偽造薬についての見解
アメリカ疾病管理予防センター 旅行者のための健康情報から
Michael D. Green
一般的な情報
偽造および規格外医薬品は、罹患率、死亡率、毒性、および薬物耐性に悪影響を及ぼす国際的な問題です。偽造薬は、認可製造業者が作ったものではありませんが、まるで認可された製造業者が作った製剤のように消費者には見えます。 医薬品偽造の世界的推定量が、全体としてどのくらいになるかはっきりしませんが、地理的差があり、その割合は先進国での販売の1%から発展途上国の10%以上に及びます。 アフリカ、アジア、およびラテンアメリカの特定地域では、偽造薬を購入する可能性が30%以上かもしれません。偽造薬を入手してしまう可能性は世界的みられますが、効率的な監視と薬剤品質維持の資源が十分ではない発展途上国で、最も影響が大きくなります。このような状況では、規格外医薬品と同様に、偽造薬の急増がみられます。
偽造薬は合法の製造業者によって作られず、非合法的な状況で作り出されるので、汚染物質の混入や適切な成分の不足が健康への重大な害をもたらす可能性があります。 例えば、医薬品有効成分active pharmaceutical ingredient(API)が全くないかもしれませんし、少量しかないかもしれません。あるいは、別の効果の劣る合成物によって代用されているかもしれません。加えて、不適当な非有効成分(医薬品添加物)のために、薬剤が十分に溶解しなかったり、生物学的利用能が低下したりといった影響があるかもしれません。 結果として、患者が治療に反応しないかもしれません。あるいは、未知の代用成分への副作用を示すかもしれません。
トラベルクリニックは、海外へ出発する前の旅行者に対して、偽造あるいは規格外医薬品の危険性について警告し、その回避方法について伝えるべきです。以下のリストは、このための重要な注意点になります。
どのように旅行中偽造薬を回避すべきか
偽造薬を回避する最善の方法は、海外で薬品を購入する必要性を減らすことです。高血圧や副鼻腔炎、関節炎、花粉症(枯れ草熱)等といった慢性の持病の治療薬や胃腸炎(旅行者下痢症)のための医薬品、目的地によってはマラリアなどの感染症の予防薬を、必要と見込まれる分量すべて、旅行前に本国で購入すべきです。
出発前にすべきこと
- 出発前に、出来る限りの予防接種を受けてください。予防接種による免疫は、多くの重大な疾患に対する最善の防衛手段となります。
- 事前に、あなたの本国で、全旅程で必要となる全ての薬を購入してください。海外では、かかりつけ医師の処方箋により、処方を受けることは大抵できません。また、多くの外国で、処方箋なしで購入できる薬が入手できないかもしれません。預けた手荷物はなくなるかもしれません。そのため、機内持ち込み手荷物に、できる多くの薬を詰め込んでください。旅行が延びる場合に備えて、余分を持って来てください。
- 薬がオリジナルの容器の中にあることを確認してください。薬が処方箋調剤のものならば、自分の名前と必要な服用量が容器に書かれていることを確認してください。
- あなたの「患者処方情報」シートを持ってきてください。このシートは、薬の一般名と商品名、用法、副作用、注意事項、薬物相互作用に関する情報を提供するものです。
もし、薬を使いきってしまい、追加で薬物が必要な場合にすべきことは
- 医薬品は合法的な薬局から購入してください。いくつかの地域では、薬局が正式な許可を得ているかどうかについて知ることが困難です。自由市場、街頭の物売り、あるいは胡散臭げな薬局からの購入を避ければ、偽造薬を手にする可能性は低くなります。(購入する歳には領収書を要求してください。アメリカ合衆国大使館は、あなたがその地域で合法的な薬局を見つける支援することができるかもしれません。)
- 相場より極端に安い医薬品を買わないでください。後発医薬品は一般に高価ではありませんが、多くの偽造薬はその特定のブランドの通常の価格よりかなり低い価格で売られます。
- 購入する医薬品が、その本来の包装や容器の中にあることを確認してください。多くの場合、医薬品は大量に薬局に売られ、薬剤師が別の容器に医薬品の必要量を分配します。もし、ばらの錠剤やカプセルとして、薬をビニール袋や封筒で受けとったら、薬剤師に分配を受けた元容器をチェックするように頼んでください。商品名、バッチナンバーと有効期限を記録してください。時に、消費者が慎重な態度をみせると、売り手も良質な医薬品を供給するように心がけることがあります。
- 自身の治療用薬物についてよく知っておいて下さい。偽造薬の大きさ、形、色、および味は本物と異なっているかもしれません。 錠剤やカプセルの変色やひび、きず、しみ、べとつきがあると偽造薬の可能性が示唆されます。 同じ種類の薬剤を購入するなら、例として比較できるように、本物の薬剤例をもっておいてください。
- 包装の状態をよく知っておいて下さい。 異なった色のインク、質の悪い印刷や包装材、つづりが誤って印字されるなどは、偽造物の手がかりとなります。 また、比較のために包装例をもっておいてください。薬の期限が切れていなないことを確かめるため、有効期限をよく見てください。また、梱包内容に医薬品添付文書が含まれていることを確認して下さい。
偽造薬に関して役立つウェブサイト
- 一般情報:
- アメリカ合衆国食品医薬品局(FDA)
www.fda.gov/counterfeit/ - アメリカ合衆国薬局方
www.usp.org/worldwide/dqi/drugQuality.html - 薬剤に関する警告と警報
www.safemedicines.org/CDstay_informed.html - 荷物に何をつめられるのか(障害や持病を抱える旅行向け)
米国運輸保安局
www.tsa.gov/travelers/airtravel/specialneeds/editorial_1059.shtm - 何を持ち帰れるのか
アメリカ合衆国税関・国境警備局(CBP)
www.cbp.gov/xp/cgov/travel/clearing/restricted/medication_drugs.xml - 偽造薬事例の報告
www.who.int/medicines/services/counterfeit/report/en/
参考文献
- 1.Newton PN, Green MD, Fernandez FM, et al.Counterfeit anti-infective drugs.Lancet Infect Dis. 2006;6(9):602-13.
- 2.World Health Organization.Counterfeit medicines.Fact sheet no. 275. Nov. 2006 [updated 2006 Nov 14; cited 2008 Jun 6].Available from:http://who.int/mediacentre/factsheets/fs275/en.
- 3.Newton PN, Fernandez FM, Green MD.Counterfeit and substandard antimalarial drugs. In:Schlagenhauf- Lawlor P, editor.Travelers' malaria. 2nd ed.Hamilton(Canada):BC Decker, Inc.: 2008. p. 331-42.