野生型ポリオウイルスの発生-チャド

アフリカのチャドで野生型ポリオウイルス(1型と3型)の集団発生がありました。
3型の野生型ポリオウイルス(WPV3)による流行は、チャドで2007年以降継続しています。このため、チャドではWPV3の流行が再確立されたと考えられています。1型の野生型ポリオウイルス(WPV1)による流行は、ナイジェリア北部から新たに持ち込まれたことによって、2010年9月に始まり、以来激化しています。もともとgreaterンジャメナ(greater N'Djamena)地域に限定されていましたが、WPV1は、2011年に中央アフリカとカメルーンとの国境地域を含む南部、スーダンと国境を接する地域を含む東部へと、国内の他の地域へ拡大しています。

歴史的には、チャドは野生型ポリオウイルスの国際的な広がりに関連してきました。
2004年から2006年の間、WPV1はチャド東部からスーダンに広がり、続いてアフリカ北東部(「アフリカの角」地域)、サウジアラビア、イエメン、インドネシアへ拡大し、これらの国で1,230の患者が発生し、5億USドルを超える費用が国際緊急対応としてかかりました。加えて、2008年と2009年にチャド南部からカメルーンと中央アフリカ(CAR)へWPV3が広がりました。
これらの1型と3型の野生型ポリオウイルスの集団発生により、国全体の経口ポリオワクチン(OPV)を受けている子供の割合を高めるために、特にンジャメナ地域、南部及び東部の地域において、予防接種活動の質を向上させる緊急行動が必要です。地方政府レベルで、急性弛緩性麻痺(AFP)のサーベイランスの質が異なるため、検出されていない野生型ポリオウイルス流行があることは除外できません。

緊急事態に対処するために、チャド政府は、援助を受け、6か月にわたる国家ポリオ緊急計画を終えたところです。2価のOPVを用いて、全国予防接種デー(NIDs)が5月に実施され、さらに6月に予防接種補助活動(SIAs)が計画されています。
チャド政府は技術サポートが重点を置くべき地域に割り当てられるよう作業をすすめています。ハイリスクの集団にたどり着けるように特に戦略を立て、地方政府レベルでのサーベイランスの差がないようにするために、技術上の能力を向上させる予定です。
プログラム実施のための責任を向上させる一環として、主な実施指標が定期的に監視されます。国家ポリオ緊急計画の下に、それぞれの予防接種補助活動に応じて、実施状況を地方行政府の長が責任をもって監督します。また、地方政府に明確な成果と、確固とした勧奨事項についての概要を提供していきます。地方政府事務局は、計画が実行されているか否かを直接監督します。国家レベルでは、保健省により月間実施報告書が準備され、首相府と情報共有されます。

2010年と2011年を通してチャドと隣接する国々(特にカメルーン、中央アフリカ、スーダン)は複数回SIAを実施し、再感染のリスクを最小限に抑えています。また、アフリカ中央部とアフリカ北東部(「アフリカの角」地域)でのポリオ輸入を迅速に検出し、タイムリーに対応できるようにするため、AFPのサーベイランスを強化することが重要です。また各国は、集団免疫をさらに強化し、野生型ポリオウイルスの輸入リスクを最小限に抑えるために、ポリオに対する定期予防接種の接種率を持続して上昇させるようにしなければなりません。

  • 国際的な拡大が起こる可能性:
    2010年と2011年の感染時の対応は不十分でした。両方の野生型ポリオウイルスが制御されないまま地理的に広がり、近隣諸国にまで歴史に残る拡大が生じ、WPV1はチャド中(中央アフリカおよびスーダンの国境近隣部を含む)に拡大したことを考慮し、世界保健機関(WHO)は、最近のWPV1の地理的な拡大から、更なる国際的拡大がもたらされる危険があると評価しています。
    サウジアラビアのメッカ巡礼が11月前半に、またラマダンが8月前半に始まると予想されています。巡礼者が現在アフリカ西部とアフリカ中央部を動き始めることが予期され、ポリオの感染拡大の危険がさらに高まっています。サウジアラビアは先月、メッカ巡礼に際し、ポリオワクチンを要求することを発令しました。
  • WHOの推奨事項:
    WHOはポリオ感染地域からのすべての旅行者に対し、旅行前に予防接種を終えておくことを推奨しています。WHOのITHに記載された勧奨事項に従って、チャドへの旅行者及びチャドからの旅行者はワクチン接種により完全に防護する必要があります。チャドへ行く人で過去にOPVを3回以上接種した人も、出発前にさらにポリオワクチンの追加接種を受けることが望まれます。これからチャドへ旅行する予定があり、ポリオ予防接種を受けていない人は、ワクチンの完全なコースを終える必要があります。チャドからの旅行者は、チャドを出発する前にポリオに対するワクチンを完全に終了していること、最低1回のポリオワクチン(OPV)を接種する必要があります。いくつかのポリオ発生のない国の中には、チャドからの旅行者が入国査証を得るためにポリオワクチン接種が必要とされる場合があります。