警報:アメリカ地域でのデング熱 更新情報

情報源:汎米保健機構(PAHO) 2010年11月18日

アメリカ大陸でのデング熱のアウトブレイク情報このアップデート情報はPAHOの加入国の保健省による、PAHO/WHO対する文書通告か、ウェブサイトへの掲載情報からえられたものです。

図.2010年アメリカ大陸におけるデング熱についての分布
表.アメリカ大陸におけるデング熱症例数、重症症例数、死亡数

中央アメリカおよびメキシコ

グアテマラ
症例数:2010年第41週の段階で、16,058例のデング熱症例が報告され、このうち3.78%が検査で確定されたものでした。
重症度:202例の重症デング熱症例が確定しており、40例が死亡しました。疾患致死率は19.8%です。
流行している血清型:DEN-1, 2,3,4
現在の傾向:グアテマラ全体では、ここ数週間症例数は減少し、流行水準は安全域に達しました。

エルサルバドル
症例数:2010年第43週の時点で、21,332例のデング熱症例が報告されています。このうち8,633例が検査によって確定されたものでした。
重症度:検査によって確定した重症デング熱症例は176例でした。致死例は2例でした。
流行している血清型:DEN-1, 2
現在の傾向:この時点では流行水準は安全域に入っています。

アンデス地方

ベネズエラ
症例数:2010年第40週の時点で、99,178例のデング熱症例が報告されており、これまでの平均(28,614/年)の3.5倍になっています。
重症度:8,916例の重症デング熱症例が確認されています。公的には致死例は報告されていません。
流行している血清型:DEN-1, 2, 3, 4。
現在の傾向:症例数は減少していますが、過去の平均に比べると依然として高い水準のままです。40週の間に報告されたデング熱総症例数は2,390例で、164例が重症デング熱でした。重症デング熱症例では14歳未満の小児がもっとも高い割合を示しました。
とられている対応:流行に関するサーベイランスが強化されています。また、リスクコミュニケーションや媒介昆虫制御について作業が行われています。

コロンビア
症例数:2010年第43週の時点で、国家サーベイランスシステム(SIVIGILA)は全部で144,264例のデング熱疑い症例の報告を受けました。この中で 68,999例が検査で確定されたものでした。
重症度:9,076例が重症デング熱で、死亡例は179例でした。疾患致死率は1.97%です。
流行している血清型:DEN-1, 2, 3, 4
現在の傾向:国のレベルでは症例減少がみられますが、例年の同時期に比べると高値です。

スペイン語圏カリブ海諸国

プエルトリコ
症例数:2010年41週の時点で、17,798例のデング熱症例を報告し、その8,637例が検査診断されたものでした。
重症度:29例が死亡しました。
流行している血清型:DEN-1, 2, 4
現在の傾向:症例減少がみられますが、例年に比べると高値です。
対策:PAHOおよびアメリカ疾病管理予防センターの援助の下、ベクター制御プログラムの改善計画が続行されています。また、医療従事者のトレーニングも行われています。

考察

PAHOはデング熱に対する地域プログラムの一環として、アメリカ地域の医師や医療従事者に、「デング熱:アメリカ地域における患者ケアガイド」を作成しています。リンクはこちら[PDF形式:1.83MB]から。
この作業は、可能な限り早くこの地域にデング熱治療における進歩を取り込み、地域にあったものにする必要性があったことから始まりました。また、デング熱による死亡数を減少させるためのものであり、適切な患者管理をするに当たって優先度の高いものを考慮するためのものでした。
現在のガイドラインは、2010年4月にボリビア、Santa Cruz de la Sierraで会合を持った、国際抗デング熱技術支援グループ(GTO-Dengue)の専門家が作成したものです。専門家はWHOのデング熱ガイドラインを、アメリカ地域でのデング熱治療の経験の集積からえられた知識を利用し、アメリカ大陸に適合するように調整しました。
このガイドは一次医療の現場で用いられるように企画されており、医療関係者が、利用できる医療資源が限られている現場で、難しい技術を使わなくてすむように作られています。このガイドでは、デング熱のそれぞれの病型病期に考慮しなければならない、必要不可欠な面について検討しており、その中には病院レベルでの重症例の管理方法も含まれています。
私たちの目標は、デング熱による死亡例を減らすため、医師がこのガイドラインに沿って診療するよう、トレーニング方法や治療に関するアドバイス提供について広く識ってもらうことです。

デング熱の予防および制御に関する勧奨事項

  • ベクターの生息地機や繁殖の可能性がある地域をなくすために、環境整備事業を再編成し事業の調整を行うこと。
  • 効果的かつ迅速に対応できるように、臨床、検査室、疫学、昆虫学それぞれの分野で、症例増加やベクター指標について、それぞれのサーベイランスを行うこと。
  • 重症デング熱症例の増加があった場合、保健システムが対応可能であるようにしておくこと。これは、新しい型のデング熱症例が生じた国や地域で重要である。
  • 保健システムのすべてにおいて、また、特に一次医療のレベルで、個人個人のトレーニングを行う。これは死亡例を防止するために最も重要である。
  • 殺菌燻蒸のための装置と備蓄物を調整しながら使用すること。
  • フィールドワークを実行するに当たって、局所的な対策や殺虫剤の使用(燻蒸)に際して、行動計画をモニターし制御すること(品質管理)が重要である。
  • ベクターの予防および制御に関して、計画と実際の行動が時間的、空間的に同時に行われることにより(熟練者による殺虫剤使用、幼虫制御、衛生管理、コミュニティーによる活動の推進など)、その効果はより大きくより短時間で出ることになる。
  • 住民の行動を変化させるために、社会的コミュニケーションについての戦略を立てる。それは、ベクターが主として繁殖する場所、非常に繁殖しやすい場所に向けられなければならない。