タジキスタンのポリオアウトブレイク、ロシア連邦での症例、他の中央アジア諸国への拡大リスク

CDC Travelers' Health 2011年03月18日

この情報は2011年3月22日東部標準時0時52分のものです。

現在の状況

タジキスタン保健省は、インドから輸入されたポリオウイルスのアウトブレイクへの対応を続けています。 アウトブレイクは2010年4月21日に世界保健機関(WHO)によって確認されました。 2002年にWHOヨーロッパ地域でポリオ根絶がされたと公認されて以来、これはポリオの最初の輸入事例です。 このアウトブレイクが終わるまで、中央アジア地域とロシア連邦のすべての国において、再度ポリオウイルスが輸入されるリスクがあります。 中央アジア諸国にはカザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、およびウズベキスタンが含まれます。 ロシア連邦の北コーカサス地域でのポリオの伝播は、コーカサス地方の、アルメニア、アゼルバイジャン、および、グルジアに感染が拡大するリスクがあることを示しています。

図.ポリオおよび急性弛緩性麻痺の発生数の地図

タジキスタン

タジキスタンは、2010年に712症例の急性弛緩性麻痺を報告しました。 これらの症例の中で、458症例はポリオとして実験室診断で確認されています。 確認されたポリオ症例の中で298症例が5歳未満の小児です。 また、2011年初頭以降、ポリオによると考えられた死亡例は、26症例から29症例まで増加しています。 2011年2月7日の時点で、2011年の初頭以降に発生した追加症例は報告されていません。
タジキスタンの最も新しい確認症例は、2010年7月4日に発症しました。
確認されたポリオ症例は、すべて中央および南西のタジキスタンに位置している、首都Dushanbeおよび政府直轄地域(Districts of Republican Subordination)、および、Khatlon州で、また、北Sogd州に位置している1地区およびその州都であるKhudjandで報告されています。このアウトブレイクに関して、WHOは近隣諸国やその他の国と連携をとっており、 タジキスタン政府はWHOから技術指導とサポートを受けました。タジキスタンは南にアフガニスタン、西にウズベキスタン、北にキルギスタン、および東に中華人民共和国へと国境を接しています。

ロシア連邦

ロシアはこれまでの14のポリオ症例を報告しました。5症例は、旅行者に関係した症例で、国内への大規模な拡大は報告されていません。症例はMoscow、ChelyabinskYekaterinburg、Irkutsk、Khabarovsk地域、Chechen共和国、Dagestan共和国で報告されました。最後の2つの共和国は、北コーカサス地方にあり、地域で感染した3症例が報告されていますが、いずれもタジキスタンへの旅行と明らかな関連性は知られていません。 ロシアでの最新のポリオ確認症例は、2010年9月25日にDagestan共和国で発症しました。2011年1月1日以降、合計41件の急性弛緩性麻痺症例が報告されています。試験結果が分かった24症例はすべてがポリオ陰性でした。

トルクメニスタン

2010年に、トルクメニスタンは、3症例のポリオ確定症例を含む50症例の急性弛緩性麻痺を報告しました。これらのすべての症例が、6月に発症しており、ウズベキスタンに国境を接しているLebap州で生じました。2011年2月7日現在、2011年初頭以降、追加症例は報告されていません。

カザフスタン

2010年に、カザフスタンは、113の急性弛緩性麻痺症例と2010年8月12日に発症した1例のポリオ確定症例を報告しました。症例はウズベキスタンとの国境近くの南部カザフスタンで報告されました。

ウズベキスタン

ウズベキスタンは2010年にタジキスタンとの国境近くの症例を含む147症例の急性弛緩性麻痺を報告しましたが、どの症例もポリオとの確認はありません。 2011年2月7日現在、2011年初頭以降、追加症例の報告はありません。

キルギスタン

2010年に、キルギスタンは、68症例の急性弛緩性麻痺を報告しました。2011年2月7日現在、2011年初頭以降の追加症例報告はありません。 ポリオであると確認された症例はありません。

コーカサス諸国、中央アジア諸国、およびロシア連邦への米国旅行者のための推奨事項

ポリオは、通常感染者の便に接触したこととで拡大する病気です。 また、ポリオウイルスは唾液や汚染された物品、水、調理されていない食品を通しても拡大することがあります。この疾患は5歳未満の子供に主として感染しますが、ワクチン接種が施されていない人であればどんな年齢の人にもリスクがあります。 疾患の徴候および症状として、手足の麻痺や呼吸筋の麻痺が起こることもあります。
旅行者は、ポリオから自分を守るために以下の方法をとらなければなりません。

1.ポリオ予防接種を受ける

  • 自分のかかりつけの医師に、あなたのポリオ予防接種が最新化のものであるかどうか、旅行前に追加予防接種が必要かどうか相談してください。
  • あなたが小児期に予防接種を受けたか、または以前ポリオにかかったとしても、あなたがポリオを確実に予防するには、ブースター接種を受ける必要があります。 小児と旅行する場合には、その小児についても適切に予防接種を受けていることを確認してください。

2.食べものおよび水の安全について注意する

  • 完全に調理されている、熱い食べものを食べてください。
  • 殺菌された乳製品を食べたり飲んだりしてください。
  • 自分で安全な水を使って洗い、自分で剥くことができる果物や野菜だけを食べて下さい。
  • 瓶に入れられているか煮沸消毒した水、あるいは封をされた瓶に入れられ、シールをされた飲料(炭酸飲料かスポーツ飲料)だけを飲むようにしてください。水道水、泉の水、氷を避けてください。

3.手指の衛生管理に注意する

  • 頻回に石鹸と水を用いて手を洗って下さい。 石鹸と水が利用できないなら、アルコールを基剤とした手指用のゲルを利用できます。
  • 特に食事を食べる前、飲料水を飲む前、食事を準備する前、また、トイレに行った後、おしめを取り替えた後、咳やくしゃみをした後には手を洗って下さい。

医療ケアプロバイダーのための情報

ワクチン推奨:アルメニア、アゼルバイジャン、グルジア、タジキスタン、カザフスタン、キルギスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、ロシア連邦に旅行する幼児および小児

・予防接種の実施に関する諮問委員会(ACIP)は、アメリカ合衆国のすべての幼児と小児に対して、2カ月、4カ月、6から18カ月、および4から6歳時の、4回の不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)の投与を推奨しています。
・もし、迅速な保護が必要であるならば、最初の3回の投与の最小間隔は4週間(28日間)とし、3回から4回までの最小間隔は6カ月とします。
・以前に接種された回数に関係なく、年齢4歳以上で1回の不活化ポリオワクチンを投与しなければなりません。

ワクチン推奨:アルメニア、アゼルバイジャン、グルジア、タジキスタン、カザフスタン、キルギスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、ロシア連邦に旅行する成人

・小児期にIPVか経口ポリオワクチン(OPV)のいずれかを用いた、完全な接種シリーズが終わっている旅行者であっても、成人追加接種を受けていない場合には、出発前に1回IPV接種を受けなければなりません。
・成人に対しては一生に2回以上追加IPV接種を行う必要性については、入手可能なデータに関する限り示されていません。
・予防接種を受けていないか、予防接種が不完全か、あるいは予防接種の状態が未知である場合には、すべての年齢の旅行者が3回のIPV予防接種(4から8週間をあけて2回、3回目を2回目以降6から12カ月あけて)を受けなければなりません。

WHOおよびCDC内情報リンク(英文)