デング熱の状況-中南米

PAHO、ECDC 2011年8月19日

中南米地域の2011年のデング熱の状況に関する最新情報です。今年後期の初めに、中央アメリカ、メキシコ、カリブ海の地域でデング熱のリスクがより高くなっています。
これらの情報は、加盟国の保健省から全米保健機構/世界保健機関(PAHO/WHO)へ報告されたデータやWEBページに掲載されたものです。2011年第31疫学週(EW)の時点で、890,756例のデング熱症例(10,840例のデング熱重症例と488例のデング熱死亡例を含みます)が、アメリカ大陸で報告されました。

表:2011年における地域ごとのデング熱、デング熱重症例、死亡の合計(疫学31週)

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* デング熱重症例を含むデング熱症例の合計
** デングショック症候群またはデング熱重症例のすべてのタイプを含む
出典 : 加盟国の保健省およびウェブサイトの更新

北アメリカ、中央アメリカ、メキシコ

アメリカ合衆国:2011年ハワイとフロリダで確認されました。輸入例の増加が懸念されるためCDCはアメリカ合衆国においてデング熱は届出疾患と認定しました。

エルサルバドル:30EWまでに、5,644例(うち2,195例が検査室で確定診断)が報告。発生率は人口10万人あたり(以下省略)88.23です。

パナマ:30EWまでに、390例(うち249例が検査室で確定診断、141例が疫学的リンクあり)が報告。発生率は10.96。血清型DEN 1、DEN 2 、DEN 3が同時に流行しています。

メキシコ:29EWまでに、25,307例(うち2,476例が検査室で確定診断)が報告。発生率は22.88。現在、血清型DEN1、DEN2、DEN4が流行しています。

カリブ海

アルバ:15 EWまでに、1,573例(うち674例が検査室で確定診断)が報告、DEN4による死亡例1例が確認されました。

バハマ:30例の確定例(27 EW~30 EW)が報告され、血清型はDEN1でした。年齢層は11歳から74歳(平均35歳)で60%が男性でした。※下記ECDCによるコメントを参照

セントルシア:30 EWのみで、150例以上の重症例が診断されました。報告週は雨季に入った頃で、予想以上の雨量とハリケーンの影響も受けています。10歳以下の小児が主に影響を受けています。

アンデス地域

ボリビア:29EWまでに、26,019例(うち6,270例が検査室で確定診断)が報告、(重症デング熱36例で死亡36例)。発生率は267.49。2010年から血清型DEN 1、DEN2、DEN3が流行しています。

ペルー:28EWまでに、33,888例(うち8,827例が検査室で確定診断)が報告、(重症デング熱234例、死亡28例)。4つの血清型が流行しており、発生率は114.82です。

コロンビア:29EWまでに、19,482例(うち4,070例が検査室で確定診断)が報告。819例が重症デング熱に相当します。発生率は84.93。死亡36例でした。

南アメリカ

パラグアイ:30EWまでに、35,027例(うち5,933例が検査室で確定診断もしくは、疫学的リンクあり)が報告。2011年初め、重症デング熱95例、死亡62例が報告されました。累積発生率は542.97です。現在血清型DEN1とDEN2が同時に流行しており、DEN2が優位となっています。

ブラジル:26EWまでに、715,666例が報告され、重症デング熱が8,104例で死亡310例で、アメリカの合計症例のそれぞれ75%と64%を占めています。

この地域の国々は、デング熱の予防と制御(EGI-デング熱)の統合管理戦略を通じ、この複雑な疾患への対応へ努力を注いでいます。
デング熱の死亡率の低下は、早期発見、治療、必要に応じて病院の医療サービスへ紹介することを保証する組織的なプロセスが必要です。

すべてのケアレベルで良好な臨床サービスの提供は、このプロセスの重要な要素です。一部の重症デング熱や死亡例をのぞき、デング熱患者のほとんどは入院を必要とせず回復します。

トリアージの原則(患者の選択)と患者を最初に診るプライマリとセカンダリーケアのレベルの管理上の決定は、重症デング熱を発症するリスクがある患者や病院でのケアを必要とする患者を識別することを可能にします。
デング熱のような複雑な症状を呈する疾患を救命する治療は、適切かつタイムリーな介入が行われるべきです。

ECDCによるコメント

バハマは年間約500万人の旅行者が訪れる国です。その多くが米国から訪れており、ヨーロッパの旅行者も訪れています。
現在、最も人口の多い首都ナッソーのあるニュー・プロビデンス島で深刻な流行が発生しています。
保健当局引用のメディア情報によると、2011年のこれまでの間、約2 000例の確定症例がありました。最初の症例は3月下旬で、2カ月の間に急速に増加しました。疑似患者が毎日、数例報告されています。
デング熱はバハマで一般的な感染症であるとは考えられていません。ここ15年間、1998年に局地的な発生(150~300 例)と2003年に報告されただけです。
国の保健当局はコントロール対策を実施し、ウェブ上に公開しています。
WHOとカリブ海疫学センター(CAREC)は主に教育および情報のキャンペーンで、国の保健当局を支援しています。
デング熱がその地域で増加しているので、CARECとナッソーにあるアメリカ大使館は今月、この地域に公式に公衆衛生警報を出しました。

ECDCは、これらの観光地で継続中のアウトブレイクに関する一般大衆の意識啓発や島々を訪れる人のために適切な予防対策を講じることの重要性を強調します。
デング熱の予防は個々の虫(蚊)刺され対策です。例えば、長袖シャツの着用や靴下の中にズボンを入れる、虫除け剤の塗布などです。
流行地から帰国して2週間以内に症状が現れた場合は、速やかに医師の診察を受け、最近旅行したことを伝えてください。