パキスタンからポリオウイルス野生株の拡大が確認されました。

2011年9月20日(WHO原文〔英文〕へのリンク)

1型ポリオウイルス野生株(WPV1)は現在パキスタンで循環しているウイルスと遺伝子学的に同じもの(リンク)ですが、このウイルスが中国で確認されました。パキスタンでは広く国内でWPV1が伝搬されていますが、2011年のアジアで唯一3型ポリオウイルス野生株(WPV3)感染症例も認められました(3型ウイルスは大陸からの排除が目前です)。2011年9月13日現在パキスタンから84症例が報告されています。2010年同時期では48症例でした。

2011年にはパキスタンにおける追加的予防接種活動(SIAs)は、要となるハイリスク地域において不十分でした。連邦直轄トライバルエリア(FATA)の安全性の確保されていない地域と特にカイバル地域では、20万人を越える小児が過去2年間に行われたSIAから取り残されています。カイバルパクトゥンクワ(Khyber Pakhtunkhwa)州やFATAの不安定な地域に住む小児に接触するという課題に加え、カイバルでの接触できる地域や国内の他の流行地域、特にバローチスタン(Balochistan)州やシンド(Sindh)州で戦略上の課題がSIA遂行の妨げとなっています。同時に、地方のサーベイランスで感知されていないウイルス循環があることも否定できません。これらの要因、すなわち広範囲に伝搬しているWPV1、国際的な拡大の報告、2011年アジアのみでのWPV3の確認に基づき、WHOはパキスタンからWPVがさらに世界へ拡散するリスクを“高度“に設定します。特に大規模な人口移動がウムラやすぐに始まるハッジ(サウジアラビア、メッカ巡礼)で予想されることからこれから数ヶ月間はハイリスクです。

ポリオウイルス野生株の国内での広範囲な拡散へ緊急に対応するため、パキスタン政府は今年、大統領閣下の後援を受け国内ポリオ緊急活動計画を開始しました。しかしながら、計画の重要な実施段階で効果がまだみられていません。住民の中で両血清型の免疫レベルを至急確立させるために、時間差をおいて地方での予防接種が9月19日から21日に計画され、その後引き続いてすぐに54地域におけるハイリスクエリアでの活動が計画されました。しかしながら成功の鍵は、接触できる(到達できる)地域での戦略上の課題を乗り越え、(政情が)不安定な地域で接触できる人口(対象者)を増やすために全コミュニティーの参加を前提とした拡大戦略にかかっています。これを達成するためには、完全に堅実な取り決めと責任が、州レベル、自治体レベル、連合会議レベルで緊急に求められます。

アジアや地中海東部沿岸の国々は、どのポリオウイルスが持ち込まれたか至急確認し、それに迅速に対応するために、急性弛緩性麻痺(AFP)のサーベイランスを強化することが重要です。また各国はどのウイルスが持ち込まれてもその影響を最小限にするために、全てのポリオウイルス株を網羅するための定期の予防接種を促進し続けるべきです。

WHOの“国際渡航と健康”(ITH)の中で勧告したように、パキスタンへの渡航者やパキスタンからの渡航者は確実にワクチンを受け予防すべきです。過去に3回以上のOPV(経口生ワクチン)を受けたパキスタンへの渡航者は出発前にさらにもう一度追加接種を受けて下さい。パキスタンからの渡航者は出国前にポリオワクチンの予定を完全に終了させ、出国前にさらに追加接種を受けるべきです。いくつかのポリオ清浄国はパキスタンからの渡航者に対し入国ビザを入手する条件にポリオワクチン接種を求めることができます。

ハッジやウムラのシーズンが始まり、サウジアラビアはウムラやハッジで巡礼する渡航者(全ての年齢層)に対しワクチン接種を要求しています。この要求はWHOのITH勧告に沿ったもので、さらにポリオ流行国からサウジアラビアに入国する全ての年齢層の渡航者は入国6週間前までのポリオワクチン接種証明書が必要になり、入国後さらに1回の追加接種を受けることになります。