ハイチ、ドミニカでのコレラ流行(2010年52週)

汎米保健機構(PAHO) 2011年1月11日

ハイチ

この流行警報の情報はハイチ保健人口省(MSPP)によって提供されたものであり、MSPPは、Health Clusterに所属するパートナーから得られたデータを統合して報告を行っています。
コレラのアウトブレイク以来、流行52週の時点で、MSPPでは全部で171,304例が記録されており、この中の55.5% (95,039例) が入院を必要とし、2.4%(致死率)が死亡しました。

新たな症例数

2010年52週の間に、23,912例の新たな症例が登録され、これは前週(16,838)に比べて42%増加していました。
県別では、52週に症例が多かった県は、グランダンス県が人口1万人当たり51.7例と最大でした。北東県では人口1万人当たり29.6例と、51週と同様の傾向を示しました。一方、ポルトープランスのある西県では37.9例でした。2010年最終週には、流行の進展は各県で異なった傾向を示しました。アルティボニット県、中央県、北県のように、最初に症例が記録された北部の県では、新しい症例発生数は減少傾向にありますが、西県、グランダンス県、ニップ県では増加しています。
ポルトープランスでは52週の新症例数は、51週の3,846例に比較して、13,271例と著しい増加に転じています。総じてみると、このような増加傾向は、一部、症例数の記録作業の遅延によって生じている可能性があります。

入院数の傾向

新たな入院症例の傾向は、国全体で一様ではありません。 アルティボニット県では、入院数は継続的に減少傾向を示していますが、南部のニップ県、南県、グランダンス県では、12月の初頭より入院数の増加が報告されました。 また、これらの県では病院での致死率が過去最大となっており、ニップ県が3.4%、南県が3.9%、グランダンス県で3.9%となりました。週後半では、致死率がほぼ全国平均(2.5%)の2倍に至りました。入院率も国全体で一様ではありません。 5つの県(北県、北西県、ニップ県、南県、および南東県)では、ほぼ100%の入院率を示しました。 一方、3県(グランダンス、西県、北県)では、入院率は54%から76%でした。 3つの県および地域(アルティボニット県、ポルトープランス、中央県)では、1991年にペルーの熱帯雨林地域でコレラが流行した際の35%とほぼ同等の、約38%の入院率であることが報告されました。
県レベルの登録入院率の違いがあることは、様々な要素が複合していることによると説明できます。 標準化された治療プロトコールが使用されていると思われますし、すべての県での公共医療へのアクセスが同レベルと仮定した場合にも、入院率が非常に高い場合には、流行状況を反映している可能性、地域のコレラ症例を過少に報告している可能性、また入院症例を医療施設で診察を受けたすべての症例であるとみなしている(24時間より長い期間入院していない場合も)可能性等がありえます。

全症例致死率、入院症例致死率

今回のコレラ流行の全症例致死率は52週の段階で2.1%でした(ポルトープランスでの0.9%から南東県の13.1%までに分布)。入院症例致死率は、42週の4.4%から、52週の2.1%に減少傾向を示しました。

ドミニカ共和国

ドミニカ共和国公衆衛生省によると、流行52週の時点での検査室診断で確定したコレラ症例は154例で、このうち66.9%、103例が入院しました。この中で70%が男性で78%が15歳以上でした。

症例は、全国的な積極的調査で検出されました。 次の数週間、まだ症例が記録されていない州で調査活動を強化する計画があります。
ドミニカ共和国は31の州とNational districtに分かれます。コレラ症例とそれに伴う入院症例は13州で報告されており、その大多数が国の西部4地域でみられています。 症例報告があった州は、Elías Piña、San Juan、Santiago、Santo Domingo、Azua、Dajabón、Independencia、Valverde、Baoruco、La Altagracia、María Trinidad Sánchez、San Cristóbal、Monte Cristi.です。現時点ではElías Piña県で住民10万人あたり累積症例数37例と最も高い罹患率がみられています。 今までのところ、コレラによる死亡例は国に報告されていません。

12月に、Banica市のGuaroaのArtibonito川、Comendador市PinzonのNoria、の2か所で水源が汚染されていることが特定されました。 所管官庁は、この問題に対処するために必要な対応を取りました。
症例に対する疫学調査では、接触歴と近縁者について積極的調査が続けられています。 この調査は、患者発生が疑われる地域の近隣部や市に枠を広げて行われています。流行地域では、地域当局と共同体との協同による解決を目指し、地域共同体フォーラム形成を通じて、環境整備による流行阻止と公衆衛生活動の努力が続いています。

コレラ症例数、入院数、死亡数に関する日々の更新情報は、次のリンクにあるコレラ:インターラクティブ地図で見ることができます。
http://new.paho.org/hq/images/Atlas_IHR/CholeraHispaniola/atlas.html

Health Assistance Groupによって、国および県レベルで行われている対応に関する報告は、以下のリンクで参照できます。
http://new.paho.org/hq/index.php?option=com_content&task=view&id=4404&Itemid=3487