O104大腸菌のドイツにおけるアウトブレイクとフランスにおける症例クラスター

HPA 2011年06月30日

溶血性尿毒症症候群(HUS)および血性下痢症(O104大腸菌によるVTEC またはEHEC感染)のドイツにおける発症例が減少し続けています。

6月23日木曜日にHPAで行われた更新以来、ドイツ保健当局は、18例のHUSの新たな症例を報告し、合計で841症例となりました。また、血性下痢症については、245症例が新たに報告され、合計3,110症例となりました。先週木曜以降、ドイツではさらに5例の死亡例(1例のHUSおよび4例の血性下痢症)が報告されました。このアウトブレイクによって死亡した人の合計は現在48人であり、31人がHUS(30人がドイツ国内、1人がスウェーデン国内)で、17人が血性下痢症(全てドイツ国内)で死亡しました。

過去2週間において、ドイツのアウトブレイクと潜在的な疫学的リンクを有する血性下痢症の新たな症例は英国内で発生していません。したがって、英国内における症例数は合計17例(3例のHUS(全てイングランド)と14例の血性下痢症(イングランドにおける13例、スコットランドにおける1例))となっています。これまでに、これらの患者のうち6例について微生物学的に確認がなされています。全17症例が、ドイツへの渡航に関連しています。

ドイツ保健当局は、地元で生産された芽野菜が感染源を媒介したことを報告しています。

6月27日の月曜日にHPAが報告したように、ドイツへの渡航歴のないO104大腸菌の症例クラスターがフランスで報告されました。これまでにフランス保健当局は、8例のHUSと8例の血性下痢症を報告していますが、死者はいまのところいません。これらの患者のうち4例からドイツのアウトブレイクで見られた系統と同じくO104大腸菌が確認されました。9例において6月8日にボルドー近傍のBèglesで催されたイベントで芽野菜(コロハ種子、マスタードおよびルッコラ)を摂取したことが報告されています。このイベントで芽野菜として使用するために発芽させた種子は、近所のガーデンセンターで購入されたものであり、イギリスの会社から入荷されたものでした。欧州食品安全機関(EFSA)と欧州疾病管理予防センター(ECDC)は共同で、フランスのHUSクラスターに関する暫定的な情報とドイツのアウトブレイクに関する詳細情報に基づけば、ドイツとフランスのO104大腸菌感染症の感染源は芽野菜の摂取と考えられる、との発表を行いました。

英国食品安全管理局(FSA)は、EFSAと共同でトレースバックおよびトレースフォワード調査を各国およびEUレベルで実施し、ドイツとフランスにおける芽野菜生産チェーンにおける共通性(物流チェーン、物流業者、小売および卸売業者)を調べました。これまでに、ドイツおよびフランスのアウトブレイクの考えられる感染源として、発芽コロハ種子(sprouted fenugreek seeds)の摂取が関係していると見られています。

調査が終了するまでは、FSAは念のため芽野菜(アルファルファ、緑豆(一般には豆もやしとして知られています)やコロハ種子)を湯気が出るまで完全に熱して調理したもののみ食べ、生のまま食べないように勧告しています。

加えて、ECDCとEFSAは全ヨーロッパの消費者に自分で食べることを目的に芽野菜の発芽を決して行わないよう強く勧告しました。

FSAは、フランスとドイツでアウトブレイクを引き起こした大腸菌株によって汚染された芽野菜の種子は英国内では販売された証拠はないとしています。

大腸菌に感染しないようにするために、HPAはこれまで通り手洗いを通常の衛生的な手順により行い、血性下痢の症状や嘔吐を呈した人はただちにかかりつけの医者(GP:general practicioner)に連絡するよう勧告いたします。

参考文献

HPAはイングランドでの大腸菌サーベイランスを実施しています。

大腸菌感染症を回避するためのガイドライン:

  • トイレを使用したあと(おむつを交換するなど他人の手助けをした場合も含みます)、生肉を取り扱ったあと、食事をする前や動物を触った後はよく手を洗いましょう。
  • あらゆるひき肉は(バーガー、ミートローフ、ミートボールなど)、全体が同じ色になり、血が滴らないようになるまで完全に調理しましょう。
  • 冷蔵庫の動作が適正に行われているか確認しましょう。バクテリアは4℃を超えると急速に発育します。
  • 室温に放置するのは、調理済みの食品、肉および乳製品のみにし、放置時間が短時間になるようにしてください。
  • 未調理の肉類を保管する場合には、調理済みの肉やサラダ用野菜よりも下に保管するようにし、これから食べようとするものの上に生肉の肉汁類が滴らないようにしてください。
  • 未調理の肉と調理済みの肉を別の食器に分けて保管するようにし、生肉と調理済みの肉が接触することのないようにしてください。
  • 生のまま摂取されるサラダ用の野菜は徹底的に洗浄し、生肉に使用された道具を用いて生野菜を取り扱うことのないようにしてください。
  • ベロ毒素産生性大腸菌は、小児および老人に重篤な症状を引き起こすことから、小児や老人は殺菌されていない乳製品を食べたり飲んだりしないようにしてください。
  • 病気から治った人治ってから最低48時間は他人のためにに調理しないようにしてください。
  • 由来がわからない(衛生的かどうかわからない)水は、煮沸してから飲むようにしてください。
  • 近くで飼育されている牛や羊によって汚染されていると思われる水の中では泳がないようにしてください。

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