パンデミックインフルエンザ(H1N1)

WHO(GAR)  2010年4月30日

今週の更新情報

2010年4月25日現在、世界中の214以上の国や地域から少なくとも17,919人を超える死亡例を含む、パンデミック・インフルエンザH1N1 2009の検査確定症例が報告されています。

WHOは、WHO地域事務局や加盟国との頻繁な協議や、複数のデータのモニタリングを通して、流行の経過を積極的に監視しています。

最新の状況

現在の状況は前回更新時とあまり変わっていません。パンデミック・インフルエンザの感染が最も活発にみられているのは、西及び中央アフリカで、局地的に南アジアや東南アジアでの発生も認められています。パンデミック・インフルエンザの活動性は北半球・南半球の温帯地域では低レベルで続いています。一方、季節性のB型インフルエンザは流行の程度は低いものの、東アジアや北及び東ヨーロッパで流行の優位を占めています。B型インフルエンザは中央アフリカで検出されていましたが、今週は西アフリカでも認められました。季節性インフルエンザH3N2は引き続き南アジア、東南アジアで検出されており、西アフリカ、中央アフリカ、東ヨーロッパでの散発例も続いています。

データは限られた国からのものですが、アフリカのサハラ以南地域では、パンデミック・インフルエンザH1N1の伝播の活動性は西アフリカ及び西中央アフリカにおいて弱くなっています。ガーナでは中等度のパンデミックウイルス症例が報告(臨床検体全体のうち16%がパンデミック・インフルエンザ陽性でした)されていますが、セネガル、ニジェール、カメルーンでの検出例は引き続き少ないままです。東アフリカでのインフルエンザの活動性は低いレベルにもどりました。この一週ではルワンダからのみ少数のパンデミックウイルス検出が報告されました。加えて少数の季節性インフルエンザH3N2がガーナで見られました。B型インフルエンザは、特にガーナやカメルーンで検出例が増えています。

東アジアでパンデミック・インフルエンザの流行は散発的です。中国、モンゴル及び韓国でのインフルエンザ様疾患は季節性B型インフルエンザが主因となっています。中国及びモンゴルでのインフルエンザの検出は、ここ数週に比して減少傾向にあります。韓国では呼吸器疾患の活動性が高まっていますが、それに関与する背景として最近の5週間で呼吸器由来の検体からB型インフルエンザが検出される割合が増えていることが挙げられます。この地域のいくつかの国々では、パンデミック・インフルエンザH1N1、季節性H3N2、H1N1の少数の散発的発生が続いているようです。

東南アジアでは総じてインフルエンザの活動性は低レベルでした。優位に流行しているインフルエンザはまだパンデミック・インフルエンザH1N1ではありますが、季節性のB型インフルエンザも同時に存在しますし、更に低い程度でH3N2もシンガポール、カンボジア、インドネシア、タイなどの国々で認められます。マレーシアでは呼吸器疾患の活動性が増えているとの報告があり、検査室で確定診断できたパンデミック・インフルエンザH1N1に関連しています。また、メディアの報告によると、マレーシアで学校閉鎖があったそうです。シンガポールではインフルエンザ様疾患の程度は季節性流行閾値を下回る水準ですが、先週よりは増加しています。

南アジアではバングラデシュで4月当初以来、検査室で同定されるパンデミック・インフルエンザの数が増えており、それに関連して呼吸器疾患の活動性も増加しているとの報告がありました。インドからはMaharashtraや最近ではKarnatakaでパンデミック・インフルエンザの活動性が報告されています。この二国での呼吸器疾患の活動性は2009年末の流行時に比べると軽度です。この地域ではパンデミック・インフルエンザが優位に広がっているインフルエンザではありますが、季節性のB型インフルエンザもイランやバングラディッシュから引き続き見つかっています。

アメリカの熱帯地域の限られたデータによるとパンデミック・インフルエンザの活動性は低いままではありますが、いくつかの局所的な流行があるようです。ジャマイカやパナマ、グアテマラからは呼吸器疾患の活動性が増しているとの報告がありました。キューバは全ての州で(特にハバナ市で)、最近2週間急性呼吸器疾患の症例数が増えていると報告されています。ペルーではリマで5歳未満の小児肺炎症例が、最近6週間連続で増えており流行閾値を越えた状態が続いています。しかしこれらの肺炎の原因がどの程度パンデミック・インフルエンザH1N1によるのかは分かっていません。また、注目すべきこととしてRSVがこの地域で流行しているとの報告もあります。

北半球の温帯地域ではパンデミック・インフルエンザの活動性は全体的に低いままです。米国でのインフルエンザ様疾患で外来受診する患者の割合は国の基準値を下回っています。北アメリカの国からのB型インフルエンザの報告はありません。ヨーロッパでのパンデミック・インフルエンザの活動性は極めて低い状態です。定点施設からの呼吸器検体のインフルエンザ陽性率は横ばいで約4.5%でした。また、同検体のうちB型インフルエンザはA型インフルエンザより引き続き多く、これは主として東ヨーロッパ(中央・シベリア・極東ロシア及びカザフスタン)でのウイルス検出に由来するものでした。

南半球の温帯地域ではインフルエンザ様疾患の活動性は低いままで、以前の同時期と同程度です。オーストラリアからはここ数週で少数ながらもパンデミック・インフルエンザH1N1や季節性B型インフルエンザ及びH3N2ウイルスの散発的な報告がされています。

グローバルインフルエンザサーベイランスネットワーク(GISN)は、パンデミック・インフルエンザウイルスや季節性のインフルエンザウイルス、その他のインフルエンザウイルスを含む、人に感染する、あるいは人に感染する可能性のあるインフルエンザウイルスの世界的な広がりを監視し続けています。ウイルス学的なサーベイランスと抗ウイルス薬に対する耐性についてのより詳しい情報は、下記のウイルスのサーベイランスデータの更新情報を参照してください。

抗ウイルス薬耐性のパンデミックH1N12009ウイルスは積算で285のままです。2010年4月16日の更新以降、追加はありません。

2010年4月28日--この週(2010年4月15~28日)にオセルタミビル耐性のパンデミック・インフルエンザH1N1の追加報告はありません。累積症例数は285のままです。1例を除いた全ての株でH275Yの塩基置換が認められますが、ザナミビルへの感受性は保たれているようです。

  1. (*):温帯地域とは、北回帰線の北にある、または南回帰線の南にある地域、そして、熱帯地域とは北回帰線と南回帰線の間にある地域と定義します。
  2. (**):略記として、 インフルエンザ様疾患(ILI)、急性呼吸器感染症(ARI)、重症急性呼吸器感染症(SARI) と記載しています。

質的な指標(第29週~第15週:2009年7月13日~2010年4月10日)

質的な指標としてモニターされている事象:インフルエンザの地理的な広がり、急性呼吸器疾患の傾向、呼吸器疾患の強さ(急性呼吸器疾患患者が人口に占める割合)、パンデミックが医療サービスに及ぼす影響

パンデミックの全世界的なモニタリングとサーベイランスの目的と方法については、この暫定ガイダンスを参照してください。

以下のリンク先に示されている地図は、質的な指標を示します。各週、約60ヶ国の情報を示しています。モニタリングは継続中であり、報告は時間が経過するとともに完全なものになると思われます。

2010年4月25日現在、IHR(国際保健規則)加入国によってWHOに公式報告された、パンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の検査確定診断症例数

前回のWeb更新情報 (No.97)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の確定例が報告された国や地域:なし

前回のWeb更新情報(No.97)から、新たにパンデミック・インフルエンザ(H1N1)2009の死亡例が報告された国や地域:なし

地域死亡者数
アフリカ地域事務局(AFRO)168
アメリカ地域事務局(AMRO)少なくとも8309
東地中海地域事務局(EMRO)1019
ヨーロッパ地域事務局(EURO)少なくとも4783
東南アジア地域事務局(SEARO)1769
西太平洋地域事務局(WPRO)1805
総数少なくとも17853

※表を左右に動かしてご覧ください。

死亡者の報告数は、多くの死亡者で検査を実施しないか、インフルエンザに関連していると認識されないので、実際の死亡者数を下回ります。

詳しくは、こちらをご覧ください