流行警報-オロプーシェ熱のアウトブレイク
PAHO Epidemiological Alert2010年6月22日
現在の流行状況
アメリカ大陸ではオロプーシェ熱のアウトブレイクがブラジル、エクアドル、パナマ、ペルー、トリニダード・トバゴの農村地帯や都市部で見られています。アウトブレイクのほとんどで、男性女性両方ですべての年齢に渡り、感染が見られました。以前、ウイルスに暴露を受けた集団では、子どもや青年層が感染のもっとも多かった年齢層でした。
オロプーシェ熱ウイルスは自然界で2つの感染サイクルを示します。1つは野生タイプ。もう1つは都市流行タイプです。野生タイプでは霊長類やナマケモノ、そしてある種の節足動物といった野生の動物が保有宿主となっており、蚊がベクターとして作用しています。都市流行サイクルでは感染サイクルはベクターから人、人からベクターへというパターンで、人が主な宿主として機能しています。
オロプーシェ熱としてこの10年間の間に記録されているアウトブレイクは、主としてアマゾン地方で起こっていました。
今年5月、ペルーの国家当局はオロプーシェ熱による熱性疾患のアウトブレイクを、San Martin県、Pachiza地区、Bagazánで検出しました。第23週の時点で282例のオロプーシェ熱症例が報告され、このうち241例が疑い症例で、41例が確定例でした。媒介蚊Culicoides paraensisが、このアウトブレイクが起きていた地方で確認されました。
ペルーでは、オロプーシェ熱ウイルスは1992年に初めてIquitos地方で検出されました。これは、オロプーシェ熱がその地域で確認された、初めての事例でした。
このアウトブレイクに際して、当局は地方健康ネットワークに属する施設に、症例を確認するように注意をさせ、諸施設の医療サービスの組織化を図りました。
発生に影響を与える要因、症例増加に寄与する可能性がある要因
- 吸血性ベクターであるCulicoides paraensisの分布濃度が高いこと。
- この疾患に感受性のある人が非流行地域から流行地域に移動すること。
一般的な推奨事項
- 1.十分な予防法と疾患制御方法を確立するため、現在のアウトブレイクに対して調査すること。
- 2.症例発見のためにサーベーランス活動を強化すること。
- 3.疾患を確定するために検査体制を強化すること。
- 4.症例を発見し管理するために、医療従事者の数を増やすこと。
- 5.感染に関与するベクターと、可能性がある保有宿主を決定するために、昆虫学的なサーベーランスを強化すること。
- 6.アウトブレイクが起きている地域でベクターの密度を減らすために対策をとること。
- 7.蚊による刺咬を防止し都市流行型の感染サイクルを断つために、この疾患の情報をあまねく伝え、個人の蚊に対する防護の重要性を認識させること。
- 8.リスクのある集団に対して、感染予防法と感染制御法について注意を向けさせるために、疾患情報や推奨事項を広めること。
オロプーシェ熱について
オロプーシェ熱はオロプーシェ熱ウイルスによって起きる人畜共通感染症です。このウイルスはブニヤウイルス科の一種、シンブウイルス群のウイルスです。
この疾患は主として媒介蚊Culicoides paraensiによって人に感染します。
この疾患はデング熱と同じような症状を起こします。潜伏期間は4日から8日です(3日から12日間にわたることもあります)。症状は突然始まり、よくある症状として発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、悪寒、時に嘔気と嘔吐が5日から7日まで持続します。ときに髄膜脳炎が起こることが知られています。症状は5日から7日間持続します。しかし、患者によっては完全に回復するまで数週間かかることもあります。