パンデミック・ インフルエンザ(H1N1)-更新

WHO(GAR)  2010年4月16日

今週の更新情報

2010年4月11日現在、世界中の214以上の国や地域から少なくても17,798人を超える死亡例を含む、パンデミック・インフルエンザH1N1 2009の検査確定症例が報告されています。

WHOは、WHO地域事務局や加盟国との頻繁な協議や、複数のデータのモニタリングを通して、流行の経過を積極的に監視しています。

最新の状況

パンデミック・インフルエンザの感染が最も活発にみられているのは、アメリカ、西アフリカ、東アフリカ及び東南アジアの熱帯地域です。パンデミック・インフルエンザは未だに世界中で優位に流行していますが、東アジアでは季節性のB型インフルエンザが流行しており、季節性B型インフルエンザの流行は他のアジアやヨーロッパの地域でも低いレベルで認められています。また、季節性インフルエンザH3N2の散発性報告例はアジア、東ヨーロッパ、アフリカ全域で認められており、特に最近の2-3週ではインドネシアやタンザニアからの報告が目立っています。更にいくつかの季節性インフルエンザH1N1の症例がロシア連邦や中国北部から先週報告されました。

東アジアでは、パンデミック・インフルエンザの活動性は低下しつつあり、現在の流行レベルは非常に低くなっています。最近、この地域でのインフルエンザ様疾患(ILI)は主にB型インフルエンザに起因しており、中国、モンゴル、韓国で流行が続いています。韓国からは、B型インフルエンザウイルスや、一部パンデミック・インフルエンザH1N1が検出される呼吸器疾患の増加傾向が報告されています。中国では、パンデミックH1N1ではなく、B型インフルエンザが検出される急性呼吸器感染症が報告されています。全体的には、呼吸器疾患の程度は2007-2008及び2008-2009のシーズンと変わりはないようです。中国の北部からは、少数の季節性インフルエンザH3N2や季節性インフルエンザH1N1散発例が認められています。モンゴルではインフルエンザ様疾患(ILI)数は引き続き減りつつあり、B型インフルエンザのみがILI数に関連しているようです。

南アジアや東南アジアで、インフルエンザの活動性が最も高い地域は、タイとシンガポールです。これらの地域ではパンデミック・インフルエンザH1N1が優位であると同時に、B型インフルエンザやインフルエンザH3N2も低レベルですが流行しています。全体的には流行の程度は比較的低レベルです。タイでは呼吸器疾患の活動性が先週から減っています。また、ILIの患者の気道由来の定点検体4%と肺炎で入院した患者の気道由来の定点検体の2.6%からパンデミック・インフルエンザH1N1が検出されました。一方、マレーシアは3つの州(Johor, Pahang, Melaka)で、時折呼吸器疾患の集団発生がみられると報告しています。ただ、パンデミック・インフルエンザを検査室的にきちんと証明できたのはMelaka州のみで、4例の確定例が集中治療室での治療を必要としたと報告しています。インドでは全体のパンデミック・インフルエンザの活動の程度はどの州でも低いとしていますが、西部インドでは、引き続き少数のパンデミックH1N1症例が報告されています。

ヨーロッパではパンデミック・インフルエンザの活動性はこの数週間では減少し続けており、どの国でも非常に低い状態です。全体としての定点呼吸器検体でのインフルエンザ陽性率は引き続き低値であり(5.4%)、B型の検出数がA型の検出数を上回っています。イタリアでは定点呼吸器検体の50%(7/14)がインフルエンザ陽性で、その全例が季節性B型インフルエンザでした。

アメリカの北部温帯地域では、全体的には引き続きパンデミック・インフルエンザの感染は低水準で、いくつかの地域では非常に低水準のパンデミック・インフルエンザH1N1の流行が持続しています。南半球の温帯国では、全体的な呼吸器疾患の活動性は引き続き低いままです。

アメリカの熱帯地域では、限られたデータによると、多くの国の限局した地域で活動性の感染伝播がみられますが、全体的なインフルエンザの活動性は低レベルのままです。キューバでは最新報告週の間に、パンデミックウイルスと確定診断された症例が少し増加したと報告されました。メキシコでは入手可能なデータから、メキシコシティの周辺部の限局した地域で、パンデミック・インフルエンザウイルスの活動性の感染がみられるものの、全国的には非常に低レベルであることが示唆されています。ペルーではこの2週間で肺炎の症例数が、特に5歳未満の小児で、増加しています。しかし、これらの症例の原因が何であるかを示す、入手可能なウイルス学的情報はありません。その他の年齢層で同様な肺炎の増加がみられないことから、原因がインフルエンザ以外であることが示唆されるようです。また、この2週間にほとんどのブラジル地域、特にブラジル北部でILIのレベルが増加していると報告されています。

北アフリカでは、限られたデータによると、呼吸器疾患の活動性は低いままです。サハラ以南のアフリカでは、西アフリカでは、現在、依然としてパンデミック・インフルエンザウイルスの地域内感染を認めています。ガーナが主な感染の中心(臨床検体の45%でパンデミック・インフルエンザが陽性でした。)ですが、セネガルやニジェールにおける症例は、より少数でした。セネガルでは、約1か月前にパンデミック・インフルエンザウイルス感染はピークをむかえていたようです。現在、ギニアは、パンデミックH1N1の最初の症例を報告しています。東アフリカでは、ルワンダで、パンデミックH1N1の症例が依然として検出されています。しかし、症例数は減少しています。季節性のインフルエンザH3N2とインフルエンザB型ウイルスは、ルワンダ、ケニア、そして南アフリカで少数が検出されました。とりわけ、タンザニアも最近、季節性のインフルエンザH3N2の著しい感染を報告しています。南アフリカでは、呼吸器疾患の活動性やパンデミック・インフルエンザの増加は、まだ記録されていません。

南太平洋地域では、バヌアツとナウルが呼吸器疾患の活動性が、今週は増加傾向にあるということを報告しました。しかし、この傾向は検査でパンデミックH1N1ウイルスの検出が確認されたことに基づくものではありません。

南半球の他の温帯の国々では、オーストラリアとニュージーランドは、インフルエンザの活動性は依然として低く、大部分はパンデミックH1N1で、季節性インフルエンザウイルスは孤発性です。

グローバルインフルエンザサーベイランスネットワーク(GISN)は、パンデミック・インフルエンザウイルスや季節性のインフルエンザウイルス、その他のインフルエンザウイルスを含む、人に感染する、あるいは人に感染する可能性のあるインフルエンザウイルスの世界的な広がりを監視し続けています。ウイルス学的なサーベイランスと抗ウイルス薬に対する耐性についてのより詳しい情報は、下記のウイルスのサーベイランスデータの更新情報を参照してください。

  1. (*):温帯地域とは、北回帰線の北にある、または南回帰線の南にある地域、そして、熱帯地域とは北回帰線と南回帰線の間にある地域と定義します。
  2. (**):略記として、 インフルエンザ様疾患(ILI)、急性呼吸器感染症(ARI)、重症急性呼吸器感染症(SARI) と記載しています。

質的な指標(第29週~第9週:2009年7月13日~2010年4月3日)

質的な指標としてモニターされている事象:インフルエンザの地理的な広がり、呼吸器疾患の傾向、急性呼吸器疾患の強さ(急性呼吸器疾患患者が人口に占める割合)、パンデミックが医療サービスに及ぼす影響

全世界的調査のために更新されたWHOの暫定ガイダンス

パンデミックの全世界的なモニタリングとサーベイランスの目的と方法については、この暫定ガイダンスを参照してください。

以下のリンク先に示されている地図は、質的な指標を示します。各週、約60ヶ国の情報を示しています。モニタリングは継続中であり、報告は時間が経過するとともに完全なものになると思われます。

2010年4月11日現在、IHR(国際保健規則)によってWHOに公式報告された、パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の検査確定診断症例数

感染者が確認された国と、死亡例が確認された国を示した地図

前回の更新情報(4月4日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の確定例が報告された国や地域:ギニア

前回の更新情報(4月4日付)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の死亡例が報告された国や地域:サントメ・プリンシペ

地域死亡者数
アフリカ地域事務局(AFRO)168
アメリカ地域事務局(AMRO)8274超
東地中海地域事務局(EMRO)1019
ヨーロッパ地域事務局(EURO)4776超
東南アジア地域事務局(SEARO)1757
西太平洋地域事務局(WPRO)1804
総数17798超

死亡者の報告数は、多くの死亡者で検査を実施しないか、インフルエンザに関連していると認識されないので、実際の死亡者数を下回ります。

詳しくは、こちらをご覧ください