アジアにおける手足口病について(1)
2011年9月23日ECDC(原文〔英語〕へのリンク)
2011年9月14日WPRO(原文〔英語〕へのリンク)
手足口病(HFMD)は、一般的な感染症でその主な臨床症状は手、足および口にできる水疱、や口内炎などです。
子どもの間で最も頻繁に起こりますが、10代や大人でも時々みられます。
ほとんどの場合、軽症で自然軽快しますが、脳膜炎、脳炎およびポリオ様麻痺などの深刻な神経学的臨床症状が起こることもあります。HFMDは非ポリオエンテロウイルス群(特にヒトエンテロウイルスA(HEV-A)に属するウイルス)によって引き起こされます。
これらのうちエンテロウイルス71(EV71)は、特に5歳以下の小児で中枢神経系障害を含む重症例や肺水腫を起こし致命的になることもあります。
HFMDの流行は過去20年間にわたり西太平洋圏内の加盟国で2~3年ごとに起こっています。
EV71は流行を起こす株ですが散発的にも発生しています。しかしながら、EV71が優勢であると、罹患率及び死亡率が高くなり、公衆衛生上重大な影響を与えます。
2011年のHFMD症例数は2010年に比較し日本と韓国で倍増し、多くの症例がマカオより報告されています。ベトナムでは40,000症例以上の報告がありますが、有効なデータがないため昨年との比較ができません。高い流行を維持しているベトナムを除き2011年の流行のピークは過ぎ発生率は減少しています。日本では半数以上がコクサッキーウイルスA6と診断されていますが、ベトナムでは半数以上がEV71によるものです。中国本土、香港特別行政区、シンガポールのHFMD発生率は2010年に比べ2011年は有意に低くなっています。
東南アジアにおいて最後に報告された大規模なアウトブレイクは2008年と2010年に中国、香港、台湾、日本、シンガポールなどに影響を与えました。現在の状況は想定内ですが、日本では過去10年間でもっとも高い発生率となっています(津波の影響が一部にあるのかもしれません)。過去2年間に比べて韓国は2011年症例が増加していることは、観察された2~3年の周期的なパターンと一致しています。さらに東南アジアのいくつかの国ではサーベイランスシステムが欠如していることと、ウイルスの時間的地理的変化の予測が不可能なので不確実性が高くなっています。
各国の状況(2011年9月14日)
2011年9月4日現在
中国:2011年1月~8月までに1,096,966症例(365人死亡)が報告されており、6月をピークに減少傾向です。
香港:2011年35週までに報告された入院患者は294人です。過去3週間の症例数は減少しています。
マカオ:2011年1月~8月までに914症例が報告。減少傾向です。ウイルス検出は51%がEV71、38%がコクサッキーウイルスA群、2%がコクサッキーウイルスB群、9%がエコーウイルスです。
日本:2011年34週までに251,980症例が報告され、28週をピークに減少傾向です。28週までに検出されたウイルスは55%がコクサッキーウイルスA6、18%がコクサッキーウイルスA16、1%がEV71、25%がその他でした。
韓国:2011年34週までに外来患者1,000人あたり11.4症例の報告がありました。
シンガポール:2011年35週までに12,300症例の報告があり、減少傾向です。
ベトナム:2011年9月4日までに42,673症例(98人死亡)が報告。死亡の3/4が3歳以下の子どもです。主に南部地域で流行していますが、北部へも拡大しています。HFMDの半数近くがEV71です。感染拡大を減少させるため予防対策がとられています。