ウガンダで発生したエボラ出血熱について(続報)

ProMED mail2011年5月16日

新華網 2011年5月15日(http://news.xinhuanet.com/)

ウガンダで発生したエボラ出血熱により1人が死亡し、30人以上が保健省職員による観察下に置かれていることが、保健省により2011年5月14日に発表されました。発生地は、首都カンパラの約50km北に位置する、Luweroです。

保健省の地域医療部代表であるAnthony Mbonye氏によると、Zirombwe地方の12歳の少女がエボラウイルス感染の徴候を示したため、地区の陸軍病院に入院し、検査の結果エボラウイルス感染であることがわかりました。エボラウイルスは感染力が強く、感染すると発熱、嘔吐、下痢、全身の痛み、倦怠感、内出血と出血が起こります。感染した少女は、2011年5月6日金曜日に死亡しました、そして、彼女と接触した約30人が隔離され、保健省職員による21日間の健康観察が行われています。いまのところ、隔離された30人はまだウイルス感染の症状を何も示していません。

Mbonye氏は、簡易検査の結果に基づけば今回のウイルスは過去にスーダンで発生したもの(スーダンエボラウイルス)と類似していると述べています。今回の発生地は、南スーダンに通じる高速道路沿線に位置しています。スーダンエボラウイルスの致死率は60%であることがわかっています。

2007年にはこれとは異なる亜型のエボラウイルスがウガンダに現れました。コンゴ民主共和国の東側に接している、Bundibugyo地域の西側で見られた発生例では、148人が感染し37人が死亡しました。

今回のエボラ出血熱の発生を受けて、政府は、全国でこの病気に対応できるようにするため、国家エボラ調査委員会(NETF)を再招集しました。NETFの議長であるMbonye氏によると、地方委員会を現在組織中であるとのことです。国境線ポストで勤務する出入国管理官は警戒状態となり、隣接する国に対してエボラの発生が通知されました。

当地の世界保健機関(WHO)代表Joachim Saweka氏によると、出入国管理官は警戒状態についていますが、厳重な出入国規制はまだ必要ではないとのことです。Saweka氏によると、WHOからの専門家チームも、現地に駐留する調査チームを支援するためにウガンダへ向かっています。2011年5月14日に保健省は、事態を収拾するためのあらゆる対策が実施されているので国民に対し冷静な行動を要請する声明文を発表しました。保健省は手袋とマスクのような保護具を着用しエボラ出血熱患者の体液との直接接触を避けることと、エボラウイルス感染による死者は直ちに埋葬し、葬儀等の儀式を避けるよう要請しました。政府はこの件を処理するのに必要な薬品やその他資材を備蓄しています。さらに、感染地に隔離施設が設置されました。

ProMEDによる注釈

上の情報が正しいなら、今回のLuwero地区で報告されたエボラ出血熱に関する症例は、2007年にBundibugyo地区のエボラ出血熱を引き起こした新規のウガンダ系統のエボラウイルスによるものではないこととなります。分類学的には、エボラ出血熱を引き起こすウイルスは、フィロウイルス科、エボラウイルスに分類され、さらにコート・ジボアールエボラウイルス、ザイールエボラウイルス、レストンエボラウイルス、スーダンエボラウイルス、およびブンディブギョエボラウイルスに分類されます。ザイールエボラウイルス、スーダンエボラウイルスとブンディブギョエボラウイルスはこれまでのアフリカでのアウトブレイクに関わっており、高致死率(25-90パーセント)を示しますが、コートジボアールエボラウイルスとレストンエボラウイルスは高い致死率を示しません。

レストンエボラウイルスは人間に感染しますが、重い症状を示したことや死亡例はこれまでに報告されていません。西太平洋で見られたレストンエボラウイルスのヒトへの感染では不顕性感染を引き起こしたのみでした。エボラウイルスの自然宿主は西太平洋がアフリカ大陸の熱帯雨林に生息していると考えられています。

WHOメディアセンターからエボラ出血熱に関する詳細な情報を得ることができます(英語)。

http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs103/en/index.html

Luweroの場所を確認できるウガンダの地図を次のサイトで確認することができます。

http://en.wikipedia.org/wiki/Districts_of_Uganda

HealthMap/ProMEDのインタラクティブマップを次のサイトで利用することができます。

http://healthmap.org/r/01z1

2009年のエボラ出血熱の発生地分布が記載された地図を次のサイトで見ることができます。

http://www.who.int/csr/disease/ebola/Global_EbolaOutbreakRisk_20090510.png