スワジランド、南アフリカ滞在者でのアフリカダニ熱の患者発生

国立感染症研究所 2011年1月31日

サハラ以南のアフリカでは、キララマダニ属によって媒介されるRickettsia africaeの感染が1992年に同定され、このリケッチアによるインフルエンザ様症状などを呈する疾患を、African tick-bite fever(ATBF)と呼ぶようになっています。主に草原地帯で感染したダニに刺咬されることで罹患します。

国立感染症研究所からの情報提供によると、1月18日以降、African tick bite feverの患者が1名検査室診断され、2名が強い可能性のもとに検査中とのことです。滞在地は、スワジランド、南アフリカで、インフルエンザ様症状と発疹がみられました。2名はダニによる刺咬が確認されています。3例ともdoxycycline, minocyclineなど、テトラサイクリン系抗生物質の投与で症状は改善しました。

国立感染症研究所IASR (Vol. 31 p. 137-138: 2010年5月号) によれば、R.africaeにより全身症状をきたすATBFの特徴は、多発する虫刺痕と発熱、頭痛、筋痛、リンパ節腫脹で、地中海紅斑熱との違いは全身症状が軽微であり、虫刺痕が多発することです。ダニによる刺咬から症状発症までは、5~10日とされています。

サハラ以南のアフリカ地域に滞在し、草原をハイキングするなどダニに刺咬されるリスクが高い行動のみられた旅行者に、インフルエンザ様症状や発疹がみられる場合には、リケッチア疾患の可能性も考慮する必要があります。

ダニによる刺咬を予防措置としては、(1)草原を歩行しないこと、(2)衣類の着用する際に、皮膚が露出しないようにすること、(3)DEETを含有する外用剤をあらかじめ外用することなどにご注意下さい。

参考文献

アフリカ南部で感染した紅斑熱群リケッチア症の国内経験例
国立感染症研究所IASR (Vol.20 No.9 1999年9月号)
モザンビーク共和国で感染したRickettsia africaeによるマダニ刺症の2例
国立感染症研究所IASR (Vol. 31 p. 137-138: 2010年5月号)