東ヨーロッパ・地中海地域におけるウエストナイルウイルス感染症の流行について
2011年8月4日フランス公衆衛生院(週報)
流行状況
ルーマニア
2011年7月21日、ルーマニア当局により、ヨーロッパにおける2011年のウェストナイルウイルス(WNV)流行時期として、初めての症例が報告されました。(BHI No. 305参照)
ギリシャ
2011年8月3日、ギリシア保健当局は、中央マケドニア地域、テッサリア(Thessalie)地域とアッティカ(Attike)地域(地図1参照)で、WNVによる髄膜炎症例を7症例報告しました。これは、2011年にギリシャで報告された、この季節初めての症例で、旅行者の訪れる地域が含まれています。
2011年8月1日、ギリシア当局は、南部アッティカ地方の農場でウマ2頭の感染例を発表しました。
地図1:ヒトの症例が報告されたギリシャの地域(2011年8月3日)
ロシア
2011年7月26日に、ロシア保健当局はWNVによるヒトへの感染例を4症例報告しました。このうち2症例はロシア南西部のボルゴグラード(Volgograd)地方で発生しています。
イスラエル
2011年1月1日から、イスラエル保健当局はWNVによる感染確定例症例と、疑い症例5症例を報告しました。それに加えて、このウイルスに対して特化したサーベイランスで、それぞれ北部と南部地域の2か所の水たまりで、イエカ属のCulex perexigusが陽性という結果が出ています。
フランス公衆衛生院によるコメント
WNVは、東ヨーロッパと地中海地域で土着流行と流行を起こすウイルスで、定期的に夏に流行することが報告されています。
2010年に、地中海地域においてWNVのウマのクラスター発生と人感染症例が生じたことが確認され、このヨーロッパ地域でWNV流行が増加していることが示されました。(BHI No.258[PDF形式:165KB]およびNo.264[PDF形式:218KB]を参照してください)。
2010年に、ギリシアでは初めてWNVによる流行が認められました。2010年8月から11月にかけて、35例の死亡例含む、262例の人感染症例が報告されました。
2010年に、ロシアでは、WNV人感染症例が524症例報告され、そのうちボルゴグラード州だけで413症例がみられました。ボルゴグラードはボルガ川流域地方に位置しており、この地域ではWNVが土着流行し、WNVのベクターである渡り鳥が通過する地域となっています。(BHI No.261参照)。
イスラエルでは、59の死亡例を含む452の人感染症例が報告された、2000年にみられたWNVの最近の大きな流行以来、WNVが土着流行していると考えられています。2010年には、イスラエルで58例の人感染症例が報告されました。
2010年には、地中海地域で、前例のなかったWNVの流行がみられました(地図2および2010年WNV関連の注釈文を参照ください)。人およびウマで感染が生じたことは、WNVの流行する季節が始まったことを意味していますが、現在のところ、異常といえるほどのものではありません。この地域での流行状況については、どのような変化であっても、事態の進展がないか慎重にモニターを続ける必要があります。
地図2