黄熱ワクチン推奨に関する改訂(2011年) 一部抜粋

2011年9月9日 WHO(WER)

WHOの専門家によるワーキンググループは、黄熱(YF)リスクの指定の基準、黄熱ウイルス感染リスク地域の分類の変更、国際的な旅行のワクチンマップの改訂に関する推奨について報告書をまとめています。
これはその報告書の一部抜粋したものです。

国特有の結果

ワーキンググループは、リスク分類の変更を提案しました。さらに、特定の都市、主要な観光地の数カ所は、黄熱ウイルスの感染のリスクはわずかであるかあるいは無しと判断しました。ネッタイシマカが存在し、理論上都市感染するリスクがあるにもかかわらず、これらの都市で症例は発見されておらず、サーベイランスで症例を敏速に発見されることが期待されています。
したがって、これらの地域では暴露によるリスクはないか可能性が低いものと指定しました。
アフリカと南アメリカの以下の国については、その地域の風土病として推奨国として分類することに変更は無く、これらの国について詳細な議論は行われていません。
アンゴラ、ベナン、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、中央アフリカ共和国、コンゴ(ブラザビル)、コートジボワール、赤道ギニア、仏領ギアナ、ガボン、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、ガイアナ、リベリア、ナイジェリア、ルワンダ、セネガル、シエラレオネ、スリナム、ガンビア、トーゴ、ウガンダ
これらの国々は、繰り返し黄熱病のヒトまたはヒト以外のほ乳類の症例が報告されており、地方政府のもつデータが不十分であったり、ウイルスが特定地域において低いレベルで循環しているかどうかのサーベイランスシステムが不十分であったり、黄熱ウイルス感染のリスクを持つ隣接国との生態学上の類似があります。

カーボベルデとジブチについても検討されましたが、リスクのない国として分類することに変更はありませんでした。

ITHと国内予防接種政策への影響

ワーキンググループは、曝露(感染リスク)の可能性の低い地域のみを持つ国々はITH Annex1のリスク国の表から削除すべきであると結論づけました。 それに該当する国は、エリトリア、サントメプリンシペ、ソマリア、タンザニア、ザンビアです。
これらの国へ旅行する人へは黄熱ワクチンは一般的に推奨されません。ただし旅行者の旅程が曝露のリスクを増大し、ワクチンによるメリットがワクチン関連の副反応のリスクに勝る場合はこの限りではありません。

ITH Annex1の表からこれらの国を削除するということは、サントメプリンシペ、ソマリア、タンザニア(エリトリア、ザンビアは現在のリストにも掲載されていません)の人が国外へ旅行する際、この旅行者が入国する国はYFワクチン(接種)を入国時の条件にしないということになります。ワーキンググループはこれらの国から入国する旅行者はワクチン接種記録の提示をする必要はないという意見です。
しかしながらIHRが認めているように、感染のリスクの高い住民と媒介蚊のいる国では、その国独自のYFワクチンの入国条件を設定できます。

YFの地理的リスクに関するワーキンググループの見解は、その国の予防接種政策へも影響を与える可能性があります。ワクチンキャンペーンを展開する優先順位の決定や、小児の定期予防接種への導入はこのWHOの公式マップを参考にしています。そのため予防接種政策を調整するときは新しい分類に注意する必要があります。さらに、情報に食い違いがあれば、その国はフィールド調査、例えば血清学的調査や媒介蚊やヒト以外のほ乳類でのウイルスの検査などをするように勧奨され、リスクマップを作成したり、将来の予防接種政策をたてたりするよう指導されます。

まとめ

WHO協議と非公式ワーキンググループを通じて、黄熱ウイルスの感染リスクについて基準が定められました。黄熱ウイルス感染リスクのある国や地域についてこの基準が再評価されました。 旅行者へのワクチン推奨は黄熱リスクに基づいています。
いくつかの地域では黄熱ウイルス感染のリスクがある地域の境界が変更されていますが、臨床医は旅行者の旅程や活動について尋ね、黄熱ウイルスに暴露される可能性を徹底的に確認するようにしてください。

原文はこちら (英語)[PDF形式:2530KB]