼吸器疾患の傾向、急性呼吸器疾患の強さ(急性呼吸器疾患患者が人口に占める割合)、パンデミックが医療サービスに及ぼす影響

全世界的調査のために更新されたWHOの暫定ガイダンス

パンデミックの全世界的なモニタリングとサーベイランスの目的と方法については、この暫定ガイダンスを参照してください。

以下のリンク先に示されている地図は、質的な指標を示します。各週、約60ヶ国の情報を示しています。モニタリングは継続中であり、報告は時間が経過するとともに完全なものになると思われます。

2010年3月14日現在、IHR(国際保健規則)によってWHOに公式報告された、パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の検査確定診断症例数

感染者が確認された国と、死亡例が確認された国を示した地図

前回の更新情報(3月12日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の確定例が報告された国や地域はありません

前回の更新情報(3月12日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の死亡例が報告された国や地域はありません

地域死亡者数
アフリカ地域事務局(AFRO)167
アメリカ地域事務局(AMRO)7622超
東地中海地域事務局(EMRO)1019
ヨーロッパ地域事務局(EURO)4596超
東南アジア地域事務局(SEARO)1691
西太平洋地域事務局(WPRO)1718
総数16813超

死亡者の報告数は、多くの死亡者で検査を実施しないか、インフルエンザに関連していると認識されないので、実際の死亡者数を下回ります。

詳しくは、こちらをご覧ください