ドイツにおける志賀毒素産生性大腸菌のアウトブレイクについて

ECDC 2011年6月8日

本日より、新しい欧州連合の症例定義に従って加盟国が報告を行うようになりました。その結果、フランス、スウェーデンおよびオランダの参加国において、昨日と比較すると数値が多少補正されています。

5月22日にドイツ政府は志賀毒素産生性大腸菌(STEC)による溶血性尿毒症症候群(HUS)と血性下痢症の患者数が顕著に増加していることを報告しました。2011年5月2日以降、HUS722例と、非HUSのSTEC感染症2,021例(このうちドイツ国内ではHUS689例、非HUSのSTEC感染症が1,959例)が欧州連合の加盟国により報告されました。EU加盟国内では、19人がHUSによって死亡し、6人が非HUSのSTEC感染により死亡しました。下の表をご参照ください。

従来、STEC感染によるHUSは、5歳未満の小児に見られることが多いのですが、今回のアウトブレイクでは、ほとんどの症例は成人のもので、2/3以上が女性によるものとなっています。実験室での試験結果により、血清型O104:H4のSTEC(Stx2陽性、eae陰性、hly陰性、ESBL、aat、aggR、aap)が原因となる病原体であることがわかりました。PFGEを行ったところ、7株のドイツでアウトブレイクしたO104:H4と、2株のデンマークで分離したO104:H4はいずれも同じパターンを示しました。

感染源については現在調査中で、汚染された食品が感染を媒介したものと見られています。ほとんどの症例はドイツ北部(主としてSchleswig- Holstein 、Lower Saxony、North-Rhine-WestphaliaとHamburg)で発生したものか、当地への渡航歴のある人によるものです。EU内では、デンマーク、オランダ、ポーランド、スペイン、スウェーデンおよび英国でHUSの症例を報告し、他の6カ国は、非HUSのSTEC症例のみを報告しています。

図.EU加盟国におけるHUSおよび非HUSのSTEC症例数および死者数の表

現在判明していることは、患者はドイツ(特にドイツ北部)での病原体への暴露によるものであるということです。感染を媒介しているのが何であるか明らかではなく、徹底的な調査が行われています。これらの調査結果によりリスク評価が行われる予定です。ドイツ国内および5月上旬以降ドイツへの渡航歴のある人について、このアウトブレイクに疫学的リンクを有する潜在的な症例を迅速に明らかにすることが、重症患者を増やさないようにするためには重要なことです。

STECとは、志賀毒素を産生する病原性大腸菌の一種であり、ヒトの腸管および全身に重篤な疾患を引き起こします。

参考文献