パンデミック・ インフルエンザ(H1N1)-更新

WHO(GAR)  2010年3月26日

今週の更新情報

2010年3月21日現在、世界中の213以上の国や地域から少なくても16,931人を超える死亡例を含む、パンデミック・インフルエンザH1N1 2009の検査確定症例が報告されています。

WHOは、WHO地域事務局や加盟国との頻繁な協議や、複数のデータのモニタリングを通して、流行の経過を積極的に監視しています。

最新の状況

パンデミック・インフルエンザの感染が最も活発にみられているのは、東南アジア、西アフリカ、アメリカ大陸の熱帯地域です。タイでは、過去2ヶ月にわたってパンデミック・インフルエンザの感染が続きましたが、現在は、全体的な活動性が減少しているようです。西アフリカでは、限られたデータですが、パンデミック・インフルエンザの感染が、依然として、大部分の地域で活発に続いていると示唆されますが、明らかな活動性のピークはみられていません。中米と、南米の熱帯地域では、2010年3月上旬以降、パンデミック・インフルエンザウイルスの流行に関連して、呼吸器疾患が増加傾向にあると報告した国が増えています。パンデミック・インフルエンザウイルスは世界中で流行している優勢なインフルエンザウイルスですが、季節性のB型インフルエンザウイルスは東アジアで優勢であり、東南アジア、西アジア、東アフリカ、ヨーロッパの一部では、低い水準ですが検出数が増加しました。

東南アジアでは、タイで、2010年2月中旬以降、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染が依然として活発で、地理的に広範囲にわたっており、マレーシアでは3月上旬以降、増加しています。タイでは、呼吸器疾患の活動性は全体的にみて低いか中等度であると報告されており、2009年3月中旬以降減少しているようです。直近の報告週では、定点でのILI患者の呼吸器検体のうち、約10~22%がインフルエンザ陽性でした。マレーシアでは、限られたデータですが、過去2週間で、パンデミックH1N1患者の増加が示唆されますが、現在、疾患の広がりや重症度は不明です。タイと、東南アジアの他の地域では、低い水準ですが、季節性のB型インフルエンザが分離され続けています。

南アジアでは、依然として、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染は、亜大陸の地域によって変動がみられます。バングラデシュでは、2010年2月下旬以降、呼吸器疾患の活動性が増加傾向にあり、H1N1患者の増加が報告されましたが、全体的な活動性は低いままです。インドでは、パンデミック・インフルエンザの活動性は全体的にみて低いままですが、西部では、パンデミックH1N1患者が引き続き報告されています。

東アジアでは、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染はかなり減少しました。日本と韓国では、ILIとARIの割合はベースライン近くに戻りました。中国では、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染はかなり減少しましたが、季節性のB型インフルエンザウイルスの流行が活発に続いています(最近の週では、検出されたインフルエンザウイルスのうち約85%を占めています)。モンゴルでも同様に、2009年11月にパンデミック・インフルエンザウイルスによるILIの活動性の最初のピークの後、2010年2月下旬から3月上旬にかけて、ILIの活動性が2度目の急激なピークを迎えましたが、これはもっぱら、季節性のB型インフルエンザウイルスの流行によるものでした。香港、台湾、北朝鮮では、全体的なインフルエンザの活動性は、依然として低いままです。

サハラ以南のアフリカでは、パンデミック・インフルエンザの活動性は、一様ではありません。限られたデータですが、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染が最も活発だと示唆されるのは、依然として、西アフリカ、東アフリカの限られた地域、特にルワンダです。2010年3月上旬に採取された呼吸器検体のうち、ガーナでは37%、ルワンダでは47%で、パンデミック・インフルエンザウイルスが陽性でした。セネガルでは、パンデミック・インフルエンザウイルスの検出が増加したことに関連して、呼吸器疾患の活動性が強い状態であると報告さました。パンデミック・インフルエンザウイルスは、依然として、西・東アフリカで流行している優勢なインフルエンザウイルスですが、季節性のH3N2とB型ウイルスも少数検出されました。

アメリカ大陸の熱帯地域では、全体的にみて、インフルエンザの活動性は依然として低いままですが、中米と南米の一部では、パンデミック・インフルエンザウイルスの活発な感染が増加しているかもしれません。グアテマラ、ニカラグア、エルサルバドル、パナマでは、パンデミック・インフルエンザウイルスの検出に伴って、呼吸器疾患が増加傾向にあると報告されました。ブラジルでは、3週間連続して、パンデミック・インフルエンザウイルスが地域で広がっており、呼吸器疾患の活動性が増加したと報告されました。ブラジルの北部の3州で、確定患者の発見が増加したと報告されましたが、現在、疾患の広がりや重症度は不明です。メキシコでは、2010年2月下旬から3月上旬にかけて、ILIとARIが2週にわたり増加した(1週あたり11~14%)と報告されましたが、呼吸器疾患の活動性が、どの程度パンデミック・インフルエンザウイルスによるものなのかは明らかではありません。

ヨーロッパでは、全体的には、パンデミック・インフルエンザウイルスの感染は、ほとんどの国で、減少し続けているか、低いままです。注目すべきこととして、ドイツ、イタリア、ロシアでは、定点の検体のうち、20%を超える割合でインフルエンザウイルスが陽性となりましたが、この検出の増加に関連して、急性呼吸器疾患の全体的な割合は大きく増加しているわけではありません。イタリアでは、季節性のB型インフルエンザウイルスが優勢であり、ロシアでは、B型インフルエンザがパンデミックH1N1とともに優勢と報告されました。ルーマニアとポーランドでは、最近、ILIとARIの割合が増加していますが、パンデミック・インフルエンザウイルスや、他のインフルエンザウイルスの検出は増加していません。

北アフリカと西アジアでは、限られたデータですが、パンデミック・インフルエンザウイルスの流行は低い水準で続いており、ほとんどの地域では、疾患の活動性は全体的に低いままであると示唆されます。

北米と南米の温帯地域では、インフルエンザウイルスの感染は低い水準で続いており、全体的なパンデミック・インフルエンザの感染は、依然として低いままです。

南半球の温帯地域では、全体的なインフルエンザの活動性は低いままで、パンデミックと季節性のインフルエンザウイルスは散発的に検出されています。

グローバルインフルエンザサーベイランスネットワーク(GISN)は、パンデミック・インフルエンザウイルスや季節性のインフルエンザウイルス、その他のインフルエンザウイルスを含む、人に感染する、あるいは人に感染する可能性のあるインフルエンザウイルスの世界的な広がりを監視し続けています。ウイルス学的なサーベイランスと抗ウイルス薬に対する耐性についてのより詳しい情報は、下記のウイルスのサーベイランスデータの更新情報を参照してください。

  1. (*):温帯地域とは、北回帰線の北にある、または南回帰線の南にある地域、そして、熱帯地域とは北回帰線と南回帰線の間にある地域と定義します。
  2. (**):略記として、 インフルエンザ様疾患(ILI)、急性呼吸器感染症(ARI)、重症急性呼吸器感染症(SARI) と記載しています。

質的な指標(第29週~第10週:2009年7月13日~2010年3月13日)

質的な指標としてモニターされている事象:インフルエンザの地理的な広がり、呼吸器疾患の傾向、急性呼吸器疾患の強さ(急性呼吸器疾患患者が人口に占める割合)、パンデミックが医療サービスに及ぼす影響

全世界的調査のために更新されたWHOの暫定ガイダンス

パンデミックの全世界的なモニタリングとサーベイランスの目的と方法については、この暫定ガイダンスを参照してください。

以下のリンク先に示されている地図は、質的な指標を示します。各週、約60ヶ国の情報を示しています。モニタリングは継続中であり、報告は時間が経過するとともに完全なものになると思われます。

20102010年3月21日現在、IHR(国際保健規則)によってWHOに公式報告された、パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の検査確定診断症例数

感染者が確認された国と、死亡例が確認された国を示した地図

前回の更新情報(3月19日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の確定例が報告された国や地域はありません

前回の更新情報(3月19日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の死亡例が報告された国や地域はありません

地域死亡者数
アフリカ地域事務局(AFRO)167
アメリカ地域事務局(AMRO)7673超
東地中海地域事務局(EMRO)1019
ヨーロッパ地域事務局(EURO)4637超
東南アジア地域事務局(SEARO)1709
西太平洋地域事務局(WPRO)1726
総数16931超

死亡者の報告数は、多くの死亡者で検査を実施しないか、インフルエンザに関連していると認識されないので、実際の死亡者数を下回ります。

詳しくは、こちらをご覧ください