EUの症例定義ー志賀毒素2型産生大腸菌の流行株によるHUSについて
ECDC 2011年6月7日
志賀毒素2型産生性大腸菌O104:H4の流行株による下痢症と溶血性尿毒症症候群(HUS)のEUにおける症例定義は次の通りです。
疑い症例
2011年5月1日以降に症状を呈した者であって
次の症例をSTEC下痢症と定義する。
- 下痢または血性下痢を急性で発症し
かつ
- 少なくとも実験室で次のいずれかの検査結果を得た場合。
○志賀毒素2型(stx2)を産生するかstx2遺伝子を有する大腸菌の分離
○菌株の分離はないが糞便試料から直接stx2遺伝子の核酸を検出
次の症例をSTEC HUSと定義する。
- 急性の腎不全であって以下の臨床症状のうち最低1を呈する溶血性尿毒症症候群
- 微小血管障害性溶血性貧血
- 血小板減少症
可能性例
STEC下痢症またはSTEC HUSの疑い症例の基準を満たす者であって
発症前の14日間における暴露期間において以下の疫学的基準のうち最低1を満たす者。
- ドイツまたは感染の可能性が高いと確認された症例がある国に滞在している
- ドイツで取得した食品を摂取した
- 感染例として確認された人物と濃厚接触した(家族であるなど)
感染確認例
可能性例の基準を満たす者であって
血清型O104:H4系統のSTEC株が分離された者
または
O104系統のSTEC株が分離され、可能性例における疫学的基準を満たす者。
アウトブレイクした系統の特徴
今回アウトブレイクした系統は次のような特徴を有します。[1]:
- 志賀毒素賛成性大腸菌血清型O104:H4
- 志賀毒素2型陽性(stx2a positive)
- インチミン, eae -(negative)
- エンテロヘモリシン –(negative)
- EaggEc 病原性プラスミド
- aatA-PCR: + (positive) (ABC-transporter protein gene)
- aggR-PCR: + (positive) (master regulator gene of Vir-plasmid genes)
- aap-PCR: + (positive) (secreted protein dispersin gene)
- aggA-PCR: + (positive) (AAF/I-fimbral subunit-gene)
- aggC-PCR: + (positive) (AAF/I-fimbral operon-gene)
MLST法によるタイピング
ST678 (adk 6, fumC6, gyrB 5, icd 136, mdh 9, purA 7, recA 7)
ESBL産生(CTX-M-15)
以下の項目について試験することが可能であれば、STEC株のさらなる性状について調べるべきです。
- 全血清型;
- eae遺伝子およびaggR遺伝子;
- サブタイプstx2およびMLST法によるタイピング;
- 制限酵素XbaI処理後のPFGE;
- ESBL (Extended Spectrum Beta-Lactamase)遺伝子
除外条件
今回アウトブレイクした血清型以外の全てを除外する。Stx1産生株およびstx1遺伝子陽性株についても同様に除外する。
EUにおけるアウトブレイクモニタリングの症例報告のための推奨フォーム
可能性例数、確認症例数および死亡例数について、相互に排他的な臨床分類に基づき、下の表(表1)に記載して報告してください。死亡例数は、感染例数に含めてください。
表1 STECO104:H4流行株に起因するまたは関連するSTEC下痢およびSTEC HUSの累積症例数および累積死亡例数
*今回のアウトブレイクに関連するSTECまたはHUSによる疾病による死亡。死亡数を症例数に加えてください。
参考文献
1.http://www.rki.de/cln_109/nn_467482/DE/Content/InfAZ/E/EHEC/EHEC__Diagnostik