オーストラリアでタミフル耐性インフルエンザ2009H1N1ウイルスのクラスター発生

CIDRAP 8月26日

ミネソタ大学感染症研究センターによりますと、25日オーストラリア公衆衛生省は、ニューサウスウェールズ州(New South Wales)でこれまでで最大のオセルタミフル(タミフル)耐性インフルエンザウイルス2009H1N1のクラスター発生があったことを発表しました。

5月から8月までにニューサウスウェールズ州(New South Wales)のハンターニューイングランド(Hunter New England)地方でのインフルエンザ2009H1N1患者184人のうち25人において、ウイルス変異(H275Y)によりタミフル感受性が低下していました。

タミフル耐性(インフルエンザウイルス)2009H1N1の小さなクラスター発生はこれまでも患者が抗ウイルス剤治療を受ける医療機関からの報告はありましたが、これまでに調査をした16人の患者は治療を受けていませんでした。
検体を採取した時、5人の患者は入院中でしたが、免疫抑制剤は使用していませんでした。そのうち3人は妊婦でした。集中治療室へ入院したり、死亡した患者はいませんでした。
最初の16人のうち15人がニューカッスル(New castle)の半径50km圏内に住んでいました。
耐性ウイルスの感染が続いている患者についてさらに調査を続け、詳細なウイルスの解析をしています。

抗ウイルス剤の専門家によると、このH275Y変異による耐性ウイルスのクラスターはこれまでで最大規模のものということです。また専門家は、この報告は変異ウイルスは抗ウイルス薬の使用がなくても容易に(ヒトからヒトへ)伝播することを示唆しており、また治療を受けた患者からこの変異株が他のヒトへ感染したのかもしれないと述べています。

WHOは6月にサーベイランス結果を更新しており、協力機関5ヶ所の定期検査の報告から、タミフル耐性ウイルスの割合は大変低く1.5%と発表しています。全体的には月毎の検出率は2010年10月以降わずかに上昇し、3月には減少しています。検出率は機関ごとに異なっています。

臨床的な背景も機関ごとに異なります。日本ではタミフル耐性症例のほとんどが予防投薬を受けていますが、英国では薬剤投与を受けていない患者での耐性ウイルス検出率が2009-2010年の流行シーズンで11%でしたが、2010-2011年では少なくとも28%に増加しています。

専門家は、今回のクラスター発生がニューカッスル(New castle)を超えて拡大しないかが気がかりであるが、幸いインフルエンザシーズンは終わりかけていると述べています。

世界的な更新情報によるホットスポット(流行地域)

・WHOによる世界的インフルエンザ流行更新情報によりますと、オーストラリアでのインフルエンザ流行は、指標となるインフルエンザ様症状で医療機関を受診する患者数と検査室での確定診断数が増加しています。報告によりますと2009H1N1ウイルスとB型ウイルスがともに流行しています。
・隣接するニュージーランドではB型が優勢で、流行の程度は例年並みということです。南半球における流行時期は通常5月から10月です。
・熱帯地域でのインフルエンザ流行は、アメリカ、西部アフリカ、南アジアの一部を除いて低いです。
・流行地域はキューバ、ホンジュラスでA型(H3N2)が優勢です。ドミニカ共和国ではインフルエンザ流行が続いており、B型が大きな割合を占めています。
・ほかには、カメルーンで流行し始めており、報告のほとんどがB型で、2009H1N1も一部みられます。
・アジアでの高い発生がみられるのはバングラデシュ、インド、タイで、ほとんどがH3N2、わずかにB型や2009H1N1がみられます。
・北半球では発生が低いか、もしくは認められず、典型的なオフシーズンであるとWHOは述べています。

米国のインフルエンザ指標

米国ではインフルエンザの活動性は大変低く、米国疾病予防管理センター(CDC)の発表によりますと、8月20日までの1週間にインフルエンザ様症状で医療機関を受診した患者数は0.5%で、(流行の)基準となる2.5%を下回っています。
インフルエンザや肺炎による死亡者数もまた例年の基準値を下回り、小児のインフルエンザ死亡者も報告されていません。