タジキスタンでのポリオ発生の報告
WHO(GAR) 2010年4月29日
2010年4月29日現在、171例の急性弛緩性麻痺(AFP)が1月から現在までの間に認められたとタジキスタンの保健省からの報告がありました。このうち32例が野生株のⅠ型ポリオウイルスであることが確認されましたが、残りの症例に関しては未確定です。大部分で過去3週間以内に麻痺が発症しています。また、12人の死亡が確認されました。
野生株のポリオウイルスが同定された32症例のうち17例は2歳未満、14例は2~5歳、1例は6~15歳の年齢層に該当していました。66%が男性でした。現在のところ、確定例の麻痺の発症時期を見てみると15例は3月中であり、17例は4月中でした。ワクチン接種歴に関して情報が得られたのは確定例32例のうち21例でした。これらの症例のうち2例(10%)は3回未満のOPVの接種を受けており、19例(90%)は3回以上のOPV接種歴がありました。
全ての症例は首都Dushanbeを含む国の南西地域で報告されました。この地域はアフガニスタンやウズベキスタンと国境を有しています。遺伝子配列の同定によりこのポリオウイルスはインドのUttar Pradeshで報告された株に近いことがわかりました。
今回の集団発生に対してタジキスタン政府は5歳未満の子供を対象として(約110万人)3回の定期外予防接種を計画していると認めました。1価のⅠ型ポリオウイルス経口ワクチンがこの国の小児の免疫水準を速やかに上げるために使用されることになります。第一回の接種は首都Dushanbeと周辺の6地区で5月1日に予定されており、他の地区の5歳未満の小児に対しては5月4日に接種が始められる予定です。2回の追加接種が5月18~22日及び6月1~5日に計画されています。
周辺諸国ではこの集団発生に対処するため、すべての医療施設や報告施設でのサーベーランスの強化をし、小児の免疫状態の把握に努めています。ウズベキスタンでは対象となる5歳未満の小児は289万人いますが、タジキスタンでの5月、6月の接種に合わせて2回の定期外予防接種の計画を立てています。キルギスタンではポリオなどワクチンで予防可能な疾患に対する小児の免疫強化キャンペーンがヨーロッパワクチン週間の一部として政府により計画されており、4月30日に終了しました。また、キルギスタンでは一部の地域で追加のワクチン接種を行う予定です。
WHOは感染制御のために個人の国際間の移動を制限することは引き続き推奨しません。海外旅行者はポリオ汚染地域へ行く人も、汚染地域からくる人もInternational Travel and Healthの第6章(下記のリンク参照)に勧奨されているように、ポリオに対して適切なワクチン接種を受けることが重要です。